2024年10月01日( 火 )

中国の生産過剰、太陽光発電普及を促進(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

増え続ける太陽光パネルの設置

太陽光パネル    中国発の供給過剰でパネル価格が急落し、安くなったパネルで世界的な太陽光発電ブームが巻き起こっている。その結果、廉価な中国の太陽光パネルは、ヨーロッパ、南アジア、アフリカの屋根はもちろん、中東の砂漠、東南アジアの湖まで覆うようになった。

 たとえば、パキスタンでは今年の上半期、中国から輸入したパネルの発電容量が13GWに上り、パキスタン全体の発電容量46GWの28%を太陽光パネルで発電するようになった。

 ドイツでも電気料金の急騰で、太陽光パネルの普及に弾みがつき、住宅の屋根に設置されたパネルの発電容量は今年だけで7GWとなり、前年より135%の伸びを記録している。

 住宅の屋根だけでなく、最近はバルコニーや垣根まで太陽光パネルが導入されている。垣根の場合、パネルが垂直方向になるので、発電効率は悪くなるが、屋根に設置するのにかかる高額な人件費や、足場を組むのにかかる費用などが節約できるので、発電効率が落ちてもカバーできるという。それほどまでにパネルは安くなっているのだ。

 また、電気が通っていない地域も多いアフリカでは、太陽光発電が安価なため採用が増えている発電方式となりつつある。停電で悩まされていた南アフリカ共和国は、太陽光パネルの設置を進め、設置容量が2年間で5倍に増加している。さらに、最近、中東やインドのように広大な土地と日照量が豊富な地域では、大規模太陽光発電所の建設が推進されている。農地が不足している東南アジアでは、湖に太陽光パネルを浮かべる浮上式太陽光発電の建設も進んでいる。

 現在、世界の発電全体に占める太陽光発電の割合は約6%である。しかし、昨年設置された太陽光発電容量は444GWで、前年対比76%も成長している。今年も33%程の成長が見込まれ、592GWになるだろうと、ブルームバーグNEFでは予想している。なお、国際エネルギー機関(IEA)によると、2030年には世界の電源構成に占める再生可能エネルギーの割合が50%近くに高まるという。

背景に中国の過剰生産

 中国政府は近年、太陽光パネルの育成・支援を強化。中国政府が補助金などを提供することで、供給能力を大幅に向上させた。不況で需要が落ち込み、その結果、太陽光パネルは過剰生産となり、安価な中国製品が世界中に流出する結果となった。国際エネルギー機関(IEA)の推計では、世界の太陽光パネルの供給能力は、今年末までに1,100GWとなり、総需要の3倍に達するだろうとしている。

 もともと太陽光パネルは2005年頃、欧州がこの分野を主導し、世界の太陽光発電装置の5分の1をドイツが占めていた。しかし、22年には中国メーカーが世界シェアのトップを独占し、中国企業が圧倒的に強くなっている。その結果、太陽光発電に必要不可欠な太陽光パネルの大半は中国で製造されるようになった。また、太陽光電池の原材料に当たるポリシリコンの88%も中国で生産されている。

 中国は製造だけでなく、13年以降、太陽光発電の設備容量の伸びにおいても、10年連続で世界トップを維持し、累積設備容量は8年連続で世界1位だ。設置容量と供給能力が急激に増加したことで、市場では価格破壊が加速している。最近の中国での太陽光モジュールのコストは、ワットあたり0.1ドルにも満たない。10年前と比較すると、価格は10分の1となっている。このように価格が下落しているなか、供給能力は増え続け、価格下落に歯止めがかからない状況だ。

(つづく)

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