2016年中国経済展望~人民元が「主要通貨」の第3位に!(4)
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(株)アジア通信社代表取締役社長 徐静波氏
国有企業の資本の一部を社会保障基金に移転することに
――壮大な構想ですね。ところで、10月29日に中国共産党中央委員会第5次全体会議(「五中全会」)が閉幕、第13次5カ年計画(2016年~2020年)の青写真が明らかにされましたね。
徐 今回の五中全会の主要テーマは第13次5カ年計画でした。国民生活と密接に関わる具体的な政策が数多く盛り込まれています。
私は、
(1)「すべての貧困県が貧困の帽子を脱ぐ」、
(2)「競争のある分野の商品・サービス価格を全面的に開放する」、
(3)「高校段階の教育を普及させる」、
(4)「技術者の待遇を引き上げる」、
(5)「国有企業の資本の一部を社会保障基金に移転する」
(6)「2人目を全面的に開放する」ことなどに注目しています。
中国は日本と同じで少子高齢化が進み、年金制度、福祉制度などが、かなり大きな問題となっています。さらに、約7千万人と言われる貧困層をどう助けるのか、格差問題をどのように解決するのかも問題になっています。
今回の(5)政策では、「国有企業の利益は全て年金に回す」ことが決まりました。
経営者一人一人が自分の目で、自分の企業環境に合わせて
――最後になりました。日本の経営者に一言お願いします。徐 私が企業規模に関係なく、日本の経営者の方に申し上げたいことは、「中国市場をどの視点で見るべきか」ということです。
世論に左右されることなく、経営者1人ひとりが自分の目で、自分の企業環境に合わせて、冷静に判断して欲しいと思っています。
そこには、必ず成功方程式が存在するからです。
最近は中国からの企業撤退のニュースが流れることもあり、進出をためらっている経営者の方もいらっしゃると思います。
日本の伝統的労働集約型の企業が、安い人件費だけを求めて、中国に進出する意味はなくなりました。
しかし、一方中国を13億人の市場と捉えた場合は話が違います。中国の富裕層はすでに3億人を超えました。
今後、中国経済成長の決め手になる中間層は、ここ5年で少なくとも5億人を超すと試算されています。この点では、とても魅力的な市場です。
また、中国の新経済政策「新常態」の大きなスローガンの下で、省エネルギーや環境保護の街づくりが推進されています。
この分野は、日本が最も得意とする分野です。北京、上海のような近代的大都市でも、下水処理能力等は十分ではありません。ここにも大きなビジネスチャンスがあります。
――本日はありがとうございました。一刻も早く、さらに、一歩進んだ日中の経済交流が推進されることを願っています。 (了)
【金木 亮憲】<プロフィール>
徐 静波(ジョ・セイハ)
政治・経済ジャーナリスト。(株)アジア通信社社長、『中国経済新聞』編集長。中国浙江省生まれ。1992年に来日し、東海大学大学院に留学。2000年にアジア通信社を設立し、翌年『中国経済新聞』を創刊。2009年に、中国ニュースサイト『日本新聞網』を創刊。著書に『株式会社 中華人民共和国』(PHP)、『2023年の中国』など多数。訳書に
『一勝九敗』(柳井正著、北京と台湾で出版)など多数。日本記者クラブ会員。
経団連、日本商工会議所、日本新聞協会等で講演、早稲田大学特別非常勤講師も歴任。関連記事
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