2024年12月21日( 土 )

ブラックロックのビットコイン現物ETF申請が意味すること(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

世界最大の資産運用会社ブラックロック

 現在、全世界の約200の資産運用会社がETFを発行している。業界最大手はブラックロックで、ETF市場における全資産の約38%が同社の運用資産である。その運用資産規模は約9兆ドルに達すると言われている。

 ブラックロックはウォール街で最も影響力のある会社でもあり、政府の金融関係の要職には同社出身者も多いという。実際、ブラックロックは今まで576件のETFを申請したが、拒否されたのはたったの1件にすぎない。このような経緯からしても、今回のブラックロックのビットコイン現物ETF申請は承認される可能性が高いとされる。

 これがSECに承認されると、ブラックロックは流動性を確保するため、大量のビットコインを購入する必要がある。これが今後、ビットコイン価格を押し上げることになるのではないかと期待されている。少なくとも200億ドルくらいの資金が証券市場に流入すると予測する専門家もいる。

SECが今まで現物ETF申請を拒否した理由

ビットコイン イメージ    SECはこれまでに約12件のビットコイン現物ETF申請を拒否してきた。基礎資産であるビットコインの価格変動が激しくて、投資家を保護する安全装置ができていないというのが大きな理由であった。しかし、現物ETFが承認されれば暗号資産は金融市場の枠組みのなかに入ることになり、暗号資産市場の裾野は大きく広がることになる。

 暗号資産は価格が大幅に変動しながらも市場から消えず、暴落を乗り越えて現在に至っている。とはいえ、暗号資産は主に交換所で取引されているが、価格がどのように形成されているのか不透明であるうえ、価格算定の基準も確立していないこと、さらには、コインを大量に保管するインフラも整備されていないことなどにかんがみ、SECとしては暗号資産市場は十分環境が整っているわけではないと判断しているようだ。しかし、現物ETFが承認され大手金融機関がビットコインを取り扱うことになると、こうした課題は徐々に解決されていくことと思われる。

今後予想されること

 暗号資産を資産のなかに組み入れようとするウォール街の試みは、暗号資産業界にとっては大きな前進である。ペイパルもステーブルコインを発行すると発表しているが、これにより暗号資産の市場拡大に拍車がかかることになるだろう。加えて、来年4月はビットコインの半減期も控えている。ビットコインのインフレを防止するため、マイニング報酬額が半分に減らされるわけだ。

 つまり、現物ETFなどビットコインの需要が拡大していくなか、ビットコインの供給は段々減っていくのであるから、その価値が今後上昇するだろうことは容易に想像できる。ビットコイン価格の推移に引き続き注視したいところだ。

(了)

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