世界経済を脅かす中国の低価格商品(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏世界中に輸出されている中国の格安商品
中国政府は景気低迷を乗り越える方法として企業に低い金利の融資を提供したり、補助金を出したりして、生産を促進した。ところが、景気が鈍化したなかで、過剰に生産された製品は、当初の計画通りに売れず、在庫だけが山ほど積み上がることとなった。中国政府は在庫処分の方法として、在庫商品を中国国内の販売価格よりも安く海外に輸出している。このような格安製品を全世界に輸出して在庫をなくそうとする中国の戦略は、「チャイナショック」と言っても良いほど、世界経済を困惑させている。
中国は1990年代後半から「世界の工場」として発展を遂げた。中国の安い製品のせいで、価格競争をしていたライバル国の製品が売れなくなる「第1次チャイナショック」があった。しかし、その当時の中国の安い製品は、米国など主要国の物価上昇を抑える効果があり、前例のない好況を世界経済にもたらした。
しかし、今回は状況が違うようだ。中国製の鉄鉱石、太陽光パネル、EV、風力発電設備など、中国の激安製品による「津波」が世界中に押し寄せている。韓国の産業通商資源部によると、鉄鉱石のスポット価格は、1tあたり92.60ドルで、今年1月の135.15ドルに比べて31.4%下がっている。業界の通常の損益分岐点価格である1tあたり100ドルすら下回っており、中国製品が押し寄せてきた結果だといえる。
中国の供給過剰が輸出を促す
不動産バブルの崩壊など中国市場の景気が低迷しているなか、過剰に生産された中国製品が全世界に輸出されている。世界市場に押し出されている中国製品の価格は、他の企業には、まねできないくらい安いのだ。中国政府も設備過剰による供給過剰の可能性を多少心配はしていたが、内需が拡大されて、在庫が解消されることを内心では期待していた。しかし、米国との衝突、コロナパンデミック、それに不動産バブルまではじけ、中国経済は三重苦に悩まされており、消費が極端に冷え込むようになった。在庫が増加し、企業の業績が悪化すると、企業は倒産に追い込まれる恐れがあるので、中国企業は在庫品をどうしても処分せざるを得なくなったわけだ。問題はこのような現象が一時的ではなく、長く続きそうだということだ。
太陽光パネルの場合、新型コロナの感染拡大で、中国企業の太陽光発電所建設が延期された。そのような状況下でも、パネルの生産設備の増設は継続し、その結果、パネルの価格は10%から20%急落することになった。ところが、昨年から状況は、より悪化した。パネル価格が半分くらいになった中国製品が世界市場に押し寄せることにより、その他の太陽光パネル生産工場が倒産に追い込まれているのだ。
太陽光パネル以外でも、中国製品の低価格攻勢で危機に立たされている業界がある。韓国の石油化学業界である。今年3月12日に韓国の石油化学業界最大手であるLG化学は、各種化学製品の生産に汎用的に使われているスチレンモノマー(SM)の生産を中止すると発表した。理由は自社で生産するより中国で買う方が安いからだ。
(つづく)
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