マンション杭打ち不正、鹿島施工でも地盤に届いていない可能性
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横浜のマンションが傾いた事件でクローズアップされた杭打ち不正問題で、鹿島建設が福岡県久留米市で施工したマンションでも、杭が地盤に届いていない可能性が、マンション住民側の資料で明らかになった。
同マンションは、新生マンション花畑西。鉄骨鉄筋コンクリート造りの15階建、92戸。NETIB-NEWSでは10月21日、梁の施工ミスの疑いを報じたが、今回、杭打ちでも疑惑が生じた。
住民側は、これまでも地盤調査がされていないと主張してきたが、横浜の傾いたマンションの杭打ちデータ偽装と施工ミスが発覚したことから、専門家が資料を精査するなかで、杭打ちの疑惑に発展した。地盤調査の問題について、これまで住民側は、構造設計する際の構造計算の地盤設定データの偽装があり、それらの結果、耐震強度が多く見積もっても基準の35%しかないと指摘していた。横浜のマンションでは、必要な長さのコンクリート杭を工場でつくり現場に運び入れて打ち込む「既成杭基礎」だったが、久留米のマンションの杭は、「場所打ちコンクリート杭」と呼ばれる基礎で、現場で、鉄筋のかごを作成し、杭を打つ穴に入れて、コンクリートを流し込み、地中で杭を築く工法だった。
住民側の依頼を受けて技術的な調査をしてきた一級建築士の仲盛昭二氏は、こう指摘する。
「図面にも構造計算書にも、土質柱状図などの地盤に関する資料がなく、構造図に、『GL-42M』と、支持地盤までの杭先端深さ(42メートル)が示してあるだけだ。設計上の杭先端深さを定めた根拠がないだけでなく、杭の施工の際にもこの数字だけを根拠にして、地盤調査のとき採取した土砂の標本図(柱状図)と照合せず、杭が地盤に届いていない恐れがある」。
場所打ちコンクリート杭の場合、支持地盤と想定される深度の土をバケットで取り上げ、地盤調査の際に採取した標本と見比べて、支持地盤かどうか確認する。
ところが、竣工後、マンション管理組合に引き渡された建築確認関係図書、設計図書、構造計算書には、地盤調査の資料が存在せず、地盤調査をした形跡がないと言う。
「肝心の地盤調査が行われていないので、バケットで採取した土と比較検討することは不可能」と指摘する。「鹿島は、地盤調査報告書も柱状図も添付されていないのに、どのようにして、図面に記載された杭先端の深さが妥当と判断したのか」と疑問を呈する。鹿島は、住民側が損害賠償を求めた裁判で、「設計図面につき法令違反や学会基準違反が存在するか否かを確認する義務は負わない」として、地盤についても、「設計者ではない者が地盤種別を認識することは困難であるとともに、そのような調査を行う義務はない」と、地盤調査を設計の問題と主張してきた。
鹿島は、係争中の案件なので裁判のなかで丁寧に説明するとしてきた。地盤調査する義務はないというが、地盤調査で採取された標本との照合をどのように行ったのか、住民が納得できる説明が求められる。照合していないとすれば、横浜の事例と同じくデータ偽装になる。鹿島施工の物件で、杭が地盤に届いていたのか、徹底調査が必要になってきた。
【山本 弘之】
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