2024年12月22日( 日 )

保守政治家・鬼木誠氏と旧統一教会との関係(3)

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 昨年、安倍元首相銃撃事件で旧統一教会と政治の関係がクローズアップされ、宗教2世の問題などが大きな話題となった。国会において成立した不当寄附勧誘防止法も、多くの旧統一教会の被害者の証言などが世論を動かしたことによるものだ。しかし、法律の施行後、急速に関心が失われたようになり、教団と政治家との関係はうやむやになりつつある。はたしてそれでよいのか。

 昨年9月に自民党が所属国会議員を対象に行った旧統一教会との接点に関する点検調査について、鬼木氏は関係、接点があったことを認めている。20年3月、東京都内で関連団体「世界平和女性連合」が開催した懇親パーティーに出席。食事代を含む会費2万円を支払っていた。

 この世界平和女性連合というのは、旧統一教会の数ある関連団体でも自治体や政治家に食い込んでいた団体の一つである。萩生田光一政調会長なども女性連合の行事に参加するなど自民党議員との結びつきが深い。福岡市や福岡県の公共施設にもボランティア団体として登録し、その施設を使って、会合をたびたび開いていた。

 表向きは、1992年4月に創設された国際NGOで、本部はアメリカのニューヨークにある。設立者は、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の教祖・文鮮明とその妻で現総裁の韓鶴子である。

 女性連合は、世界各国に多くのボランティアを派遣し、平和の文化建設・貧困撲滅を目指し、女性の経済自立支援・地位向上、子供の教育支援、医療支援、エイズ予防教育などについて、主に開発途上国において活動を展開している。

 97年には「WFWPインターナショナル(WFWPI)として国際連合・経済社会理事会の総合協議資格を有するNGOに認定された。このように聞けば、統一教会の関係だとしても、すばらしい慈善団体のように見える。しかし、一連の活動は教団のお家事情によるものであった。

 この団体が設立された前年91年末、ゴルバチョフ大統領が辞任し、ソビエト連邦が崩壊した。同年、文鮮明教祖が、突如、平壌を訪問し、金日成主席とも会談を行っている。東西冷戦が終結する中で、旧統一教会が掲げてきた反共産主義に代わる大義として世界平和を打ち出した。この前後から教団は、女性信者を前面に押し出していく。

 日本で桜田淳子氏などの芸能人が参加して有名となった合同結婚式がソウルで開催された年も、女性連合設立の年と同じ92年であった。女優の飯干景子氏が、入信に至ったルートはアジア平和女性連合という団体のパーティーの司会を務めたことから、勧誘されたことであった。

鬼木誠議員の妻
鬼木誠議員の妻

 アジア平和女性連合が現在の世界平和女性連合である。景子氏は、父で作家であった飯干晃一氏の2週間に及ぶ説得によって、旧統一教会から離れる決断をした。当時のワイドショーなどは大々的に報じていた。

 旧統一教会の手口として、ボランティア活動を隠れ蓑に、布教・勧誘活動を行う特徴がある。真正面から教団名を明かさない。女性連合は、アフリカのルワンダやモザンビークなど主に途上国に多くのボランティアと称して女性信者を派遣してきた。そこで純潔思想などの教団の理念を広げていく役割を担っている。

 鬼木氏は20年の東京での会合、会費の支払い以外にも、県議だった11年11月、世界平和女性連合が主催する留学生の弁論大会に出席していた。途中で退席したが、鬼木氏の妻が代理で審査員を務めていた。その後も関係は続いていたという。

 じつは報道もなされず、鬼木氏も明らかにしていない話がある。20年8月、鬼木氏は、ある支援者の自宅にて、政治報告会を行った。この報告会には多くの旧統一教会の信者が参加していたという。

 SNS上に写真が残されており、鬼木氏がソファーに座り、その横には、関連団体である世界平和連合福岡県連合会の広報部長も務めた人物が笑顔で映っている。その後方には、顔は伏せられているが、女性が複数映っている。

左:鬼木氏と右:旧統一教会信者

 この広報部長を務めた人物は、安倍政権時代にはユナイトという旧統一教会の信仰を持つ学生グループと行動を共にしたり、アジアと日本の平和と安全を守る全国フォーラム福岡県支部の事務局を務めるなど、熱心に旧統一教会の政治活動、渉外活動をしており、青山繁晴氏を招いたセミナーなど鬼木氏の勉強会にもたびたび参加していた。この人物の妻が世界平和女性連合福岡支部のメンバーだという。

 鬼木氏の周辺を探っていくと、旧統一教会に近い人間関係が浮かび上がってくる。

鬼木氏と旧統一教会関連団体主催の会合
鬼木氏と旧統一教会関連団体主催の会合

 鬼木氏に限らず、関係を問われた政治家は、報道機関の取材に「教団との関係は感じられなかった」と答えるのが常套句になっているが、長年、旧統一教会と政界の関係を取材してきた鈴木エイト氏は「政治家はコンビニのように教団を利用してきた」という。

 前編で紹介したようにそうした政治家と教団の関係を危惧してきたのは、他ならぬ警察当局であった。しかし、警察は政治に弱い。県議会議員時代、警察委員会の委員長も務めた鬼木氏が教団の関連団体に堂々と出入りし、信者が支援しているとなると、警察当局も捜査に慎重になるのは当然だろう。

 本編で終える予定であったが、まだ取り上げるべき事柄があるので、連載を続けたい。

(つづく)

【近藤 将勝】

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