K-ドラマの躍進と成功要因(後)
-
日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏市場の変化
2020年に始まる新型コロナウイルス感染症の拡大は、各国政府に外出規制などの措置を講じせしめることになった。コンサート等、人々が多く集まるイベントも次々中止。これがネットフリックスのような動画配信サービス、つまり家の中で楽しめるコンテンツへと、人々を向かわせることになったのである。これがまた、勢いに乗る韓国ドラマにとって、さらなる追い風となった。
たとえばネットフリックスには“お勧め機能”がある。この機能を通じて、ある韓国ドラマを視聴した人は別の韓国ドラマを紹介され、視聴を促される。こうして韓国ドラマは徐々に世界の人々に認知されるようになったのだ。韓国はいまや、コンテンツの分野で、米国に次いで2番目に大きい影響力を確保している。
需要があるところに供給が生まれるのは自然の理。ネットフリックスも韓国の制作会社に積極的に資金を提供し、ドラマを制作させるようになった。これによってドラマ制作市場もパイが大きくなり、それが質の向上をもたらすという好循環が醸成されている。このような状況にあって、ドラマをつくる土台となるシナリオにも大きな予算を投じられるようになったため、いっそう質の高い、面白い作品が次々生み出されるようになった。とくに韓国発のデジタルコミック「ウェブトゥーン」は、韓国ドラマの成功に大きく寄与している。
「ウェブトゥーン」でまず、そのストーリが人々を惹きつけるものか否か、ユーザの反応を通じて把握する。そこで人気を博したものだけをドラマ化し、それが成功したら次なる戦略へと打って出るのである。このようなことが可能になった要因として、まずはデジタル環境への迅速な適応が上げられよう。デジタルは制作側と受容者の双方向のコミュニケーションを可能にするものであり、ユーザの反応がリアルタイムで把握できることが大きな特徴だ。
制作環境の変化
制作環境の変化も大きい。韓国では以前、3つの放送局がしのぎを削る状況だった。現在は多チャンネル時代を迎え競争が激化、各放送局が必要とするドラマの数は増えている。そこへもって、世界的な動画配信サービスの登場である。良いコンテンツを制作すれば、それを世界へ配信するインフラは整っているというわけだ。こうして現在、韓国ドラマは、韓国の放送局、ネットフリックスなどのグローバル動画配信サービス、それに中国動画配信サービスという3つの大きな配信ルートで、需要を大きく伸長させている。
K-ドラマの成功要因は
最後に、現在のようにK-ドラマが成功を収めたのも、韓国政府の育成政策あってのことであると付言しておきたい。金大中大統領時代、コンテンツを輸出商品として位置づけ、政府主導でこの分野に係る産業を根気強く育成してきたのである。日本のコンテンツの輸入を禁じる従来の政策を大胆に転換し、門戸を開放したことが良い結果をもたらしたといえる。
デジタル漫画である「ウェブトゥーン」は、漫画大国である日本でも一定以上の成果を上げている。需要があれば質も向上するもの。韓国のコンテンツ輸出は2021年に126億ドルを記録し、韓国の輸出を牽引している半導体のそれに迫る勢いである。
韓国はドラマだけでなくK-POPでも世界的で高く評価されているほか、ゲームについてもたとえばE-スポーツの分野などで世界をリードしている。韓国が世界の人々に感動を与えられるような、文化先進国になっていくことを願ってやまない。
(了)
関連記事
2024年12月20日 09:452024年12月19日 13:002024年12月16日 13:002024年12月4日 12:302024年11月27日 11:302024年11月26日 15:302024年12月13日 18:30
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す