2024年08月22日( 木 )

【越中国(富山)巡り(4)】富山湾の魅力~青木レポート

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 かつて北陸地方は「越の国」(高志・古志の国)と呼ばれていた。「越の国」は現在の福井県・石川県・富山県・新潟県あたりまでを指す。飛鳥時代から奈良時代にかけて越前、越中、越後、能登に分けられ、平安時代初期にさらに越前から加賀が分割されたようである。そのため富山県は「越中国」と呼ばれるようになった。この「越中国」巡りについて1つの提案を行う(8月の視察を参考にしてまとめた)。

ホタルイカが唯一の「結束ポイント」

 息子とはこの齢になっても喧々諤々の議論を交わしている。他人の目には親子喧嘩にしか映らないであろう。議論の内容は当然、仕事についてである。ところが不思議なものである。富山湾名産のホタルイカをつまみにして宮崎県高鍋町産の焼酎「中々(なかなか)」を飲み交わすときには議論がスムーズに進む。息子からも「ぜひ、富山湾産のホタルイカを土産にもって帰って来い」という指示があった。

 「ここは素直になろう」と自分に言い聞かせて富山の銘酒(大吟醸)10本とホタルイカ10パックをお土産として宅急便で送った。16日は会社の営業日だったので、午前中に商品が届いた。それを幹部社員たちに渡していたのだが、驚いたことに夕方6時には冷凍庫に入れていたホタルイカがすべて持ち出されていたのである。さてその夜、息子と差しでホタルイカをつまみにして富山の銘酒を味わった。

 偉そうに息子が「富山の酒のつまみにはホタルイカが最適」と語ったので、「わかったような口を叩くな!ぼけ」としかりつけた。だが、喧嘩にはならず、2人で三合ほど一気に飲み干した。本当に楽しい酒宴となった。その日の夜、社員たちから「いやぁ、おいしい食事になりました」と感激の電話がかかってきた。富山湾からは毎年多くのホタルイカを全国に出荷している。富山湾に生涯住みつくホタルイカもいるかもしれないが、大半は産卵の為に移動してくるという。

深いところで1,200m

 富山湾は日本海側のほぼ中央に位置し、西側は能登半島に守られた内海だ。東側は新潟県糸魚川市までを含む。富山湾の地形の特徴として急峻なことが挙げられる。突然、深海に向かって落ち込み、最大水深は約1,200m、平均水深は800mだといわれる。

 このように富山湾は急峻なことから海底内の地形が複雑になっている。今回の震災では、斜面の崩落が確認された。単なる揺れでの崩落という被害ではなく、土地、陸部を失うという複雑な被害が出るのである。今後、同様の地震が発生する事態となれば、富山湾の地形との連動性を注視することが重要である。

7つの一級河川が富山湾へ注ぐ

 富山湾には神通川、黒部川など7つの一級河川が流入している。富山湾の水際に立ち、東側にそびえる北アルプスを展望すると、誰もが素朴な疑問を抱くであろう。「あの北アルプスに積もった雪が雪溶け水となって7河川を通じてすべて富山湾に流れ込むのであろうか」と。ポイントは山頂と海岸までの距離があまりにも近いということにある。

 もともと、地図を見て山頂から河口までの直線距離は40km程度であろうという目算は立っていた。今回、富山県の一級河川・黒部川の河口から黒部ダムまで車で走ってみた。距離は50kmもなかった。となれば直線距離では40km足らずであると確信したのである。何について調べているのかというと、雪解け水の一部が地下水として富山湾に流れ込むこともあるのかという疑問を解明するためである。

栄養満点の富山湾

 湾までの距離が100kmあれば河口に達するまでに100%地上に涌き出て海に流れ込むのは間違いないだろう。ところが富山湾へ流れ込むまでには距離が短かすぎる。「40%程度の水は地下水として海へ流れ込む」というのが正しいだろう。そこで、いろいろな関係者に尋ねてみたところ、「ご指摘の通り、40%位は地下水として海へ流れ込む」という証言を得た。

 地下水として流れ込むということは、地下にある栄養分が湾へ流し込まれるということである。加えること日本海側には暖流の対馬海流が流れ込んでいるから暖流系の魚が入り込んでいる。さらに対馬海流の下には日本海固有水(深層水)と呼ばれる海水がある。そのため深度800m付近は栄養豊富で、冷水系の魚が生息しているのだ。

 説明してきた通り、富山湾には暖流・寒流の魚が共存しており、日本有数の豊かな漁場を形成しているのである。

(つづく)

【青木義彦】

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