64歳からの再出発、真珠リノベーションとともに

輝けるライオンズパーソン

2015年10月20日 07:07

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リパールRePearl　代表取締役　斎藤　敬代　氏

忘れられていた真珠が再び輝きを取り戻すとき

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本当に良い真珠を見分ける目も伝えていきたいと斎藤さん

　「64歳からの再出発なんですよ」。
　そう微笑みながら真珠のネックレスを磨く斎藤敬代さんの手元から、輝きを取り戻した真珠が次々と現れる。秋の日差しのなかで、白く光輝く真珠は美しい。
　真珠は冠婚葬祭には欠かせない宝飾品。一家族にひとつくらいは備えてあるものの、日頃はタンスの奥に仕舞われたままとなる場合も多い。また、鉱石と違い表面が傷つきやすく、劣化も目に見えやすい。真珠が他の宝石たちとは違う魅力を持つのは、輝きを伴った色彩を放つ「テリ」があるから。年月を経てテリが低下しても、特殊な技術で磨くことで甦る。光が鈍った真珠が、クリーニングによって本来のまろやかなテリを取り戻すのを見て、ふと仕舞い込まれた真珠を探してみたくなった。

　斎藤さんは、これまで常に真珠と関わりながら生きてきた。長崎県対馬の真珠養殖業家に生まれ育ち、「真珠は他の宝石と違って、貝という生物を母体として育まれるもの。養殖する者の心の波動を吸収しながら育つので、養殖家は常に心持を正しくしておかなくてはならないと両親から教えられてきました」と語る。
　その両親は、島民が生活に困っていたら、自分たちを差し置いてでも、でき得る限りのことをして尽くす人たちだった。「親の年齢になってみて、初めて両親の行為のありがたみがわかりました」と斎藤さん。　1964年には福岡市内で真珠専門店（有）西日本パールの経営を開始。皇后陛下にも献上し、養殖の現場もご覧になっていただいた。
　斎藤さん自身はパールジュエリーデザイナーとしても名を上げ、全国に愛好家を持つ。真珠科学研究所で養殖の専門技術も学び、所長の小松博氏からも「ご両親の真珠づくりの情熱をきちっと受け継いでおり、仕事への情熱を感じる」との評価を受けている。

　そんな斎藤さんも一時期、真珠業から距離を置いたことがある。さまざまな立場の人々と交流を持ちながら、違う方向性を模索してみたのだ。しかし、「やはり真珠の本当の美しさを伝えるのが私の役目」であると実感。2015年10月、先述の小松所長が20年の歳月を掛けて開発した真珠のクリーニング新技術を生かし、日本で初めての真珠リノベーション専門店リパールRePearlを立ち上げた。

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クリーニング新技術を用いて真珠を磨く斎藤さん

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斎藤養殖場の真珠は皇后陛下にも献上された

磨かれて本来の美しさを取り戻すのは真珠だけではない

　真珠クリーニング基本料金価格は、真珠の診断、クリーニング（新品仕上げ）、糸替え込みで、2万9,800円（税込）。状況に合わせて、これにオプション価格がつく。完全予約制で、持参してもらった真珠を目の前でクリーニング、リノベーションし、即日で持ち帰っていただく。目の前で作業しその日のうちに渡すのは、磨かれた真珠の違いが明らかにわかるからだ。自分が渡した真珠だと信じられないお客さまもいる。

　完成までの間は、クラシックが流れる静かな空間で自由にくつろいでもらう。この待ち時間中に、斎藤さん自身、想定していなかったことがあった。待つ間、日頃の悩みや不安をぽつりぽつりと語り出すお客さまが現れ始めたのだ。斎藤さんはこれを傾聴し、助言を求められれば、経験をもとに誠実に言葉を返す。意識していたわけではないが、真珠をクリーニングすると同時に、客の心を覆っていた悩みをもクリーニングしている自分に気が付いた。
　斎藤さん自身、経営者として、１人の女性として、人生の困難な問題をいくつも乗り越えてきた。ガンやうつも経験した。しかし善意ある多くの人々との交際を経て乗り越え、自分の天職に気づき、真珠のリノベーション事業を立ち上げることができた。「今、私の助言が人々のお役に立つというのなら、あの苦労も意味ある貴重な経験だったのですね」と、我が身を振り返る。

　福岡博多中LCでも活躍する斎藤さんは、「64歳から事業を再開した私の姿が、何かしら皆さんのお役に立つといいのですけれど」と語る。今回の事業を通して、社会奉仕をしたいという思いも強い。60歳を超えて、若い頃にはわからなかった人生の機微を感じて、感動することも増えた。いずれは顧客対象に人生を心豊かに生きるためのセミナーなども催し、この気持ちを分かち合えたらと、夢も膨らむ。
　人も真珠も、人に磨かれていくことによって、本来の美しさを取り戻していく。再出発に遅すぎるということはないのだと、リパールRePearlは教えてくれる。

hikaku