迫る新紙幣発行、厳しさ増すパチンコホール経営
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パチンコホール(以下、ホール)経営を取り巻く環境は厳しい。思えば2018年の改正風営法の施行以降、改正健康増進法やコロナ禍への対応と、間断なく不可避の支出を余儀なくされてきた。23年はコロナ禍も落ち着き、スロットに関しては“貫きスペック”に代表される遊技性の向上も図られるなど、明るい兆しも見受けられたが、24年7月には新紙幣発行が控えている。ホールは新紙幣に対応した紙幣識別機の導入が避けられず、またもや費用負担が先行する格好だ。
観光客のパチンコ体験需要を取り込む
福岡のホール経営業者に目を向けると、直近2年の動向から真っ先に想起されるのがプラザ赤坂跡地の売却で話題を呼んだ(株)宣翔物産だが、「GION」の経営で知られる七洋物産(株)も注目される。2社に共通しているのは、来福観光客、とくに韓国人のパチンコ体験需要をうまく取り込んでいるということだ。
JR博多駅・筑紫口からすぐの場所にあるプラザ博多、福岡市地下鉄・空港線の祇園駅からすぐの場所にあるGION1・1には、多くの韓国人がパチンコ・スロット遊技を体験しに足を運ぶ。彼らが一回の遊技で使用する金額は日本人よりも多く、ホールにとってはありがたい存在だ。ホール側も韓国語での案内を充実させており、SNS上でお勧めホールとして紹介されることによる、口コミ集客にもつながっている。
コロナ禍ではさすがにインバウンド需要も減少したが、来福観光客が復活した今、両ホールも回復基調にあるものと推察される。
創業の地は山口、GION経営の七洋物産
GION1・1の存在感もあり、地元福岡においては相応の知名度を有する七洋物産だが、創業の地は山口。1958年に山口でホール「永楽」の営業を開始したのが始まりで、創業60年を超える老舗ホール経営事業者である。また、ホール経営のほかにも不動産事業や太陽光発電事業にも取り組んでいる。太陽光発電事業では熊本県水俣市の自社所有地でメガソーラーを整備し、発電した電気を九州電力へ売電している。不動産事業ではJR博多駅至近地に七洋ビルを所有しており、こちらはJR九州が「JR九州ホテル ブラッサム博多中央」として活用している。
多岐に渡り事業を展開している同社だが、主力はやはりホール経営事業。福岡県下で4店舗(GION1.1、GION小倉、パーラーGION、パーラーTokiwa)展開するほか、グループ会社の大商がDISYO(大分)1店舗、東洋エンタープライズが永楽本店、永楽(山口)2店舗をそれぞれ運営しており、ギオングループ全体で7店舗を運営している。近年は法改正などの影響もあり、減収傾向にあったが、22年12月期には前期比10億7,731万円の増収となる140億円超の売上高を計上し、営業赤字からも脱却をはたしている。厳しい市場環境にあるパチンコ業界だが、今期で最終赤字からも脱却できるのか注目される。
新紙幣発行、パチンコ業界でも2024年問題
冒頭述べたように、24年7月には新紙幣が発行される。ホールでは台間に紙幣識別機を設置し、客が投入した紙幣の額に応じてメダルやパチンコ玉を貸し出しており、スマートスロット・スマートパチンコによる、電子データのやり取りになってもその基本は変わらない。新紙幣に対応した紙幣識別機の導入は不可欠なのだ。
紙幣識別機はメーカーやサービス内容(設置工事費など)により異なるが、最低でも数万円かかるため、たとえば1台3万円とした場合、1,000台のスロット・パチンコ台を設置しているホールは、3,000万円の設備投資が必要となる。複数ホールを展開している事業者であれば、当然店舗数分導入する必要があるため、費用は容易に億単位にのぼる。
度重なる設備投資で疲弊したホールに、追い打ちをかける新紙幣の発行。資本力のない中小規模のホールにとって、24年は事業譲渡や店舗閉店の上不動産を売却するなどの、決断を迫られる年になる。
【代 源太朗】
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