2024年11月23日( 土 )

CDMO事業に注力する韓国の製薬会社(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

製薬業界の最新状況

医薬品製造 イメージ    医薬品は大きく分けると、合成医薬品とバイオ医薬品がある。合成医薬品は治療効果のある物質を探した後、それを化学的に合成してつくられる医薬品である。分子が小さく分子構造が明確であるため、実験室などで簡単に合成することもできる。サイズが小さい合成医薬品は、血液に乗って人体を回るなか、どこにも作用できるが、余計なところに付着したりして、副作用を起こすこともある。

 一方、バイオ医薬品は、分子構造が複雑で、合成医薬品に比べてサイズも大きい。その上、どこにでも作用するのではなく、標的の細胞にだけ結合するようになっている。バイオ医薬品は高付加価値品が多く、開発に成功すれば大きな利益が期待でき、現在は製薬市場の主戦場となっている。

 半導体業界で半導体の微細化が進むことによって、製造に莫大な投資が必要になり、半導体の設計だけに専念する会社と、製造を受託する会社(ファウンドリ)に分かれている。ファウンドリで世界的に有名な企業はご承知の通り台湾のTSMCである。バイオ業界はいろいろな面で半導体業界と類似している。

 まず、バイオ産業も製造設備を構築するのに、莫大な資金が必要な装置産業である。それに設備の管理やプロセス管理を通じて、歩とどまりの向上、純度の向上、価格競争力を高めることが求められる。バイオ医薬品の製造には、細胞培養や遺伝子組換えといった高度なバイオテクノロジーや、それらに対応した設備が求められる。それに対応できる人材やノウハウの蓄積が要求されるので、プロセスが軌道に乗るためには、数年の歳月が必要なこともいうまでもない。

 このような状況下で、製薬業界でも、研究開発に集中する製薬会社や創薬ベンチャーと、委託製造を専門にする会社に分かれている。新薬開発は成功確率が低い反面、CDMOビジネスはリスクが新薬開発より低く、新薬開発のノウハウも習得できるメリットがある。

CDMOビジネスとは

 そのため、医薬品の製造工程を幅広く担うCDMO (Contract Development and Manufacturing Organization、医薬品開発製造受託機関)の存在感が高まっている。CDMOとは、製薬業界において製薬会社向けに開発段階から製造を受託する企業のこと。CDMOビジネスはすでに承認された医薬品の製造を受託するだけではなく、完成医薬品の原料となる原薬を、効率的に生産するためのプロセス開発や、飲みやすく、効果の高い薬のかたちにする製剤化なども手がけている。

 製薬産業では、従来は製薬会社が新薬の開発から臨床、それに大量製造に向けたプロセス技術の開発、量産まで、すべてを自社で行うことが多かったが、新薬開発に必要な資金が巨額になることから、失敗すれば大きな損失をこうむる可能性がある。そのようなリスクを少しでも分散するため、量産を外部企業に委託するCDMOの活用が増加しているのだ。その結果、製薬会社は研究開発に集中できるし、資金力が乏しく、製造設備をもつことのできない創薬ベンチャーも、革新的な新薬の開発に参加できるので、グローバルな競争力の強化と革新につながっている。

(つづく)

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