2024年12月26日( 木 )

欠陥マンション問題、横浜市と久留米市の対応に天と地の差

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耐震強度の不足が指摘される「新生マンション花畑西」<

耐震強度の不足が指摘される
「新生マンション花畑西」

 欠陥マンションの住民は、欠陥や不正を認めない業者を相手に回しての“長期戦”を強いられるケースが多い。横浜のマンションでは、10月14日のデータ偽装の発表から約2週間で事態が急展開した。その動きに注目し、「住民目線か住民虐待か、天地の違いがある」と語るのが、福岡市久留米市の欠陥マンションの住民らだ。

 久留米市の「新生マンション花畑西」の住民は、竣工・引き渡し直後から、立体駐車場の傾き、コンクリートのひび割れ、コンクリートの塊の落下、タイルなどの剥落などの欠陥に苦しんできた。施工は、スーパーゼネコン鹿島建設(株)。2013年2月頃には、専門家の調査で著しい耐震不足が発見され、久留米市に耐震強度の検証などの対策を依頼した。
 久留米市は、住民らにいったん検証を約束し、スケジュールまで文書で示しながら、「検証する義務はない」などと拒否。住民は、鹿島らに損害賠償を求める訴訟や、久留米市には危険な建物だとして建築基準法第9条、第10条に基づき鹿島に建て替えや解体を命じるよう求める行政訴訟を起こしている。しかし、鹿島も久留米市も請求棄却を求めており、全面的に争っている。

 三井不動産グループが販売した横浜のマンションでも、渡り廊下のズレが発見されたのは2014年11月。住民説明会が開かれるまで約1年かかった計算だ。販売会社が「大震災の影響」などとあしらってきたことも報道されている。
 今回、データ偽装や杭が支持地盤に届いていないことが発覚した後も、元請の三井住友建設らは住民らに、建物の安全性に問題はないと説明しているというが、一方の三井不動産が全面建て替えや買い取りという対応を打ちだした。問題の長期化によるブランドイメージ低下を懸念し、事態の早期収拾を図るだけでなく、横浜市が「住民目線」で行政権限を発揮していることが作用しているようだ。
 今回発覚したデータ偽装や杭が支持地盤に届いていないことは、建物が安全であれば、ただちに建築基準法に違反するものではないと行政関係者は見ている。
 横浜市は、事態を重く受け止めるとともに、住民の相談を受けていたことを重視し、「悩みを解消しつつ、建築基準法違反でなくても、是正に向けて指導していきたい」というスタンスをとる。
 横浜市は10月22日、三井不動産レジデンシャルと三井住友建設に対し、建築基準法第12条第5項に基づく調査報告を求めた。

 一方、久留米市の場合は、建築確認申請書類などの保存期間5年を過ぎたため、市は資料を保管していず、住民側が竣工時に販売会社から管理組合に引き渡された図面や構造計算書を元に相談しても、「本物かどうかわからない」「マンション建設当時、建築確認は適切に行われていたものと認識している」と述べて、対応をしぶり、検証の約束も反故にした。
 住民らは「設計や施工のミスによる耐震強度不足から住民を守ろうとしない」と不満を募らせ、やむなく提訴に至った。
 住民側の専門家である一級建築士の仲盛昭二氏は「耐震強度は基準の35%、施工ミスを計算に入れれば、8%しかない。地盤調査もされていず、構造計算で地盤が偽装され、柱と梁が不適切に設計されているなど構造上問題だ。設計図にある梁が施工されていないなど、施工上も欠陥がある」と指摘する。

 建築確認は、横浜市や久留米市などの行政や民間の確認検査機関が行うが、横浜のマンションの場合、民間検査機関が実施した。久留米市のマンションでは、久留米市が行っていた。
 仲盛氏は久留米市を厳しく批判する。
 「建築確認審査の段階で、久留米市が適切な審査をしていれば、違法で危険なマンションが建築されることはなかった。旭化成建材のデータ偽装と違って、通常の確認審査で見抜ける問題ばかりだ。自分たちの建築確認ミスが発覚するのを恐れて、保身のために、住民目線を忘れ、危険なマンションを放置するのは、周辺住民を含め、住民への虐待だ。鹿島をかばっているとしたら、本末転倒だ」。

【山本 弘之】

 

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