世界経済を脅かす中国の低価格商品(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏供給過剰の原因は
中国経済の成長の両輪は、輸出と政府主導の大型開発プロジェクトであった。政府が保証するかたちで、国営銀行から多額の資金を提供された大型建設プロジェクトが進められ、多くの雇用が生まれた。それに建設された不動産は価格上昇を続け、消費を促進し、経済成長を牽引した。このように国家主導による不動産開発などを中心に中国は成長を成し遂げた。
ところが、中国政府が行ったロックダウンにより中国国民の所得減少と消費マインドの冷え込みをもたらした。それに追い打ちをかけたのが、不動産開発大手・恒大グループの経営危機による不動産バブル崩壊の発生である。
不動産バブルがはじけて、景気が低迷してモノが売れなくなると、在庫が増加する。この在庫を処分しないと、企業は危機に陥る。このような危機的状況を打破するため、中国企業はなりふり構わず、在庫品を世界市場に輸出している。
不動産バブルがはじけ、建設景気が冷え込んだことで、中国国内の鉄鋼需要も2020年以降で10%以上減少したようだ。しかし、中国の鉄鋼生産は同じ期間に年10億5,000万トンまで上昇し、現在も年産10万トン以上を維持している。ちなみに中国は全世界鉄鋼の50%以上を生産する鉄鋼の生産国である。国内需要が減った中国の鉄鋼は、全世界に輸出され、各国では自国製の鉄鋼生産が売れなくなり、悩みの種となっている。
各国の対応と世界経済への影響は
今回の「第2次チャイナショック」により、長期的な景気低迷を招くのではないかと専門家は懸念している。安い製品が大量に海外から入ってくると、物価を下げる効果があるものの、その国の産業基盤が揺らぐことにもつながるからだ。高物価にあえいでいる消費者にとって、安価な製品は、短期的にみるとうれしいかもしれないが、長期的には、自国の産業を崩壊させ、雇用・消費の減少をもたらす。
このような中国の低価格攻勢に対して米国は中国の鉄鋼に25%の関税をかけるなどの対応策を講じている。それに、メキシコなど第3国を経由した中国製品の輸入にも規制を検討している。ブラジルの鉄鋼業界も、中国製の鉄鋼製品に9.6%から最大で25%の関税をかける。
今回のショックが過去より深刻な点は、中国企業がアリババ、テムのような自国のネットショッピングをうまく活用している点だ。インターネットショッピングにより、中国の安い製品が韓国にも「津波」のように押し寄せ、韓国のインターネットショッピング市場は食い荒らされている。
このような現象は、鉄鋼、EV、石油化学、車載電池、太陽光パネルなど多岐にわたり、その業界では混乱がもたらされている。また、中国の低価格品で船が予約されてしまい、韓国製品の輸出に支障を来たしているというニュースもある。中国の安い製品で、製造基盤が崩壊し、雇用が減少し、その結果、景気も低迷するのではないかという不安が韓国社会を覆っている。韓国政府の勇気ある決断が求められている。
(了)
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