「自由化」してなかった電力業界、電力4社カルテル
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電力自由化の真相
大手電力4社がカルテルを結んでいた問題をめぐり、公正取引委員会は3月30日、中部電力(株)の子会社の中部電力ミライズ(株)、中国電力(株)、九州電力(株)および同子会社の九電みらいエナジー(株)に対し、独占禁止法違反で排除措置命令を出した。加えて、中部電力、同子会社の中部電力ミライズ、中国電力、九州電力に課徴金納付命令を行った。
課徴金額は中国電力が707億1,586万円、中部電力は201億8,338万円、中部電力ミライズは73億7,252万円、九州電力は27億6,223万円。課徴金の総額は1,010億3,399万円にのぼった。関西電力については、カルテルに加わっていたものの自主的に最初に違反を申告したため、課徴金が全額免除となった。公正取引委員会の調査に協力した九州電力にも課徴金減免制度が適用され、課徴金が30%減額された。
消費者に電力を販売する電力小売業が2016年4月に全面自由化し、消費者は電力会社を自由に選べるようになったとされてきた。しかし、今回のカルテルの問題で、電力業界は実際には「自由化」していなかったことが明らかになった。
業界の市場競争を制限
今回の問題の核心は、電力が自由化されたにもかかわらず、大手電力4社が互いに相手方の管内で営業を制限する取引を行っていたことである。
独占禁止法では、特定の事業者がカルテルや談合によって価格競争を制限し、利益を得る取引を禁止している。カルテルとは、各社が個別で決めるべき販売価格などを、複数の事業者が連絡を取り合って共同で取り決めることだ。
今回のカルテルでは、中部電力と関西電力は互いに相手方の管内の特別高圧・高圧の大口顧客への営業を制限することに合意していた。また、中国電力と関西電力との間でも、相手方管内での営業を制限することの合意がなされていた。
加えて、関西電力は中国電力管内における官公庁入札への参加を制限するカルテルを結んでいた。九州電力と関西電力もまた、相手方管内における官公庁入札において、安値で電気料金の提示を行うことを制限することに合意していた。
販売電力量で見ると、地域外の大手電力会社が獲得しているシェアは子会社を含めて約4.2%と低い(※)。これは、今回その存在が浮き彫りとなった、営業を制限するカルテルが原因となっている可能性がある。
今回の問題はまだ氷山の一角
販売電力量に占める新電力のシェアは、2022年3月時点で約21.3%(※)。電力自由化後も、新たに市場に参入した新電力のシェアは約2割にとどまり、なかなか伸びていない。このように新電力のシェアが伸びなやんでいる原因は、電力業界で今回のような取引が行われていることも1つだろう。
また、電力会社の課徴金の支払いは実質的に電気料金に反映されるため、今回の課徴金納付命令により、実質的に電力料金が値上がりすることが予想される。中国電力が22年11月25日に平均31.33%の値上げ許可を申請し、政府は値上げ幅の圧縮を指示している。現時点では、中部電力、関西電力、九州電力は値上げ許可申請を行っていない。
今回の事件は、電力業界が「自由化」していない問題の氷山の一角だろう。系統への接続や電力市場の問題など、電力業界が本当に「自由化」するまで解決すべき課題は多い。
※:「電力・ガス小売全面自由化の進捗状況について」(2022年7月20日 資源エネルギー庁)
【石井 ゆかり】
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