利用が拡大しているステーブルコイン(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏ステーブルコインとは
ステーブルコインとは、その名の通り、米ドルなどの資産と1:1で連動している安定した暗号通貨である。暗号通貨は価格変動が激しいので、ステーブルコインは価格変動を回避するための逃避先として使われたり、暗号通貨市場において交換手段となったりしている。暗号資産が普及するにつれて、ステーブルコインの流動性は確実に増加している。ステーブルコインの流動性は、9月下旬には記録的な1,690億ドル(約25兆3,500億円、1ドル=150円換算)に達し、年初来で31%増加していることが明らかになった。
ステーブルコインは通常、ドルなどの法定通貨の預金に対して発行されるため、ステーブルコインの供給量が増加しているということは、暗号通貨のエコシステムに投入される実際の法定通貨の増加を意味する。それに、ほとんどの暗号通貨の現物取引および先物取引は、ステーブルコインとのペアに対して行われており、ステーブルコインの流動性が高まるということは、暗号通貨の購入により多くの資金がつぎ込まれていることを意味する。
それではステーブルコインは、実際どのようなところで使われているのだろうか。ステーブルコインが最も多く使われている地域は、欧州や米国のような先進国ではなく、アルゼンチン、トルコ、ベトナムのような国々である。これらの国々は自国の貨幣が安定していないため、常にドルの需要が高い。そのような状況下で、人々はドルを現金よりも、はるかに便利なデジタル形式でもちたいという需要がある。そのような需要を満たしているのがステーブルコインである。
ステーブルコインの代表格はUSDT(テザー)である。USDTは8月13日に取引所残高が過去最高となる203億3,900万ドルに達しており、投資家がこれらのステーブルコインを暗号通貨に投資しようとしていることがうかがえる。USDTは裏付け資産として976億ドルほどの米国国債を保有している。これはドイツが保有している米国債の量(880億ドル)よりも多く、米国債市場において押しも押されもせぬ存在となっている。
市場でステーブルコインの動きを見ただけで、相場を占うことも可能だ。弱気相場では、トレーダーは損失を少しでも減らすため、変動する暗号通貨をステーブルコインに変換して保有する傾向がある。逆に、強気相場では、暗号通貨を購入するためトレーダーはステーブルコインの保有量を増やす傾向にある。
テザーの成功要因と圧倒的なシェア
世界の暗号通過市場で最も広く利用されているステーブルコインはテザー(USDT)である。2020年7月、USDTは100億ドルの市場規模を突破し、約3年間で900%の成長を遂げた。24年3月には、1,000億ドルの時価総額のマイルストーンを達成し、ライバルであるUSDコイン(USDC)などのライバルを大きく引き離した。
現在、USDTの時価総額は1,200億ドルに達し、23年にはブラックロックを超える利益を上げるなど、主要な業界プレーヤーとなっている。USDTの市場シェアは、過去2年間で20%以上増加し、全ステーブルコイン市場の75%以上を占めるまでになった。このようにUSDTがステーブルコイン市場を支配していると言っても過言ではない。ライバルのUSDCの市場シェアは21%で、1位との差はかなり開いている。
USDTなどのステーブルコインを発行するテザーは、2024年上半期に、52億ドルの純利益を計上している。ステーブルコインの発行会社は発行したコインの量に応じてドルや米国債などの資産を保有することになるが、その資産を運用して利益を上げている。
(つづく)
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