2024年12月22日( 日 )

法廷闘争に持ち込まれたロッテの経営権争奪戦(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

安倍晋三首相が11月28日、帝国ホテルで行われた重光昭夫ロッテグループ会長(60)の長男ユヨル氏(29)の結婚披露宴に出席した。韓国メディアが、日本の新聞の首相動静をもとに報じた。ロッテグループは骨肉の争いの真っただ中にある。日本の首相が一方に加担するような行動をとったことに驚きをもって伝えている。披露宴には、昭夫会長の母親・重光初子氏と姉・辛英子ロッテ奨学財団理事長は参加したが、昭夫会長の兄、重光宏之・元ロッテホールディングス副会長(61)は出席しなかった。ロッテのお家騒動は泥沼化した。

次男が日韓のロッテグループのトップに
 これまでの経緯をおさらいしておこう。ロッテでは創業者の重光武雄氏(94)の長男である宏之氏が日本のロッテホールディングス(HD)、次男の昭夫氏が韓国のロッテを見る役割分担を取ってきた。
 今年1月、日本事業を統括していた長男の宏之氏が、ロッテHDの副会長職を解任された。次男の昭夫氏が日韓ともに担当することになった。
 7月には、宏之氏は、創業者の武雄氏を伴って来日、副会長の昭夫氏の解任に動いた。しかし、宏之氏は返り討ちに遭う。昭夫氏はロッテHDの取締役会で重雄氏の代表権を外し、名誉会長に棚上げする人事を決めた。
 8月の臨時株主総会で昭夫氏中心の経営体制が確立した。ロッテHDを支配下に置いたことで、昭夫氏が日韓にまたがるロッテグループのトップの座に就いた。これで、一応の決着がついたと見られた。
長男が反撃を開始
 10月に長男の宏之氏が反撃を開始した。宏之氏は、創業者の武雄氏が不当にロッテHDの会長職を解任されたとして、解任無効の訴訟を日本で起こした。これに続き、宏之氏は、自身が役職を解任されたことで損害が生じたとして、ロッテHDの佃孝之社長とロッテグループ4社に対する損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。
 創業者の武雄氏は、韓国内のグループ7社の経営陣を業務妨害の容疑で韓国検察に刑事告訴した。聨合ニュースによると、「ロッテショッピングやロッテ物産の経営陣が中国での事業失敗に伴う損失を実際より少なく武雄氏に報告したため、捜査を求めた」としている。
 昭夫氏が進めた中国事業で1,000億円規模の損失が判明したことが、武雄氏と昭夫氏の亀裂が生じた原因だと、韓国メディアは報じている。
長男が持ち株会社「光潤社」の経営権を握る
 お家騒動の勝負のカギを握るのが光潤社という会社だ。日本のロッテHDの28.1%を保有する持ち株会社。光潤社は韓国ロッテグループの持ち株会社であるロッテホテルの最大株主だ。光潤社の経営権を握った者が、ロッテグループのトップに立つことができる。
 宏之氏は光潤社の臨時株主総会を要求。10月14日、東京都内で光潤社の株主総会と取締役会が開かれた。創業者の武雄氏から株式を譲り受け光潤社株式の過半数を握った長男の宏之氏は、次男の昭夫・韓国ロッテグループ会長を取締役から解任。総会後、取締役会を開き、宏之氏が最高経営責任者(CEO)に就いた。
 聨合ニュース(10月14日付)はこう報じた。韓国名を日本名で表記する。これに対し、韓国ロッテグループは報道資料を発表し、「昭夫会長の光潤社取締役解任はロッテグループの経営権にまったく影響を及ぼさない」と主張した。同グループによると、韓日グループの実質的な持ち株会社であるロッテHDの宏之氏の持ち分は光潤社28.1%と合わせても30%未満にすぎない。ロッテHDに対する昭夫氏個人の持ち分は1.4%だが、友好的な関係者らの持ち分を合わせると過半数を超えると説明した。ただ、宏之氏は、昭夫氏の関係者の持ち分はいつでも方向が変わりうると主張している。ロッテHDの経営権争奪戦は、第2位の株主で、27.8%の株式を保有している従業員持ち株会をどちらが握るか。争奪戦の構図が見えてきた。(つづく)

【青木 義彦】

 

関連記事