2024年12月22日( 日 )

韓国不動産業界を揺るがす不動産プロジェクトファイナンス(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

高金利で事態が暗転

韓国 不動産 イメージ    低金利時代には金融機関も高い収益性の不動産PFに投資を拡大させた。ところが、事態は一転し、高金利時代になり、不動産の販売不振が続くなか、建築資材まで高騰し、建設会社にとっては弱り目に祟り目である。以前は貸し出し金利が低い場合は3%、高くても4~5%であったが、それがいつの間にか8%前後となり、金利負担は2倍以上となった。

 その結果、韓国銀行によると、昨年末時点で未分譲住宅は前年対比で50.5%増加している。言い換えると、建設会社の負担は増加し、破産リスクが高くなっているのだ。今年6月基準で金融機関全体の不動産PFの貸し出し残高は133兆1,000億ウォンである。

建設会社の連鎖倒産のリスク

 不動産PFから資金調達が難しくなったきっかけは江原道(カンウォンド)が推進していたレゴランド開発事業での債務不履行だ。韓国では大掛かりなマンション建設や大型のプロジェクト開発の資金調達には不動産PFが活用されている。レゴランドも不動産PFを活用して2,050億ウォンのABCPを発行した。

 レゴランドのABCPは自治体の債務保証がついているということで投資家は安心して投資をしたが、道が債務保証の履行を拒否し、再生手続きの申請を行ったことで、債権はデフォルトとなり、PF市場は大混乱に陥った。その後、不動産市場は低迷し、売れ残り・未着工工事が増え続けているので、PF保証が建設会社の偶発債務になる可能性が高まっている。

 それだけでなく、大手建設会社でさえPFローンの借り換え(リファイナンス)に失敗している状況である。そのような状況下、韓国建設業界で上位15%に入っていた国元建設が不渡りとなり、業界に衝撃が走った。大手建設会社も資金繰りに追われているのは同じで、事態の悪化に韓国政府もその対応に迫られている。

不良債権懸念が高まっているノンバンク

 世界金融危機の際に、韓国の貯蓄銀行は不動産PFで倒産の憂き目にあった経験がある。再びそのような事態が再現されるのではないのかと業界では不安が募っている。金融機関の貸し出し残高が133兆ウォンを上回るようになっただけでなく、延滞率も2%を超えるようになったので、政府は神経を尖らせている。

 金融機関の不動産PFの貸し出し延滞率は今年3月を基準に2.01%で、昨年12月末の1.19%より0.82ポイント急上昇している。延滞率の推移をみると、2020年末に0.55%、 2021年末には0.37%に過ぎなかったが、今年3月末に2%を上回っている。とくに金融機関のなかでも、証券会社の延滞率は17%を超えており、懸念すべき水準だ。幸い銀行は比較的延滞率が低いが、証券会社や与信供与会社などの延滞率が急増している。

 不動産PFの不良債権化が進めば進むほど、建設会社が倒産するだけでなく、そのリスクは金融機関にも飛び火する恐れがある。それを何とか食い止めたいという政府と、建設会社の倒産を防ぐために不動産浮揚政策を実施して、そのリスクが家計に転嫁されることを警戒している専門家の意見が対立している。

(了)

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