難航している米債務上限の交渉(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏債務上限問題とは
米国では、連邦政府が国債などを発行して借り入れられる金額の上限が法律で定められている。債務が上限に達した場合、新たに国債を発行するには、さらなる上限引き上げのために議会の承認が必要となる。
直近では2021年12月、債務上限が2兆5,000億ドル引き上げられて、約31兆4,000億ドルとなった。ところが、それから1年が経過して政府債務は早くもその上限に達し、また債務上限の引き上げが必要となったのだ。
イエレン米財務省長官は議会に政府債務の上限引き上げを要求したが、下院の過半数以上を占めている野党の共和党は、歳出の削減がない限り債務上限の引き上げには応じられないと通知してきた。議会で債務上限の引き上げが承認されなければ米国政府はデフォルト(債務不履行)に陥ることになる。仮に最終局面でドラマティックな展開を示し、妥協して交渉がまとまっても、金融市場が不安定な現在のような状況では、引き上げ交渉が難航すればするほど市場に与える悪影響は大きくなることが懸念されている。
基本的に常に赤字を出している米連邦政府は、債権を発行することで不足した歳出を賄っている。2001年から現在まで、米連邦政府が財政赤字を記録しなかった年は一度もない。過去10年間だけでも、毎年4,000億ドルから多い時には3兆ドルの財政赤字を記録してきた。その赤字が累積して現在のような財務状態となっている。
米連邦政府が赤字にもかかわらず債権の発行ができるのは、米国の信用と基軸通貨としてのドルがあってこそ可能なことであった。米国のドルは基軸通貨なのだから、自国が財政赤字を抱えることになっても、世界経済にドルを潤沢に供給するためには致し方ないというのが今の世界の仕組みである。そのような状況下で、ドル債権の発行は米連邦政府が決め、議会は債権がやたらに発行されては困るので、債務の健全性を維持するために債務の上限をもうけているのだ。
米国が初めて債務上限制度を導入したのは、第1次世界大戦後の1939年である。当時の債務上限は約450億ドルであった。以来、債務の上限引き上げは、1960年以降78回も行われるほどによくあることだった。78回のうち49回は共和党の大統領の時代、29回は民主党大統領の政権下のことである。
ところが、米国政治が両極化している昨今、債務引き上げをめぐって両党の対立が深まっている。2011年のオバマ大統領時代はその典型例で、交渉は難航したが、デフォルド期限の2日前に劇的に妥結をみた。しかし、交渉は成立したものの、金融市場に与える影響は大きかった。
(つづく)
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