2024年12月23日( 月 )

【縄文道を極め世界平和を(1)】太古にこそ新しさが宿る~見るべきは縄文遺跡にあり(前)

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 「縄文ブーム」で縄文遺跡をめぐるツアーが流行り始めている。「想像力を発揮させる縄文の旅」は東京湾を一周し、東京湾エリアの縄文遺跡をめぐるツアーだ。縄文時代は今から約1万6,500年前~約2,500年前で、当時の人々と私たちでは、暮らし方はもちろん価値観や考え方も大きく変わっている。縄文を知るためには「想像力」を発揮させることが欠かせない。

縄文時代の集落があった大森貝塚

 「縄文遺跡は北海道から沖縄まで、全国に9~10万カ所あります。縄文遺跡がつくられたのは、縄文時代から住みやすい場所だったことが、その理由でしょう。縄文人は五感とともに第六感に優れ、高い文化的知見をもっていました」と(一社)縄文道研究所代表理事・加藤春一氏は語る。

 「想像力を発揮させる縄文の旅」の1日目のスタートは「大森貝塚」(東京都品川区)だ。大森貝塚は、東京を南北に走る京浜東北線の線路沿いから西側にかけて広がる武蔵野台地の線路際の崖の斜面から1877年に見つかった。モース博士が汽車で東京駅に向かう途中で見つけたという。大森貝塚からは、縄文時代の食料だったハマグリの貝殻や魚や獣の骨片、縄文土器片などが見つかっている。

 縄文時代には今より海水面が3~4m高く、内陸に海が入り込んでいた。そのため、縄文遺跡は周りより高い台地にあることが多い。住居跡も見つかっており、「縄文時代の集落が当時5~6件あり、約30~40人が暮らしていたのではないでしょうか」(東京都大森貝塚保存会会長・新美豊氏)。大森貝塚から斜面を下ると、干潟と海になっていたという。

縄文土器や土偶から見える縄文社会

 全国の縄文遺跡から発掘された縄文土器や土偶、装身具、暮らしや祈りの道具は、東京の上野公園にある東京国立博物館(東京都台東区)の平成館考古展示室で見ることができる。縄文土器は縄目文様や装飾的なつくりで知られる。縄文土器は食料の貯蔵や料理など生活のなかでも使われていたと考えられるが、とても手が込んでいて、芸術的だ。

 日本は雨も多く、食べものとなる植物も育ちやすく、豊かな森や海もあって、世界的に見ると食料の豊かな国だ。使うという実用面を超えて、装飾的な土器づくりに専念し、それらを使っていたのは、縄文時代は、食料が豊かで平和であり、心にゆとりのある社会だったからではないだろうか。

重要文化財 みみずく土偶(※)
重要文化財 みみずく土偶(
色鮮やかな縄文土器
色鮮やかな縄文土器
縄文時代の土面や土版、岩偶、岩版
縄文時代の土面や土版、岩偶、岩版

※埼玉県さいたま市真福寺貝塚出土 縄文時代(後期)・前2,000~前1,000年 東京国立博物館蔵。2024年3月5日~9月1日まで平成館考古展示室にて展示。 ^

■INFORMATION
大森貝塚遺跡庭園

<所在地>
東京都品川区大井6-21-6
<開園時間>
午前9時~午後5時
(ただし7月・8月は午前9時から午後6時、11月から2月は午前9時から午後4時)

東京国立博物館
<所在地>
東京都台東区上野公園13-9
<TEL>
050-5541-8600(ハローダイヤル)
<開館時間>
午前9時30分~午後5時
毎週金・土曜日は午前9時30分~午後7時
(入館は閉館の30分前まで)
<休館日>
月曜日(ただし月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館)、年末年始(12月25日~1月1日)、その他、臨時休館あり
※「縄文時代の装身具と祈りの道具」「縄文時代の祈りの道具・土偶」の展示期間:2024年3月5日~9月1日

(つづく)

【石井 ゆかり】

(後)

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