外国人技能実習制度を「廃止」新制度への移行を提言
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政府の有識者会議は4月10日、これまでの外国人技能実習制度を廃止し、新たな制度への移行を提言、中間報告のたたき台を示した。
技能実習制度の趣旨、実状
1993年から現在に至るまでの技能実習制度は、開発途上国への技能移転という国際貢献を目的に始まった。建設業や食品製造業など86職種が技能実習生を受け入れ雇用しており、技能実習1号から3号までに分類され、最長5年間、同業種で働きながら技能を学び、帰国後の母国発展に寄与する制度として現在まで実施されている。2020年度で月平均の支給賃金は、1号で約17万円、3号で約20万円となっている。
出入国在留管理庁が2022年6月に調査した時点で、同制度によりおよそ33万人が入国しており、全体の56% 18万1,957人がベトナム人であった。他の国からは順にインドネシア12%、中国11%、フィリピン9%、タイ3%、ネパール0.3%、その他9%の構成比になっている。
本来、この制度の始まりは発展途上国の人材育成を通して国際貢献を行うものであるが、実状は人材不足などで労働環境が厳しい業種を中心に人手を確保する手段となっているため、現況は目的と実態が乖離している。
技能実習の新制度に求められるもの
新たな制度については、人材育成だけでなく人材確保などを目的の内容に追加して掲げ、これまでの技能実習制度では原則的に認められなかった働く企業を変更する「転籍」を従来に比べて緩和し、一定程度の範囲で認めるように提言を行っている。
新たな制度に「人材確保」が目的として掲げられることで、現在の制度とは異なり、技能実習生を企業が労働者として受け入れ雇用できるようになれば、制度と実態との矛盾がなくなるのである。
このほか、職種は特定技能の分野と同様にして、習得した技能をさらにキャリアアップして活かせるようにすることや、日本語能力が段階的に向上する仕組みを設けることを含め、たたき台を提言している。
ベトナム国内にある送り出し機関の反応
技能実習生を日本へ送り出すホーチミン市の機関Minh Nguyet (ミン・グエット)に話を聞くと、これまでに送り出した企業でさまざまな問題や矛盾などに戸惑う事柄が発生しており、送り出した実習生たちからも多くの相談や苦情などあるのが実状だという。日本政府の新たな制度で、「諸問題が起こらないよう改善を期待している」とコメントした。
合わせて、ベトナムでは大学を卒業したIT関連や精密機器の設計技術者など、優秀な高度人材が希望している行き先の国の傾向は、すでに日本ではなくアメリカやヨーロッパへとシフトしている現実を、日本企業は見極めるべきで、とくに半導体関連企業では設計技術者の人材獲得競争が激しいとの助言をしている。
昨年11月に政府の有識者会議が設置されて、同年12月から4回にわたって見直しの議論が繰り返されてきている。とにかく人手だけが足りない、優秀な技術を有する人材が不足しているなど、それらの厳しい労働環境は日本だけでなく、世界中で深刻な問題となっている。
そうしたなかで、ベトナムの送り出し機関からの助言にもあるように、これまでの外国人を単なる労働者として安く使えるというような認識を根底から改めて、外国人が安心して働ける環境を提供できる新しい制度を確立しなければ、さらには円安などの影響もあって、劣悪な労働条件や安い賃金、差別や暴力を受ける人間関係や職場環境が改善されずなくならなければ、もはや外国人から見れば日本が魅力的な国として選ばれなくなるのは必然のことである。
【岡本 弘一】
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