今年4月に施行予定の改正区分所有法などは、前回解説した「建替え」や「所在不明者対策」といった抜本的な再生手法の緩和に加え、建設・不動産実務の日常業務に直結する「共用部分の変更」や「管理不全対策」に関する重要な改正もされています。今回は、より日常業務に関わる改正ポイントを解説します。
リノベーション・改修工事の円滑化
マンションの長寿命化には、適切なタイミングでの修繕やバリアフリー化といった対応が不可欠です。従前は、共用部分の形状や効用の著しい変更をともなう工事(重大変更)には、区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成が必要であり、この高いハードルが改修工事の妨げとなっていました。今回の改正では、この原則(4分の3)を維持しつつも、以下の事由がある場合には、要件が「3分の2」に緩和されます。
①バリアフリー化:エレベーターの新設やスロープの設置など、高齢化社会に対応した改修など
②瑕疵の除去:共用部分の施工不良や老朽化による不具合(外壁タイルの剥落防止工事など)により、他人の権利を侵害する恐れがある場合の是正工事など
建設業者にとっては、これまで合意形成が難しく失注していた大規模修繕やグレードアップ工事を提案しやすくなることを意味します。
「管理不全」住戸などへの介入
マンション管理の現場で深刻化しているのが、専有部分(各部屋)におけるゴミの堆積や、配管腐食による漏水の放置といった「管理不全」の問題です。これまでは個人の所有権の壁があり、管理組合やほかの区分所有者などがほかの専有部分の管理について介入することは極めて困難でした。
改正法では、こうした管理不全により共用部分やほかの部屋に悪影響(衛生上の有害性や危険)がおよぶなど他人の権利が侵害されるおそれがある場合、管理者、区分所有者などの利害関係人の請求により、裁判所が管理人(弁護士等の専門家)を選任できる制度が創設されます。選任された管理人は、区分所有者に代わってゴミの撤去や配管の修繕を行う権限をもちます。不動産業者にとっては、売買の障害となる「近隣トラブル物件」の正常化が期待でき、リフォーム業者にとっては、これまで所有者の拒絶で着手できなかった専有部分の緊急修繕工事が可能になる道が開かれたといえます。
同様に管理不全の共用部分の管理制度も創設されます。ただし、専有部分・共用部分を処分する場合には、区分所有者の同意が必要ですので、管理人が無断で処分はできません。
さらに、前回少し触れました「所在等不明区分所有者」の専有部分に特化した財産管理制度が創設されることになり、所在等不明専有部分の管理人は、裁判所の許可を得て、管理対象の専有部分の売却をすることができることになっています(売却代金は所在等不明区分所有者のために供託することになります)。
国内管理人制度の創設
近年、国内に住所を有しない外国人などが資産保有の目的でマンションを購入し、その後連絡がつかず、建物の管理に支障を来しているという事態が発生しています。
そこで区分所有者が国内に住所等を有しない場合などに、その専有部分等の管理に関する事務を行わせるために、国内管理人を選任することができる制度が創設されます。管理規約によって、国内管理人の選任を義務づけることも可能ですので、1つの対応策になると思われます。
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今回の改正は、合意形成の「数」のハードルを下げるだけでなく、管理不全といった管理・保全の「質」の課題にも切り込むものです。建設・不動産業界の皆さまには、これらの新制度を武器に、管理組合に対してより具体的で実効性のある解決方法を提案していくことが求められます。
<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所
所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
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<プロフィール>
岡本成史(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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