旧統一教会と政治の黒い関係を長年追及 今後の教団の行方を占う(前)
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ジャーナリスト・作家
鈴木 エイト 氏世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)の被害者救済のための法整備をめぐり、自民、公明、国民民主の3党が共同提出した修正法案が12月5日、衆議院本会議で3党と立憲民主、日本維新の会、共産などの賛成多数で可決し、衆議院を通過した。包括的財産保全を可能とする立憲・維新両党が提出した法案は否決された。長年、旧統一教会と政治の関係などを追及してきたジャーナリストの鈴木エイト氏に、教団が今後どのような方向に行くのかなどについて話を聞いた。
教団と政治の関係を追及
安倍晋三元首相が銃撃を受けた事件は多くの国民に衝撃を与えたが、山上徹也容疑者が事件直後に供述した「母親が統一教会に1億円献金し、統一教会を恨んだ」「安倍元首相ではなく、統一教会のトップ、韓鶴子(ハンハクチャ)総裁を撃ちたかった。でも、コロナで日本に来ないので、統一教会と深い関わりのある安倍元首相を撃った」と証言した。
山上容疑者の供述が伝わるや、連日、ワイドショーをはじめメディアは統一教会批判キャンペーンを展開した。1990年代の合同結婚式の報道と違い、政治と教団の関係に迫るものだった。一連の報道では、伝聞のみならず、国会議員が教団のイベントで挨拶している写真や動画、教団内部の資料などが証拠として報道されてきた。情報の多くは、鈴木エイト氏より提供されたものだった。
しかし、その道のりは決して平坦なものではなかったという。「統一教会についてなかなかメディアはやりたがらなかった」(鈴木氏)。2013年の参議院議員選挙で、安倍氏と同郷で元産経新聞政治部長・北村経夫氏(参議院議員)の選挙において、教団が支援していたことを突き止めた。取材のなかで、北村氏が福岡・久留米市の教団施設において、講演をしていた事実も判明し、教団が関連団体を通じて組織的選挙支援を行ったことが明らかであった。これを機に教団と政治の関係に深く入り込んで取材をすることとなった。
一躍、時の人へ
鈴木氏は「これは世の中に知らしめなければいけない」との思いで各メディアに企画を持ち込むが、フリーランスの1記者ではなかなか通らなかった。しかし、1人で地道に取材を続けるなかで唯一、週刊朝日の副編集長・森下香枝氏(当時)が問題意識をもって、誌面で取り上げてくれたという。
ある政治家からは「訴えるぞ」と脅されるなどありながらも、地道に取材をしていくなかで、安倍元首相の事件という予想もしなかった事件を契機に一躍時の人になった。一時期は、東京・大阪を往復し、朝から夜まで報道番組への出演が続いたという。現在は、各地で講演活動や取材・執筆活動のほか、23年10月28日からは、インターエフエム(東京:89.7MHz)において、鈴木氏自身がパーソナリティをつとめる新番組『鈴木エイト MIDNIGHT TRACKING』の放送も始まった。
首相と教団幹部の面会暴露
国会で旧統一教会の被害者救済のための法整備の議論が行われていた12月5日、朝日新聞が1面トップで衝撃的なスクープを伝えた。岸田文雄首相が自民党政調会長時代の19年に米国のギングリッチ元下院議長と党本部で面会した際、旧統一教会友好団体のUPF(天宙平和連合)日本支部トップとUPFインターナショナル会長が同席していたというものである。19年10月4日、党本部でニュート・ギングリッチ元米下院議長と面会した際、同席していたのは「UPF」日本支部トップの梶栗正義氏、UPFインターナショナル会長のマイケル・ジェンキンス氏だった。
岸田首相は、旧統一教会友好団体トップと面会した写真を報じられたことについて、「旧統一教会の関係者とやりとりしたという認識はない」「私自身が旧統一教会関係者と関係があった、ということは当たらない」と回答している。岸田首相は当時自民党政調会長で、公式な面会記録なども残っているはずだ。頑なに関係性を否定するのはいったい何があるのか。
鈴木氏は次のように語った。
「22年9月の点検(自民党)で終わったようにされているが、統一教会と政治との関係をきちんと調査して明らかにしない限り、今後もいろいろなことが公になって教団に首根っこを掴まれたままになる」。
続けて「UPFは教団創始者の故・文鮮明氏と妻で教団総裁の韓鶴子氏が創設した団体で、安倍元首相が21年にビデオメッセージを寄せている。ギングリッチ氏はUPFの集会にたびたび出席しており、イベントにおいて『安倍元首相と自民党議員のほぼ半数が統一教会・UPFと協力し続けてきた』と発言するなど、教団とのつながりが強い」と解説した。
梶栗氏はUPF日本支部トップ以外にも、国際勝共連合の会長も兼務している。父の玄太郎氏は10年から2年間教団の会長を務めており、正義氏は日本支部の将来を担う2世のエリートといってよい。では、今、解散命令請求の真っただなかにある日本の旧統一教会が、岸田首相の失脚を意図して情報を流したのかという疑問が起こるが、鈴木氏はそうではないとの見方を示した。
「日本の教団からのリークではなく韓国にある世界本部の関与が疑われている。もちろん、日本の教団においても、解散命令請求を出した岸田首相への批判は強く、福岡市では、連日街頭演説で岸田政権を非難する現役信者の街宣活動も行われている」(鈴木氏)。
(つづく)
【近藤 将勝】
<プロフィール>
鈴木 エイト(すずき・えいと)
1968年滋賀県生まれ。90年日本大学卒業。ジャーナリスト・作家。「やや日刊カルト新聞」主筆。カルト問題学習会(仮)代表。2002年、統一教会による偽装勧誘の阻止活動を始める。11年から多数の週刊誌やビジネス誌、経済専門誌などに寄稿。18~21年、扶桑社「ハーバー・ビジネス・オンライン」に「政界宗教汚染~安倍政権と問題教団の歪な共存関係」を掲載。22年7月の安倍晋三元首相銃撃事件以降、報道番組に多数出演するとともに、「政界カルト汚染」に関する講演活動を全国で行う。著書多数。主な著作に『「山上徹也」とは何者だったのか』(講談社+α新書)『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小学館)。
X(旧・Twitter)ID:cult_and_fraud法人名
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