経済産業省は10月30日、中小企業庁が「ミラサポplus」内に「賃上げ・最低賃金対応支援特設サイト」を開設したと発表した。過去最大となった本年度の最低賃金引き上げに対応する中小企業・小規模事業者を後押しする狙いで、補助金情報や相談窓口などを一元的に示し、随時アップデートしていく方針である。

同特設サイトの特徴は、賃上げを具体化するための「3つのステップ」を明示した点にある。(STEP1)賃上げ実施時の人件費増を年間・月間・日次で試算できるシミュレーションの実施を促し、必要な利益増の目安を把握する。(STEP2)中小機構が登録不要・無料で提供する収益可視化ツール「儲かる経営 キヅク君」への動線を設け、製品・サービス別や顧客別の利益把握を通じた稼ぐ力の点検を支援する。業種ごとに計算方法が異なる課題を踏まえ、支援機関からの実計算事例の提供も求めている。
(STEP3)賃上げの前提となる収益改善や付加価値向上に直結する重点テーマを整理した。「価格交渉・価格転嫁」「売上拡大・生産性向上」「IT活用・省力化」「経営改善・事業再生」「事業承継」について、漫画で示す進め方のコツ、具体事例、相談窓口、関連補助金を横断的に案内し、現場で使える実務導線を意識した構成としている。

最低賃金の急速な引き上げは、人件費増に見合う収益確保や業務効率化、価格交渉の定着を企業側に迫る。特設サイトは、賃上げの意思決定から収益施策の設計、制度活用、専門家相談までを一気通貫でつなぐ「入口」と位置づけられる。とりわけ、数値試算(シミュレーション)と収益構造の見える化(キヅク君)を前段で行い、そのうえで個社の課題に応じた打ち手へ誘導する設計は、限られた経営資源のなかで施策の優先順位を付けたい中小企業に有効である。
総じて、同特設サイトは「賃上げしたいが踏み出し方がわからない」という企業の初動を後押しし、価格交渉や生産性向上といった中長期の体質改善へと接続する実務支援のベースになる。賃上げ・最低賃金対応を単発のコスト負担ではなく、利益設計・業務改革・資金支援の組み合わせで捉え直す契機として、地域の支援機関と企業現場の双方に活用が広がるかが注目である。
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中小企業庁
賃上げ・最低賃金対応支援特設サイト
【松本悠子】









