池田大作氏の死去で、創価学会の支持を受ける公明党の行方は(前)
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公明党の支持母体で日本における宗教団体でも大きな存在感を持つ創価学会の池田大作名誉会長が11月15日、東京都内で老衰のため逝去した。学会の支援を受ける公明党は、自民党との連立関係などで岐路に立っている。今後の行方を考察した。
池田氏の存在の大きさ
「先生(池田大作氏)が亡くなられ、先生に直接指導を受けた世代の会員も年々少なくなり、これからも信心に励んでいくけれども、あまりにも大きな存在が失われて、今後どうなっていくだろうか」。
福岡県内の創価学会員(以下、学会員)は、このように力なく語った。少なくない学会員が同じ思いでいるのではないだろうか。
18日午後、創価学会名誉会長で、公明党を結成した池田大作氏が15日夜、老衰のため、新宿区の学会施設で亡くなったとの訃報を知った。「昨年の安倍元首相の事件も大きかったが、時代はまた大きく変わると感じた。
昨年から今年にかけて、旧統一教会の解散命令請求など、宗教界は大きな転換期を迎えている。池田氏は、日本の宗教界と政治に大きな影響を与え、そのカリスマ的存在は、他の宗教団体以上のものであったことは間違いない。
安保法制で平和主義との矛盾
とくに今後の政治への影響は少なくないものがあるだろう。創価学会を支持母体とする公明党は、20年以上にわたって自民党と連立を組んできた。さまざまな批判もあるなかで公明党が政権内に入っていることで、自民党単独では実現が困難な政策も通すことができた。たとえば、集団的自衛権の憲法解釈を変更した2016年施行の安保法制である。
公明党は1965年の立党以来「平和と人権」の政党であると自他ともに認めてきた。それは立党精神に示されている。「大衆とともに語り、大衆とともに戦い、大衆の中に死んでいく」との池田氏の言葉から生まれた。
それだけに、戦争法案とも批判された安保法制は、創価学会婦人部を中心とした古参信者などの反発も受けた。創価学会広報室は、16年5月「集団的自衛権を限定的にせよ行使する場合、本来、憲法改正手続きを経るべきである」とのコメントを発表していた。
各地で創価学会旗の「三色旗」を手にした学会員が反対運動に参加する姿も見られた。学会と公明党との間の考え方の違いが誰の目にも明らかだった。池田氏が公に出なくなったのが11年。安保法制の時点で公明党に対する影響力を行使できなくなっていた。
集団的自衛権の憲法解釈を変更した安保法制では、水面下の折衝において自民党が公明党の主張に配慮している。『公明党に問う この国のゆくえ』(田原総一朗・山口那津男、毎日新聞出版、2020年)には次のようにある。
「安倍(晋三)総理は、アメリカが武力攻撃された場合、日本が集団的自衛権を行使できるようにしたかったのだと思います。いわゆるフルスペック(全面的)な集団的自衛権です。(略)公明党はフルスペックの集団的自衛権を決して許してはいけない、何があってもこれに歯止めをかけなければいけないという立場で、断固として反対し続けました」。
こうした公明党の動きを快く思わないのが、麻生太郎氏らである。今年9月に福岡市内で講演した際に「公明党はがん」と発言し、物議を醸した。だが、自公関係に大きな影響をおよぼしたかというと、現時点ではそうはならなかった。
出版妨害事件や政教分離の批判も
池田氏の逝去にあたって、岸田文雄首相は11月18日、自身のX(旧・twitter)を更新し「池田大作氏の御逝去の報に接し、深い悲しみにたえません。池田氏は、国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました」と哀悼の意を示した。
さらに岸田首相は19日夜、東京・信濃町にある創価学会の本部を自民党総裁として弔問に訪れた。原田稔・創価学会会長、池田氏の長男の池田博正主任副会長と面会したという。
岸田首相のこれらの動きにSNS上において、「政教分離の原則に反する」などの強い批判の声が挙がった。たしかに、日本国憲法において「政教分離」の原則の下、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」と定められている。
一方で、宗教団体が政治活動を行うこと自体は違法ではない。旧統一教会が、政治団体として「国際勝共連合」をつくり、自民党を中心とした保守系議員の選挙応援や、反ジェンダーフリー運動やスパイ防止法制定運動を展開していたように、公明党の存在や活動自体も違法ではないのである。
(つづく)
【近藤 将勝】
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