売上高1兆5,000億円超、近鉄グループの概要(後)
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運輸評論家 堀内 重人
(株)近鉄グループホールディングス(以下、近鉄GHD)は、大手私鉄の(株)近畿日本鉄道(以下、近鉄)、(株)近鉄百貨店、(株)近鉄エクスプレス、近畿日本ツーリスト(株)などを中核とする、近鉄グループの持株会社である。
2015年4月1日付けで旧近鉄を近鉄GHDに社名変更したうえで、鉄軌道事業を新生の近鉄に、不動産事業を近鉄不動産に、ホテル・旅館事業を近鉄ホテルシステムズ(同日付で近鉄・都ホテルズに社名変更)、流通事業を近鉄リテーリングに、それぞれ分割し、純粋持株会社に移行した。
23年3月期の連結決算は、22年の近鉄エクスプレスの連結子会社化により、売上高が1兆5,610億円であり、純利益が887億円であった。この売上などは、JR西日本、近鉄GHD、阪急阪神ホールディングス、京阪ホールディングス、南海電気鉄道の関西大手民鉄5社のなかで首位になった。
本稿では、近鉄グループの中核となる鉄道事業、不動産事業と百貨店を含めた流通事業について解説した後、全体の総括を行いたい。
流通事業(2):(株)近鉄リテーリング
近鉄リテーリングも、流通部門を担っているが、近鉄リテールホールディングスの100%子会社である。近鉄リテールホールディングスは、駅ナカショッピングモールやスーパーマーケットの改装を推進するとともに、新規事業の開発や既存事業の統廃合など、企画戦略機能を強化するため設立された。傘下に近鉄リテーリングと(株)近商ストアという、スーパーを運営している会社があり、それらの事業会社を統括している。
近鉄リテーリングは、駅構内の売店などの運営以外に、観光特急「しまかぜ」「青のシンフォニー」(写真4)「あをによし」(写真5)のビュッフェや車内販売、サービスエリア内の売店やレストランを運営している。
総括:近鉄と西鉄
近鉄グループに限らず、鉄道事業以外にバス事業、不動産事業、旅行事業、ホテル事業、流通事業、国際物流事業、リゾート事業など、幅広い事業を展開してコングロマリオットを形成するのが、日本の大手民鉄グループの特徴であり、このような事例は世界的に見ても珍しい存在である。
このように日本の民鉄が、鉄道事業以外に多くの事業を展開するようになったのは、阪急電鉄の前身である箕面有馬電気軌道を設立した、小林一三の考え方がベースとなっている。近鉄グループは、鉄道事業、不動産事業、流通事業以外に、バス・タクシー事業、ホテル事業、旅行事業、リゾート事業(ゴルフ場も含む)、国際物流事業など、幅広い事業を展開している。
一方、福岡県で鉄道事業などを展開する西鉄グループの場合、鉄道事業・バス事業は西鉄の直営であるが、タクシー事業は子会社が展開している。他に不動産事業、国際物流事業、旅行事業、流通事業として「西鉄ストア」は展開しているが、百貨店は展開していない。
遊園地事業に関しては、近鉄グループは「志摩スペイン村」「生駒山上遊園地」を展開しているが、西鉄グループは前身の1つでもある、博多湾鉄道汽船から引き継いだ「かしいかえん」を運営していたが、2021年12月30日限りで閉園した。また前身の1つである九州電気軌道時代からの直営で、到津(いとうづ)遊園を運営していたが、2000年に閉園した。西鉄が太宰府天満宮との共同出資で設立した太宰府園が運営する「だざいふ遊園地」、海の中道海洋生態科学館が運営する「マリンワールド海の中道」はあるが、これらは子会社が運営している。また、西鉄のホテル事業としては、西鉄ホテルズが「西鉄イン」「西鉄グランドホテル」などを運営している。
西鉄グループの場合、有料の特急電車を運転していないことや、戦時中に合併した鉄道会社が、百貨店を運営していなかったこともあり、流通分野に関しては、近鉄グループと比較すると、弱いように感じる。
今後は、少子高齢化などの進展により、鉄道事業やバス事業は先細ることが目に見えている。そのため、たとえば近鉄グループは、「しまかぜ」「青のシンフォニー」などの列車単体で利益を出すのではなく、グループ全体で増収増益になるように、事業展開をしているが、これからの鉄道事業体は、不動産事業、国際物流事業、流通事業、旅行事業などに力を入れ、グループ全体での相乗効果による増収増益を目指す方向へシフトすることが、急速に進むと予想される。
(了)
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