2024年11月20日( 水 )

SECのバイナス提訴 暗号資産業界に大きな試練の兆し(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

バイナンスはSECに提訴された

仮想通貨 イメージ    暗号資産が取引可能な金融商品である「証券」に相当するか否か、議論が続けられているが、それに対する明確な解釈はいまだ提出されていない。

 暗号資産「XRP」も米証券取引委員会(SEC)から「証券」であると規定され、Ripple Labsなどが提訴されたが、結論はまだ出ておらず、裁判は今も続いている。

 この判決の如何によって、今後業界全体に大きな影響をおよぼすことになるのは間違いない。そこへもって、SECはさらに今月の5日と6日、世界大手暗号資産交換所であるバイナンスとコインベースを提訴し、リップル訴訟のゆくえにますます世の注目が集まっている。なぜかというと、そこで出される判断は、今回SECが指名した暗号資産などが「証券」に該当するかどうかを決定する重要な判例になるからだ。もしリップルが敗訴するようなことになれば、以後、交換所の暗号資産も「証券」とみなされ、証券会社と同等の厳しい規制を受けることになるだろう。

 同訴訟は開始からすでに2年以上が経過しており、そうやすやすとは明確な結論を下せない状況にあるが、暗号資産業界は昨年から逆風が吹いて困難な状況が続いているところでもあり、今回のバイナンスの提訴は弱り目に祟り目となったことはたしかだ。昨年の大手暗号資産取引所テラ、FTXの破綻によって、暗号資産の信頼性が大きく傷ついたところへ、今回バイナンスやコインベースの提訴が行われたのであるから、市場は一層冷え込むこととなった。暗号資産はいままさに「冬の時代」にあると評しても過言ではない。

 主要暗号資産のいくつかを「証券」とみなすSECの規定は、業界にとって大きな試練となる。SECがわずか24時間のうちに暗号資産交換所の大手2社を相次いで提訴したことで、業界に大きな衝撃が走った。6月5日(米国時間)に提訴されたのは、大手の暗号資産取引所であるバイナンスと、その最高経営責任者(CEO)のチャンポン・ジャオ(趙長鵬)である。理由として、証券業務の登録なしに証券を販売したという容疑、および、顧客の資産の不適切な管理などが挙げられている。

 2009年にビットコインが誕生して以来、暗号資産は新しい資産の1つとして、若い世代を中心に徐々に世の中に浸透していった。そのなかでも、バイナンスとコインベースは暗号資産の取引で世界市場の約半分を占めるほどに、影響力のある交換所であった。先週、この2社が提訴されたニュースが流れたとたん、バイナンスUSの取引量は1週間で78%も減少している。

提訴の内容

 SECは一貫して、一部の暗号資産は未登録の「証券」であると主張してきた。暗号資産が「証券」に当たる場合、暗号資産も証券会社のような厳しい監督の下に置く必要があるというのが、SEC委員長ゲーリー・ゲンスラーの言い分である。証券業として登録していないいじょう、交換所を運営するのは違法であるという立場だ。今回、そうしたSECの方針を改めて明確に世に示し、暗号資産に対する規制を強化するのが狙いとみられる。

 それに、バイナンスの場合は、コインベースのように会社を訴えるだけでなくCEOのチャンポン・ジャオ個人も提訴されている点で注目に値する。ジャオCEOはバイナンスUSの顧客資金にひそかにアクセスしたうえ、個人的な会社2社に送って流用していたとの容疑がかけられている。SECの訴状には、ジャオの管理下にあるSigma Chainはウォッシュトレード(水増し取引)を行い、バイナンスの取引量を膨らませたとある。

(つづく)

(後)

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