爆発寸前の韓国の家計負債問題(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏韓国には「ジョンセ」という独特な賃貸制度がある。住宅に入居するときに保証金を預けるが、住宅を明け渡す時にそれを全額返してもらう制度である。まとまったお金を預ける代わりに、毎月の家賃は支払わないという独特な制度である。韓国では「ジョンセ」保証金を銀行が貸し出している。それがジョンセ融資だ。
韓国ではジョンセ保証金は銀行から借りているにも関わらず、何故か家計負債にカウントされていない。22年末のジョンセ保証金の合計金額は1,058兆ウォンで、この金額を家計負債に入れると、家計負債総額は何と3,000兆ウォン近くになる。
さらに、家計負債の別のかたちを取った自営業者の負債もある。自営業者は彼らを対象にした融資を活用しており、その合計額も1,000兆ウォンを上回るようになっている。このように見てみると、家計負債の実際の金額はもっと大きいことがわかる。
政府の政策ミスが原因か?
コロナ禍の影響などで、韓国の家計負債は増加してきた。政府もコロナで景気が冷え込むのを恐れて、不動産規制を緩和し、その結果、家計負債は雪だるま式に増えてきた。住宅価格が高騰しジョンセ保証金の金額が引きあがると、韓国政府はその対策としてジョンセ保証金を銀行で貸し出す政策を導入した。
ところが、ジョンセ保証金の融資を銀行から受けられるようになると、住宅の購入者が増え価格高騰の原因となった。政府はむしろそれを望んでいたのかもしれないが、結果的には負債を増加させる構造をつくったわけだ。
住宅の価格に占めるジョンセ保証金の比率は09年には52%であったが、15年11月時点では74%になった。高くなった保証金を賄うため、銀行から融資を受けることになり、それが家計負債の増加の一因となっている。
ジョンセ保証金の融資制度は李明博大統領時代に導入され、次の朴槿恵大統領時代にジョンセ保証金に対して韓国住宅金融公社、住宅都市保証公社が融資金額の90~100%を保証する制度が導入された。
政府の保証が付くため、銀行では貸出の審査が緩くなる。この2つの制度導入が住宅価格の高騰につながり、結果的には家計負債の増加の原因となっている。
消費におよぼす悪影響
国際通貨基金(IMF)は GDP対比の家計負債が1%増加すれば、消費はGDP対比で0.06%減少することになるので、家計負債は消費冷え込みの原因となり、中長期的には経済成長を妨げることになると警告している。
それではなくても、高金利、高物価などで景気が低迷しているなか、過度な負債で消費が縮むと、経済の活力を取り戻すのは困難になる。家計負債が増え続けると、経済成長率の低下、投資の低調など深刻な副作用が予想されるので、金利を上げて負債を抑制するという痛みをともなう政策が必要だと主張する専門家もいる。
(了)
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