消費者行政の敗北。『虐殺』人事で大幅後退か(後)
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こうした読売の振る舞いに対して恐れをなしたのが消費者庁側だった。
消費者庁は7月28日付で、この問題を担当していた服部高明審議官を金融庁の国際担当の参事官に異動させた。旧経済企画庁出身の服部氏は消費者庁発足後、総務課長や参事官のポストを歩み、審議官就任後の今春からは不招請規制導入の事務方の最高責任者のポストに就いていた。それだけに読売側の風圧は強く、専門調査会では読売出身の野坂雅一・元論説副委員長が名指しで服部氏に対して「アベノミクスを何と考えているのか!」と詰問するなど批判してきた。そんな防戦にさらされてきた服部氏が一転して金融庁の国際担当の参事官に異動するのは極めて異例だ。服部氏は実は英語もできないうえ、BISなど金融機関の国際規制にはまるで土地勘がないからだ。このため霞が関では「読売の風圧をかわすために緊急避難的に用意したポストではないか」とみられている。この服部氏に殉じる格好で消費者委員会事務局の大貫裕二参事官(旧経企庁出身)も公正取引委員会中部事務所長に異動。その部下の企画官も異動することになった。同事務局では井内正敏審議官が服部氏の後任として消費者庁審議官に横滑りすることになっており、消費者委員会事務局は、ラインの審議官、参事官、企画官が3人とも全員交代するという異例の事態に陥った。
さらに読売サイドの攻撃にさらされてきた消費者庁の山田正人取引対策課長(経済産業省出身)までもが、8月28日付で関東経済産業局地域経済部長に異動することになった。関東経産局は現在、埼玉県さいたま市に所在しており、山田氏を霞が関から引きはがすことを狙った人事とみられている。いまの安倍政権を支えるのは経産省出身の今井尚哉首席秘書官。今井氏はかねてから「新聞は読売だけでいい」と公言してはばからず、安倍政権と蜜月関係にある読売との軋轢はタブーだ。そうした事情を斟酌した経産省が、山田氏の”都落ち”を画策し、事なきを得ようとしたのは明白だろう。
それだけでなく、山口大臣は8月28日の記者会見で消費者委員会の10人の委員のうち8人を入れ替えると発表した。おおむね消費者団体や消費者運動に知見のある人たちばかりで、政治的な意図を持った露骨な人選とは言いにくいが、その中でポイントは旧通産省OBの樋口一清法政大教授が新委員に加わることである。旧通産OBでもある太田房江参院議員ら自民党議員はこれまで「消費者委員会は消費者運動の活動家ばかり。産業界の代表がいない」と非難していたことから、そうした党側の意向を勘案して、産業界に配慮する経産省のOBが新たに入ったと観測されている。
これだけの”虐殺”人事が横行した後とあっては、後任の審議官や課長もおいそれとは規制導入をしかねるだろう。もはや不招請勧誘規制の導入は敗色濃厚。少なくとも新聞界は「適用除外」の特別扱いをしてもらえるのではないか。新聞界――特に読売は「聖域」なのだとまざまざと見せつけた出来事であった。
(了)
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