韓国総選挙、与党の惨敗で政権運営はいばらの道に(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏コミュニケーション力不足と
夫人の疑惑が足を引っ張る尹大統領は検察総長から大統領になり、政治経験はゼロの大統領であった。保守陣営には大歓迎され、外交面では日本との関係回復を図るなど、評価すべき点も多かった。しかし、人生で一度も失敗した経験がないまま権力の座に上り詰めた尹大統領は相手の言葉を聞くより、自分でしゃべる時間が多く、言葉を慎重に選ぶより熱っぽく語るタイプなので、どうしてもコミュニケーションにおいて問題が発生した。
自分が正しいと思ったら突き進むだけで、相手や国民にきちんと説明しようとしない。尹大統領の本心はわからないが、態度や物言いが誤解されやすく、それが徐々に国民の信頼を失っていった。とにかく尹大統領は国民とのコミュニケーションが下手であった。また、苦労した経験がなく、庶民がどのようなことを心配しているかも全くわかっていなかった。
その一例が「長ネギ事件」だ。3月、尹大統領は物価高で苦労する庶民の問題を解決するため現場視察を行うこととなった。スーパーを訪れた際、長ネギ1束に875ウォン(日本円で約98円)という価格が付いていた。その価格を見て、尹大統領は「そう悪くないではないか」と述べたのだ。ところが、このとき大統領が手に取った長ネギは、特別割引の対象であった。
一般的にはネギ1束は3,000ウォンから4,000ウォンが相場で、それも知らずに満足そうな尹大統領の表情に国民は「大統領は庶民の暮らしがまるでわかっていない」と思ったわけだ。さらに夫人への疑惑も尹大統領の支持率を引き落とす材料となっている。
大統領への不満が選挙結果に表れる
物価高が続く状況に有効な手立てを打てない政権への不満が韓国国民の間で募っていた。加えて、選挙戦では韓国の大学医学部の2,000人定員増への対応などで逆風が吹き、与党にとっては厳しい戦いとなった。もちろん、これらすべての問題が尹大統領の責任ではないが、大統領への不満が選挙に不利な結果をもたらしたのは間違いない。
夫人を巡っては、2022年に自身の事務所で在米韓国人の牧師から高級ブランドバッグを受け取った疑惑がもたれており、状況次第では特別検事に取り調べを受ける可能性もある。
大統領への不満は支持率に如実に表れている。尹大統領の支持率は、22年5月の発足以来30%台という低空飛行を続けている。総選挙で与党が苦戦したのも尹政権の評判が悪いことが最大の理由であった。大統領のコミュニケーション不足、一方的な政策実行などが国民の目には傲慢に見え、このような結果を招いたと考えられる。
選挙結果の政治への影響は
大統領の任期は今後3年であるが、今後も野党との衝突は避けられないだろう。一方、野党は野党全体で180議席超を確保したことによって、ファストトラックを単独で推進でき、すべての法案を迅速処理できるようになった。
与党は今までのことを反省して主要政策を大転換することが必要となり、野党との協調なしでは政権運営ができないので、野党との協調は必須であろう。しかし、野党が圧勝したことにより、政権運営はままならず、政治が混乱することになるのではないかと心配する声もある。
日米中心の外交の軸はぶれることはないだろうが、野党に邪魔されて全く前に進まないことも予想される。世界は半導体、AIなど最先端技術で覇権を巡って熾烈な闘いが展開されているなか、政治的なリーダシップはまともに発揮されるのかどうかへ関心が高まっている。
(了)
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