保守政治家・鬼木誠氏と旧統一教会との関係(4)
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昨年、安倍元首相銃撃事件で旧統一教会と政治の関係がクローズアップされ、宗教2世の問題などが大きな話題となった。国会において成立した不当寄附勧誘防止法も、多くの旧統一教会の被害者の証言などが世論を動かしたことによるものだ。しかし、法律の施行後、急速に関心が失われたようになり、教団と政治家との関係はうやむやになりつつある。はたしてそれでよいのか。
霊感商法摘発と鬼木氏への接近
鬼木氏と旧統一教会の関連団体・世界平和女性連合との関係は、県議会議員時代に遡る。女性連合の事務所は、中央区薬院4丁目のマンションの室にある。今月24日、福岡市健康づくりセンター「あいれふ」で、女子留学生弁論大会を開催するという。鬼木夫妻は2011年の弁論大会を含め数回出席している。その他にも保守系地方議員の参加が確認されている。
かつて旧統一教会の政治団体・国際勝共連合の事務所も、旧福岡地裁近くの大手門にあった。鬼木氏の前は、同じく中央区選出で県議を務めた内田壮平氏が勝共連合と近い関係にあり、会合などに参加していた。鬼木氏の県議初当選は03年だが、この選挙で内田氏は落選した。旧統一教会は、内田氏に代わる関係議員として鬼木氏に接近していったとみられる。
全国での霊感商法摘発は、07年の沖縄において印鑑販売会社、天守堂の代表者、店長、従業員計6名が特定商取引法違反で逮捕された事件からだが、福岡においては、(有)サンジャスト福岡(旧・幸運堂)が、08年12月「先祖の霊があなたの人生を悪くしている」「購入しなければ地獄に落ちる」などと不安をあおって、福岡市中央区在住の女性に水晶の玉や彫刻など600万円以上の商品を買わせたとして特定商取引法違反(威迫・困惑)容疑で家宅捜索を受けた。09年5月には、統一教会信者で在日韓国人の従業員が逮捕され、博多区にあった統一教会福岡教会などが家宅捜索を受け、サンジャスト福岡は罰金刑を受けている。
このとき、県議会警察委員会の委員長を務めていたのは、現在、衆議院議員・井上貴博氏であった。井上氏は、22年12月に自身のFacebookにおいて事件について言及していた。
「福岡県議会警察委員長当時、全国で初めての暴力団排除条例、麻生太郎総理として初めて福岡での公式行事となった日中韓首脳会合、現在問題となっている霊感商法摘発など目まぐるしい2年間だった」
井上氏が記載した「現在問題となっている霊感商法摘発」が、サンジャスト福岡の事件である。
この事件は、09年6月に国家公安委員会の定例会議においても報告されている。現在もネット上で閲覧可能な議事録には「福岡県警察は、5月7日、統一教会と緊密な関係にある(有)サンジャスト福岡の社員1人を特定商取引に関する法律違反で通常逮捕した」とある。このとき、警察庁警備局長を務め、福岡の事件報告を行ったのが、第88代警視総監も務めた池田克彦氏であった。通常、地方の一事件が国家公安委員会への報告事項になることは早々ない。警察庁も非常に重要視していたことがうかがわれる。
こうした動きに敏感に反応した統一教会が自民党議員に接近を図り、警察の摘発を逃れようとしたことは容易に想像がつく。当時、高齢であった文鮮明は、福岡や東京などでの一連の摘発に怒り、保守系政治家とも関係が深かった日本統一教会の梶栗玄太郎会長に、政治工作の強化を指示したという。北朝鮮との関係などから距離を置いていた安倍晋三元首相と教団の接近と、鬼木氏と教団の接触時期とは重なる。
自民党は07年の参院選で惨敗を喫して退陣に追い込まれたことで、選挙に勝つために統一教会への接近を強め、一方の教団側は、自民党の接近を利用して、(宗)の解散などにつながりかねない刑事事件化を逃れるための政治工作を活発化させた。その結果として、民主党政権時代の2010年に東京・町田市の霊感商法事件を最後に、警察による捜査・摘発は行われていない。前回記事で紹介した女子留学生弁論大会に鬼木氏と妻が出席していたのは、鬼木氏が県議会警察委員会の委員長を務めていた時期である。民主党政権ではあったが、県議会においては自民党が最大会派であり、依然として影響力は大きかった。警察当局も政治の動向を忖度したであろう。
国益を損ねる無自覚の罪
それに統一教会の教団施設は、鬼木氏の選挙区内、南区の西鉄高宮駅近くにあり、周辺に多くの信者が居住している。13年の参議院議員選挙において、元産経新聞政治部長・北村経夫氏が統一教会の全面支援を受けて当選したが、このとき、久留米と福岡の教団施設で信者を前に講話を行い、選挙支援を要請している。北村氏の福岡選挙事務所は中央区舞鶴の雑居ビルに置かれていたが、応援に入った企業関係者などは鬼木氏の支持者とほぼ同じであった。
旧統一教会の政治団体・国際勝共連合は、家庭の尊重や選択的夫婦別姓に反対しているが、思想的に鬼木氏と近い。21年に丸川珠代・男女共同参画担当相や高市早苗・元男女共同参画担当相ら自民党の国会議員有志が、埼玉県議会議長の田村琢実県議に送った、選択的夫婦別姓の反対を求める文書に鬼木氏も名前を連ねていた。
夫婦別姓については、伝統的家族観を重視する日本会議などほかの保守系団体も反対しているが、とくに旧統一教会は鬼木氏を、思想的にも自分たちの代理人的役割を担う政治家として位置付けたからこそ、名簿の提供など選挙支援を行ったのは疑いようがない。福岡2区は、選挙のたびに接戦となっている。票としてはわずかでも熱心に活動を行う旧統一教会の支援は、鬼木氏にとってありがたい存在だったろう。厳しい選挙戦を強いられる政治家に対して教団は巧みに近づく。政治家は、このような選挙支援を見返りにした特定団体との関係が国益を損なう遠因になっていることを自覚すべきである。
しかも、鬼木氏は、防衛副大臣も務めていたが、旧統一教会は韓国の情報機関との関係なども指摘されており、安全保障上極めて大きな問題である。そもそも、旧統一教会に何らかのシンパシーをもたなければ、先に紹介したような「統一教会批判報道は、プロパガンダ」などという発言はまず出てこない。
保守系政治家といいながら、韓国の反日思想を掲げるカルト教団と一体になることで国益を損ね、有権者を裏切ることは絶対にあってはならない。政治である以上、さまざまなしがらみが生じることは当然だとしても、政権与党の一角を担い、県議時代は警察委員会委員長、国会議員にあって防衛副大臣まで務めた議員が、無自覚に外国勢力に誘導されるようでは、日本の将来が危ぶまれる。国政・地方問わず投票率は年々下がる一方だが、国民が真剣に自国の将来を考えて判断しなければ、かつて中国の政治家が言ったように日本という国は本当に消えてなくなりかねない。
(つづく)
【近藤 将勝】
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