池田大作氏の死去で、創価学会の支持を受ける公明党の行方は(後)
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公明党の支持母体で日本における宗教団体でも大きな存在感を持つ創価学会の池田大作名誉会長が11月15日、東京都内で老衰のため逝去した。学会の支援を受ける公明党は、自民党との連立関係などで岐路に立っている。今後の行方を考察した。
出版妨害事件や政教分離の批判も(つづき)
創価学会と公明党の関係性が問題になったのは、1969年まで遡る。
政治学者・藤原弘達氏の著書『創価学会を斬る』の出版を中止することを、公明党が田中角栄自民党幹事長(当時)に働きかけていたことが発覚した。これが「言論出版妨害事件」である。
『しんぶん赤旗』の報道を契機に、藤原氏に対して脅迫や嫌がらせがあったこと、公明党幹部が出版差し止めに向けて動いていたことが判明した。
この問題では、創価学会と公明党の関係は「政教分離」に反すると批判を浴びた。最終的に、池田氏は出版妨害事件を謝罪し、創価学会幹部の議員兼職を行わない、池田氏は政界入りしない、公明党の自立性を高め、創価学会は党の支持団体の立場に徹するとした。
その後も創価学会と公明党の関係は「政教一致ではないか」との批判が続いたが、学会員による布教・勧誘、いわゆる「折伏」の激しさは、80年代ごろには時代とともに穏健なものへと変わっていった。このあたりが、正体を明らかにせず勧誘を行う旧統一教会と明確に違うところだろう。池田氏の指導の下で、過激さは影を潜め、現実的な方向へと舵を切ったことは評価されてよいだろう。
立党の原点が問われる
問題は、池田氏亡き後である。自民党と本来思想・政策面で水と油の関係と言える公明党が連立を組んでいるが、このところその綻びが見えている。
もともと公明党は、平和や人権といったリベラルな価値観を重視する。支持基盤の創価学会の婦人部(現・女性部)は、池田氏が唱えた平和主義に拘ってきた。その平和主義は対話に基づくものである。
09年に自民党が政権から下野し、自公連立の枠組みがなくなった際に、当時の公明党福岡県本部代表であった弘友和夫参議院議員(当時)は、当社のインタビューに対して次のように回答していた。
「公明党としても総括させていただきました。政権与党としての10年間で、一生懸命生活者目線の政策を実現しようとしてきました。実現させた施策は少なくないと思っています。ただ、今までの自民党の体質についてはさまざまな評価、批判もありました。その自民党中心の政権に代わって、一度民主党にやらせてみてはどうかという思いが大きくなり「政権交代」へのうねりにつながっていったんだと考えています。そこをきちんと総括したうえで、我々に求められているのは、公明党の原点に返ることです」(「弘友和夫 公明党県本部代表に聞く(上)」)。
弘友氏がいう「公明党の原点」とは何か。氏は続けて「大衆とともに語り、大衆のなかで闘い、大衆とともに死んでいく」。これが公明党立党の原点と述べていた。
創価学会は、創立以来、零細商工業者からの支持が厚い。安倍政権時代の一律10万円の給付金支給は、自民党内で低所得者のみを対象として30万円支給と決まっていたものを公明党が覆した。この10万円給付で助かった自営業者は少なくない。
生活者や自営業者の目線を重視する公明党の姿勢は、池田氏の政治に対するリアルな認識に基づくものだ。集票力の低下がいわれるとはいえ、池田氏の逝去で即、自公関係が解消するなどの政治的転換は起きないだろう。一方で池田氏への強烈な崇拝・信仰をもつ世代が引退していくなかで、変化も起きている。
宗教と政治の関係や宗教2世問題が取りざたされて以降、創価学会の2世信者の間でも動揺の声が上がっている。
身近な例だが、記者の比較的近い身内にも学会2世がいる。旧統一教会の問題を2世の小川さゆりさんらが前に出て、公に語るようになり、親の信仰=自身の信仰ではないと考える人が増えていった。記者の親族の2世は、以前は夫婦で学会活動に積極的だったが、自分自身で考えたいとして、会合などに行かなくなったという。そのことに慌てたのが叔母たちである。
「信仰も活動も、強制ではないから、自分でよく考えたほうがよい」。私は、そうアドバイスを送った。
学会婦人部の愛唱歌「今日も元気で」に「うれしい時も かなしい時も かわす言葉は先生 先生 われらの先生」とある。先生とは池田氏のことである。しかし、その「先生」はもうこの世にない。
カリスマ的存在であった池田氏が逝去し、学会を支えた婦人部の高齢メンバーが引退し、2世が活動から離れていくのにともない、創価学会・公明党のあり方が変わっていくことは間違いない。
(了)
【近藤 将勝】
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