トリビュートの不動産再生（5）東京の市場加熱、福岡にも波及へ

東京都心の家賃高騰 メトロ沿線1Kで17万円も

    「天神・博多の不動産価格は、まだまだ上昇余地がある」──不動産再生を手がける（株）トリビュート（福岡市中央区）の田中稔眞社長は話す。

　同社は東京に拠点を構えて約10年が経過しており、都内の不動産売買に数多く関わってきた。東京都内では、天神・博多以上に不動産価格の上昇が目立っているという。その牽引役は、マンションやホテルをはじめとする新築物件で、「都内で20～30戸規模の単身向け賃貸マンションを新築しようとすれば、ゼネコンから提示される見積もりは坪当たり250万円を超えることもあると聞きます。それでも、都内では至るところで再開発が進められており、新築マンションおよびホテルの売買も活発に行われています」（田中社長）という。利回りも低下傾向で推移しており、マンションでも利回り2％台で取引されることも珍しくなく、新築物件の高騰にともない中古物件の価格も高騰を続けているようだ。

　利回りは低下傾向ながら、「都心の賃料はマンションで2万円/坪以上、オフィスで5万円/坪以上もザラにあり、それでもある程度は埋まりつつあります。売買価格と同じく、新築につられて中古物件の賃料も更新時期に大きく見直される状況が続いています」（同）と指摘する。東京メトロ沿線では不動産価格の高騰が顕著となっているが、東京都中央区の東京メトロ日比谷線の駅徒歩2分に今春竣工予定の賃貸マンションは、約25ｍ2で賃料は約17万円を設定するなど、売買価格よりは緩やかながら、賃料についても上昇傾向にある様子が見られる。

東京に次ぐ人気 「いずれは福岡にも」

    価格が上昇している要因について、田中社長は「ホテル需要と円安効果」だと分析する。「ホテル需要を支えているのは増加する外国人観光客で、増加の大きな理由の1つが円安です。最初の日本観光では東京を訪れるケースが多く、それにともない東京が最初にホテル需要の恩恵を受けます。不動産投資も同様で、外国人投資家はまず東京の不動産に興味を示し、次に大阪、その次が『福岡』だと言われます」（田中社長）。

　続けて、今後のマーケットについては、「すでに、台湾をはじめとした外国人投資家による、福岡の不動産取得の動きは見られ始めていますが、今後はより加速していくのではないかと考えています。福岡は東京と地理的に離れており、利回りも高く、ポートフォリオ理論による不動産投資の地方分散にも適っています。また、政府は2030年の訪日外国人旅行者数6,000万人を目指していますが、福岡は九州観光の拠点にもなっており、そういった面からも期待できるのでは。外資の金融機関進出なども後押しになるでしょう」といい、さらに「関東圏の地銀は、これまで評価がそれほど高くなかった城東エリアの不動産に積極融資する姿勢を見せ始めており、福岡でもファイナンスについての見直しが進めば、マーケットはさらに拡大していく可能性もあります」と加えた。

マンション用地に加え、ホテル用地の反響増加

    トリビュートのグループ会社・（株）TRホールディングスで専務取締役を務める永田誠氏は、「当社グループはデベロッパーへの用地販売を強みとしていますが、天神や博多駅の周辺の土地に対する在京・在阪デベロッパーからの問い合わせは、ここ数年でかなり増えてきました」と話す。福岡市内でオフィス・マンション開発が可能な土地は限られているが、人口推移はじめ都市のポテンシャルが高いことがその理由のようだ。

　また、「東京と比べて、投資金額が抑えられ、収益化の見通しも立てやすいとして、福岡へ触手を伸ばすデベロッパーは年々増加しています。東京も福岡もホテル不足が続いており、宿泊単価も上昇傾向にありますが、福岡のホテルは東京よりも高くなることがあります。こういった事情から、福岡市中心部ではホテル開発も増加しており、ホテル用地に関する問い合わせはマンション用地以上に増えてきています。我々の競合も増えてはいますが、福岡の発展のためにも、地場の強みを生かして福岡のまちづくりに貢献していければ」（永田氏）と意気込む。

【永上隼人】

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：田中稔眞
所在地：福岡市中央区渡辺通1-1-1
　　　　サンセルコビル6F
設　立：2009年4月
資本金：1,600万円
ＴＥＬ：092-292-2313
ＦＡＸ：092-292-2314