2025年01月04日( 土 )

【2025年 年頭所感】「繁栄と転落」の背中合わせの2025年

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代表取締役会長 児玉直

糸島富士 夜明け イメージ

 福岡を中心に広がる繁栄の兆しが、地域経済を大きく押し上げている。年収1,000万円層の増加、市税収拡大、不動産価値の上昇がその象徴だ。また、TSMCをはじめとする先端産業の波及効果も福岡県におよぶと期待される。しかし、繁栄の裏側には、人口減少や国際情勢の緊張、働き方改革の課題といった転落の要因も潜む。はたして九州と日本は繁栄を維持できるのか、それとも転落への道を歩むのか。

繁栄の項

①1,000万円収入の陳腐化

 「公務員の年末ボーナス平均80万円強支給」が流れたが、あまり嫉みの声が聞こえなかった。なぜか?その答えは「年収1,000万円の方々が珍しくなくなったから」である。地元中堅企業の幹部や業績好調の企業ではかなりのボーナス支給を実行している。自ずと年収1,000万円クラスが増加しているのだ。

②福岡市税収急増

 令和5年度の福岡市税収は3,699億3,700万円、前年比116億円増、率にして3.3%増であり今年度も勢いが止まらない。増益の要因はひとえに固定資産税増で、1,655億200万円と税収の45%を占めている。不動産価格の高騰はその都市力のバロメーターである。毎日、毎日インバウンド客が次から次へと押し寄せてくれる。「天麩羅処ひらお」「ラーメン一蘭」もインバウンド客がお客の半分に迫っているようだ。

 昨年末に、福岡商工会議所が事務局を務める「福岡城天守の復元的整備を考える懇談会」の提言と報告書が取りまとめられた。今年、高島市長あてに提出される。ところで高島市長は当初、「福岡城天守復元」に関心が薄かった。しかし、来年には5期目の市長選が待ったなし。「福岡城天守復元は高島市長の功労」となれば5期目も圧勝することは間違いない。資金のメドはある。福岡市が徴収する「宿泊税」だ。この積立金で賄えるはずだ。鴻臚館から福岡城天守、そして大濠公園の散策コースを十分に整備すれば福岡の新たな名所になる。

③TSMC効果のスパン

 かつて北部九州は「カーアイランド」ともてはやされ、関連する産業全体の生産規模は7兆円前後であった。熊本県菊陽町で進められているTSMC(台湾積体電路製造)の投資規模は半端でない。TSMCの1社だけではないのだ。日本のトップ企業SONYも連動している。まさしく今から先端事業・半導体製造の産業集積が構築されるのである。今後、少なくとも15年間は先端産業エリアとしてフル稼働するであろう。

④福岡県全体に波及

 この波及効果は熊本ばかりでない。福岡県全体にも波及する。この半導体製造業は裾野が広い。いろいろな関連産業が投資して工場建設が行われる。沈滞していた熊本県荒尾市、福岡県大牟田市でも工場進出の問い合わせが続出している。何よりも福岡県の服部知事も非常にエネルギッシュで動き回っている。「福岡県が所有する工業団地の空用地がゼロになっています」と嬉しい悲鳴をあげる。さらに人材面でも国際的に活躍するビジネスマンが群集するであろう。

⑤とりあえず20兆円の市場具現化するか

 今後15年間、先端産業が稼働して本格化する。「AI関連の投資も無限に続く」と囁かれている。そのような関連産業全体を網羅した市場としては、20兆円規模になると見られる。だがそれもほんの序の口であろう。15年後には市場規模30兆円とも囁かれている。まさしく繁栄の極みである。

転落の項

①トランプと台湾有事

 「トランプは台湾有事の際には介入しない」という警戒的な見通しが流れている。確かにこの見立てに一面では同意したい気持ちもわかる。しかし、台湾有事に干渉しなくなると今までアメリカ陣営とみられた世界各国は「(トランプの)アメリカ合衆国離れ」を大胆に選択していくであろう。

 問題は日本政府の姿勢である。緊急に義勇軍を募って支援隊を送り込むような行動を決断できるか?できないであろう。日本の若者たちが台湾防衛に決起できるかどうかで「明日の日本」を占うことが可能になる。台湾有事になる根本的な要因はすべて習独裁政権にある。独裁政権が危うくなった時点で台湾侵攻の暴挙に走る懸念があるのだ。そうなれば習体制も崩壊するであろう。もし台湾有事が勃発したならば、相当の覚悟がいることを認識すべきだ。日本の「転落の道」は確実だ。

②朝鮮半島有事

 韓国の政治が戒厳令以降、大騒動している。北朝鮮の金正恩総書記は「今が絶好の機会である。ミサイルを撃ち込んで韓国へ侵攻するかどうか」を毎晩、ベッドのなかで策を練っているのではないか。この有事には腹を括っていただきたい。台湾有事と違って、北朝鮮が韓国へ侵攻するようなことがあれば必ず日本へもミサイルが撃ち込まれてくる事態となる。トランプはいかに対応するだろうか。はたまたトランプ頼みで良いのか、不安が募る。

③人口減~出生率の落ち込み

 出生数が一気に落ち込んでいる。24年の出生数が70万人を割る可能性が高いのだ。一方で高齢者の死亡数も急増しており、出生数から死亡数を差し引いた自然増減はマイナス85万人と、佐賀県一県がまるまるなくなる勘定である。年間100万人減になるのも時間の問題だ。地方では企業数の減少も目立つ。

④働き方改革は日本滅亡への布石

 「全国の教職員の長期休職者数が7,000人に達する」と報じられた。教職員総数の0.9%を占める。生徒の親たちからのクレームが厳しいのか、意外とメンタル面で脆いようだ。どの産業・職場でもストレスに弱く、打たれ弱い人々が増加している。国が注力すべきは「メンタルの強化」カリキュラムである。

 「働き方改革推進」の裏側で軟弱な人材輩出が続出している。さらに「この傾向に拍車がかかったらどうなるのか?」を想像していただきたい。誰もが「日本転落」の懸念を抱くであろう。

⑤「AI」に職場駆逐される危機

 30年来の友人が、ある眼科での手術失敗で失明の危機にある。眼科との間で7回にわたって行っているやり取りの文書を見た。文書は弁護士なみ、いや、それ以上に緻密な内容の訴状を作成していた。見たところ眼科側は土俵際に追い込まれている感じだ。友人は法科を卒業しているのではない。すべて「AI」を駆使して文書作成を行ったという。弁護士のみならず、皆さん、「AI」に職を奪われないことを祈る。

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