完工高50億円到達は目前 老舗ゼネコン・田代建設の組織づくり

田代建設（株）

「想像していなかった」2017年の社長就任

　筑豊エリアでトップクラスの完工高を誇る地場ゼネコン・田代建設（株）は、1905年創業、63年設立の老舗ゼネコンだ。現代表の田代洋己氏は大学卒業後、準大手ゼネコンに入社し、主に管理畑で8年間を過ごした。その後、田代建設のグループ会社勤務を経て、2017年9月に代表取締役に就任した。

　田代洋己氏が社長に就任した当時について、「家業を継ぐことは想像もしていませんでした」と話す。続けて、「事業承継の準備期間も1年くらいだったでしょうか。分散していた株式を買い取り、社有資産の整理も進められたことで、私も覚悟が決まりました。前社長が完全引退し、退路を断ってくれたことも後押しとなりました」。

　田代社長は、先代が企業理念としていた「より安く・より早く・より良く」を受け継いたうえで、トップラインの引き上げを図るため、就任直後からさまざまな改革に乗り出した。

社長就任の直後から社内刷新と採用強化

　まず着手したのは、就業規則や給与規定の見直しから社員の意識改革に至る、社内制度・風土の刷新だ。指揮系統はじめ組織の再構築を断行したほか、社員の自主性を重んじ、彼らの意見や提案を通じて社が一丸となれる体制づくりを行っていった。

　「当時、『意見や提案をしてもどうせ却下される』など仕事に対して受け身になっている社員が多いように感じました。積極性をもたせるには、ボトムアップの社風を浸透させることが必要だと思い、刷新を断行しました」（田代社長）。

　次に着手したのが、採用強化だ。就業者数全体の4分の1以上を占める60歳以上の大量離職が時間の問題となるなかで、建設業界で若年者の採用合戦が熱を帯びて久しい。そうした状況下で、田代社長は就任直後から若年者を積極的に採用し続けてきた。「より深く現場に関わりたい」と、スーパーゼネコン出身者の採用にもつながったといい、現在では全従業員33名（4月時点）のうち半数以上が田代社長就任後の採用だという。

積極採用を継続し若手も一人前に

　積極採用を続けながらも定着率は高く、「今の若手が成長したとき、彼らが主力になる時代が来ます。より強い組織となり、より大きな物件にも取り組むことができるようになるはず」（田代社長）と力強い。

　積極採用の狙いは、組織の若返りと受注体制の強化で、今年は新卒（高校生）も3名採用している。「現場のすべてを任せられるまで成長してくれた社員も少なくありません。頼もしく成長してくれており、今後はより多くの現場を手がけることができるようになる見通しです」と未経験者も積極的に採用してきた田代社長は、若手の成長に期待を寄せる。

　社員の成長により、施工力も向上傾向にあり、24年8月期には完工高50億円も射程圏に収めた。採用は現在も継続しており、「未経験者も大歓迎です。将来的には現場の責任者もお任せしたいと考えています。そのための資格取得などは会社でバックアップしますので、安心して応募いただければ」（田代社長）と話す。

施工力向上により2期連続で完工高50億円も目前

　受注増加にともない、19年8月には福岡市に福岡事務所を開設。設計施工に力を入れて施工の幅を広げることで、福岡市内および近郊方面での拡大を図ってきた。その後は順調に設計業務の受注を重ね、今では年間5～6件を受注するまでになった。

　「より安く・より早く・より良く」に「良いプラン」が加わった格好だが、設計施工は今後も強化していく構えだという。「福岡営業所は福岡都市圏、そして県南部もカバーできる体制にしていきたいと考えています。そのために、設計だけでなく施工人員の強化も図っていく予定です」（田代社長）と福岡営業所はさらに強化していく考えを示した。

　S造からRC造、賃貸マンションから商業施設や倉庫、オフィス、介護施設など施工できる案件は幅広く、とくに商業施設の施工実績が豊富であることから依頼も増えており、来期も継続して完工高50億円を見込んでいる。

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：田代洋己
所在地：福岡県直方市古町10-17
福岡事務所：福岡市中央区清川1-7-12大戸ビル304
設　立：1963年10月
資本金：5,000万円
ＴＥＬ：0949-22-4711
ＵＲＬ：https://www.e-tashiro.com