職人不足を打破するには業界全体を盛り上げていくことが不可欠

データ・マックス30周年記念特集「組織永続化への挑戦～企業30年説を打ち破れ～」

2024年9月25日 12:00

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（株）宮村鉄筋工業

　福岡を中心に九州各地で活躍する鉄筋工事業者の（株）宮村鉄筋工業は、今年で創業40周年を迎えた。2024年1月には新社屋が稼働し、同年4月に代表交代を行った同社の新代表取締役社長・宮村良太氏が新体制への意気込みや思いを語った。鉄筋工事業界のリーディングカンパニーが目指す未来とは──。

顧客第一主義を貫く鉄筋工事業者

　福岡県大牟田市に本社を置き、熊本県玉名郡南関町に事務所・工場をもつ（株）宮村鉄筋工業は、1984年6月に宮村博良氏（現・代表取締役会長）が鉄筋工事の請負施工を目的として創業した。87年2月に（有）宮村鉄筋工業に法人化し、92年4月に株式会社へと改組した。

　創業当初から「技術と信用」をモットーに、社員1人ひとりが自由な発想のもと創造性を発揮し、時代に即した技術を蓄積。また、顧客第一の視点で柔軟な対応をしてきた。

　常々、「鉄筋工事をするなら屋根付きの工場が必要」だと考えていた博良氏は97年に工場の建設を計画し、社屋と第一工場を新設した。その後も順調に業容を拡大するとともに第2・第3工場を建設。2022年には最新の精密切断機を備える第4工場を建てたことで作業効率や生産性がアップした。加工能力はすべての工場を合わせると月に4,000tを誇る。

　さらに残業時間の削減も図られて、「2024年問題」といわれる残業時間の規制にも対応している。24年1月には新社屋が完成するなど、社員たちが働きやすい環境を整えるために設備投資にも余念がない。

鉄筋業界の未来をより良くするために

　しかし、鉄筋業界は仕事の需要があるにもかかわらず、労務単価の低さや若手育成、就業者の高齢化などの課題が多く、慢性的な職人不足という状況が続いている。

　そんな現状を目の当たりにしてきた博良氏は、19年12月に九州鉄筋工事業団体連合会の会長に就任し、23年6月に全国鉄筋工事業協会の副会長に就任。将来のために職人が入職しやすい労働環境の整備など、さまざまな仕組みづくりや組織活動を行っている。

　こうした取り組みに専念したい、また、自身が元気なうちに事業承継を行っておきたいという思いから24年4月に代表取締役社長を長男の良太氏に引き継いだ。

創業40周年を機に新体制スタート

（株）宮村鉄筋工業図らずも創業40周年のタイミングで代表取締役社長に就任した良太氏は高校卒業後、博良氏の知人で一番厳しいといわれる会社で5年間の修行を経てさまざまな資格を取得。その後、宮村鉄筋工業に入社し、職長、営業を経験した後に専務取締役に就任した。

　良太氏は「修行当時は本当に厳しい環境ではありましたが、先輩方に追いつきたくてただがむしゃらに日々仕事に専念しました。夏になると暑さが尋常じゃなくて、今の時代のような働き方改革なんてものはなかったので気合いで乗り切るしかありませんでした。指導面も職人気質というか厳しかったですが、その厳しさのおかげで基礎はしっかり学ぶことができました。仕事に対してとことん追求する姿勢と遊ぶ時はとことん楽しむ姿勢が身につくとても良い会社でした。心から感謝しています」と笑顔で語った。

　厳しい修行が終わるころには、ものづくりの楽しさや仲間と一緒につくる達成感など、職人としての喜びを感じていた良太氏だが、試練は続く。代表としてやっていくためには、すべての業務に理解がないと務まらない。そのため、営業からゼネコンの協力活動、マネージメントなどに携わり経験を積んでいった。だが、いざ職人を使う立場になるとさまざまな問題が生じ、苦労したという。

　「博良会長は『職人ファーストでやっていかなければ持続しない』とよくおっしゃいますが、それは私も同じ考えです。我々は職人さんに会社を支えてもらっている立場なのでそのことを胸に刻み、より良い職場環境をつくっていきたいと思います。今いる従業員メンバーをつくってくれた先輩方に心から感謝しています」（良太氏）。

　また、技能実習制度の見直しにより新たな局面を迎えつつある外国人労働者の活用について、「今後日本のものづくりは外国人に支えられなければ厳しいです。現状の制度だと長く働くのが難しいという問題も尽力して取り組んでいきたいと考えています」と話す。

　全国の鉄筋工事組合とのネットワークで絆を紡ぎ、業界全体を盛り上げたいと考える同社は、今後も「安全管理」「高品質」を守りながら、付加価値のある商品の提案を行い、そして職人たちの雇用水準の向上につなげていくことに尽力していく。