2024年07月31日( 水 )

日本の最先端製造技術で日本は救える~地上から宇宙まで支える技術力(2・後)

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株式会社スターバレー
代表取締役 星谷隆 氏

宇宙製造技術とは~宇宙関係で使われている製造技術:宇宙への道を拓く匠の技

株式会社スターバレー 代表取締役 星谷隆 氏    人類の宇宙への挑戦は、古くから続いています。そして近年、宇宙開発技術は飛躍的に進歩し、宇宙旅行や小惑星探査など、さまざまな夢の実現に近づいています。

 この宇宙開発を支える基盤となるのが、精緻な製造技術です。ロケットや人工衛星、宇宙船などの宇宙機は、極限の環境に耐え、高い精度で動作する必要があります。そのため、宇宙関係で使われている製造技術は、非常に高度で特殊なものです。

 宇宙関係で使われている製造技術について、具体的に以下の3つの側面から詳しく解説します。

1. 宇宙環境に対応する技術
2. 高精度な部品・部材の製造技術
3. 軽量化と強度向上を両立する技術

1. 宇宙環境に対応する技術

 宇宙空間は、地上とはまったく異なる過酷な環境です。真空状態、極端な温度変化、高エネルギーの放射線など、さまざまな要因が宇宙機に悪影響をおよぼします。そのため、宇宙関係で使われている製造技術は、これらの宇宙環境に耐えられるように設計されています。具体的には、以下のような技術が挙げられます。

 耐熱・耐寒技術:ロケットのエンジンや人工衛星の熱遮断板など、極端な温度変化に耐えられる材料や構造の開発

 真空技術:人工衛星の内部を真空状態に保ち、電子機器を保護する技術

 放射線遮蔽技術:宇宙船の乗組員や電子機器を放射線から保護する技術

2.高精度な部品・部材の製造技術

 宇宙機は、高い精度で動作する必要があります。たとえば、ロケットのエンジンは微小な誤差でも大きな問題を引き起こす可能性があります。そのため、宇宙関係で使われている製造技術は、非常に高い精度で部品・部材を製造することができます。具体的には、以下のような技術が挙げられます。

 精密機械加工技術:ロケットエンジンや人工衛星の構造部材など、高精度な部品を加工する技術

 マイクロファブリケーション技術:人工衛星の電子機器など、微細な部品を製造する技術

 3Dプリンティング技術:人工衛星のアンテナなど、複雑な形状の部品を製造する技術

3. 軽量化と強度向上を両立する技術

 宇宙機は、できるだけ軽量であることが重要です。なぜなら、重量が重ければ重いほど、ロケットの推進力が必要となり、燃料の消費量が増えてしまうからです。

 しかし、軽量化を追求すると、強度が低下するリスクがあります。そのため、宇宙関係で使われている製造技術は、軽量化と強度向上を両立する必要があります。具体的には、以下のような技術が挙げられます。

 複合材料技術:炭素繊維や樹脂などを組み合わせた複合材料を用いることで、軽量化と強度向上を両立する技術

 トポロジー最適化技術:コンピューターシミュレーションを用いて、強度を維持しながら無駄な部分を削り取ることで、軽量化を図る技術

 ナノテクノロジー:ナノサイズの材料を用いることで、従来の材料では実現できなかった軽量化と強度向上を図る技術

宇宙関係で使われている製造技術の最新動向

 宇宙開発技術の進歩にともない、宇宙関係で使われている製造技術も日々進化しています。近年では、以下のような技術が注目されています。

 人工知能(AI)を用いた製造技術:AIを用いて、製造工程の最適化や不良品の検出などを行うことで、生産性向上や品質向上を図る技術

 3Dプリンティング技術の高度化:より高精度な3Dプリンターや、新しい材料を用いた3Dプリンティング技術の開発が進められています。

 ナノ材料の開発:従来の材料よりも軽量で強度

4. 日本の製造技術力:未来を創る力

 日本の製造技術力は、世界トップレベルであり、医療機器、ロボット、航空宇宙といった最先端技術分野においても、世界をリードする存在となっています。これらの技術は、人々の生活を豊かにし、社会の発展に大きく貢献しています。

 近年、日本は少子高齢化や地球温暖化などの社会課題に直面しており、これらの課題解決には、日本の製造技術力が不可欠です。日本の企業や研究機関は、これらの課題解決に向けた技術開発に積極的に取り組んでおり、今後も世界に貢献していくことが期待されています。

5.まとめ

 第2回では、日本の製造技術が支える最先端技術~医療機器、ロボット、航空宇宙~について解説しました。これらの分野における日本の技術力は、世界的にみて高水準のレベルにあり、人々の生活(スマホ・GPS等)に活用されて社会の発展に大きく貢献しており、今後も世界経済の発展に大きく貢献していくことが期待されています。

次回予告

 第3回では、日本の技術力で実現する持続可能な社会についての考えを述べたいと思います。

(了)


<プロフィール>
星谷隆
(ほしや・たかし)
(株)スターバレー代表取締役。製造業の技術営業に17年携わった後、2013年に独立。産業機器の部品、医療機器の試作品の部品、⾃動⾞の部品、宇宙航空品の試作部品の製造などを行う。

(2・前)

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