2024年12月22日( 日 )

トランプ前大統領の言いたい放題:ウクライナへの援助資金を欧州に請求

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、7月23日付の記事を紹介する。

アメリカ イメージ    アメリカの大統領選挙は過熱する一方です。日本ではまだ関心が薄いようですが、アメリカの今後を左右する可能性を秘めているのが「ケネディ神話」を背負っているロバート・ケネディ・ジュニア候補に他なりません。言わずと知れた、ケネディ一族の3代目です。

 何かと話題満載のRFKジュニアですが、自分の叔父や父親を暗殺した疑いが濃厚との独自の調査に基づき、大統領に選ばれた暁には「CIAを解体する」と豪語しています。しかも、数日前には「NATOも解体せねばならない。さもなければ、ロシアとの第3次世界大戦を防げない」とまで、主張を過激化。

 長年、環境、医療問題を専門とする弁護士として活動してきたRFKジュニアですが、現在のアメリカを飲み込む分断化や経済的な苦境から脱却するには超過激な政策もやむを得ないとの発想に傾いてきたようです。

 価値の裏付けのないドルを再生させるには、正真正銘の「国際通貨」として信用力を高める必要があり、「金、銀、プラチナ、ビットコインなどとも紐づけ、そうした交換の際には手数料を無料にする」と訴えています。

 はたまた、水道水に含まれる化学物質がカエルのみならず人間までも性転換に押しやっているとの珍説を繰り出してきました。意外に思われるでしょうが、この珍説は有力なメディア司会者のタッカー・カールソンの賛同を得て、「アメリカでゲイが増えているのは、そのせいだ」とネット上で拡散中です。

 とはいえ、過激な言動に関してはトランプ前大統領も負けてはいません。7月16日のFox Newsのインタビューでも、相変わらずの「トランプ砲」を連続発射していました。
 曰く「俺がホワイトハウスに返り咲いたら、その日のうちに、ウクライナ戦争を終わらせてみせる」。

 彼に言わせれば、「俺はゼレンスキーと親しい。プーチンとはもっと親しい。もし俺が大統領のままだったら、今のようなウクライナ戦争は絶対に起きていない」とのこと。しかし、肝心の「戦争終結方法」については、具体的なコメントはありませんが・・・。

 いつものことですが、彼の主張は「大事なことは勢いだ」ということに尽きます。「俺が再び大統領の座に就いたら、即座にゼレンスキーとプーチンに電話を入れる。そして戦争を止めるように説得するつもりだ。俺のいうことを聞かないと、とんでもない結果になるぞ、と脅せばいいのさ。そんな交渉(ディール)ができるのは、世界中でも俺だけだ」。

 そのうえで、「これまでアメリカは莫大な資金をウクライナに提供してきた。ヨーロッパの問題でありながら、EU各国はほとんど資金を出していない。俺が大統領にカムバックしたら、欧州の連中から資金を取り戻す」とまで大胆な発言を行っています。

 日本ではまったく報じられていませんが、トランプ氏はプーチン氏だけではなく、習近平国家主席や金正恩総書記との緊密な関係をことあるごとに吹聴しているのです。曰く「習近平国家主席は凄腕の政治家だ。見栄えも、頭脳も、全身も輝いている。あんな男はハリウッド中探しても見つからない。彼は中国のために全身全霊で戦っている。俺はアメリカのために、そうしている。大事なことは、俺たちは愛し合っていて、強固な関係を築いていることだ」。

 耳を疑うような発言ですが、さらに畳みかけるように、「習近平は死ぬまでトップの座にあるだろう。すごい奴だ。俺も負けてはいられない」と、現在の米中関係からは想像できないような発言の数々。とはいえ、そうした奇想天外な発言こそ、トランプ人気の源泉と思われます。

 そのうえで、現職のバイデン大統領についても、罵詈雑言のオンパレードです。曰く「居眠りバイデンではプーチンとも習近平とも勝負にならない。フランスのマクロンからもコケにされているではないか」。さらに「あいつらは皆、頭がいいぜ。しかも、どいつもこいつも悪意の塊ときている。もうろくバイデンではまったく相手にならない」と断言。

 結論は「今のアメリカは史上最悪の危機に直面している。ところが、バイデンにはそんな危機意識が微塵も感じられない。俺が矛を収めるしかないだろう」ということ。そんなトランプ砲に怖気づいてしまったかのように、共和党候補として2番手についていたフロリダのデサンティス知事は選挙スタッフの大幅削減に踏み切りました。

 撤退のタイミングをうかがっているのかも知れません。すると、すかさずトランプ氏は「あいつは俺のおかげでフロリダの州知事になれただけで、1人では何もできない弱虫だ」と、同じ共和党員を虫けらのように切り捨てるのです。となると、トランプ氏が唯一「あいつは大した玉だ」と評価しているRFKジュニアとの「過激派対決」が起きるかも知れません。

 とはいえ、こんな極端な議論がまかり通るようでは、アメリカの先行きは暗いと言わざるを得ないでしょう。アメリカのドルや赤字国債を日本政府は大量に買い支えていますが、もはや潮時は近いと思われます。

 次号「第350回」もどうぞお楽しみに!


著者:浜田和幸
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