麻生が日本乾溜工業の親会社に 60億円増資で資本再編、九州インフラ企業の再編加速か

 25日、日本乾溜工業(株)(本社:福岡市東区、兼田智仁代表)は、(株)麻生(本社:福岡県飯塚市、麻生巌代表)および伊藤忠丸紅住商テクノスチールを割当先とする第三者割当増資を実施し、資本業務提携を行うと発表した。合わせて同社株式を保有する投資会社FCP18の全株式取得(完全子会社化)およびFCP18の吸収合併など、一連の資本再編を実施する。

 第三者割当増資では、普通株式587万株余を発行し約60億円を調達する。割当先は麻生が542万株余、伊藤忠丸紅住商テクノスチールが44万株余。増資後、麻生は議決権ベースで50.10%を保有する見込みで、日本乾溜工業の筆頭株主となる見通しだ。

 調達資金は、日本乾溜工業の優先株式を保有するFCP18の株式取得に充当する。FCP18は地域投資ファンド「ナイン・ステーツ4投資事業有限責任組合」が保有する会社で、同社は日本乾溜工業の優先株式200万株(発行済株式総数の28.75%)を保有している。

 この優先株式は普通株式約724万株に転換可能で、普通株ベースでは約6割に相当する潜在希薄化要因となっていた。今回、日本乾溜工業がFCP18を完全子会社化したうえで吸収合併することで、長年残っていた優先株問題を整理する。

 日程は、5月20日に臨時株主総会を開催し、21日に第三者割当増資の払込みとFCP18の株式取得を実行。その後、7月8日にFCP18を吸収合併する予定としている。

 日本乾溜工業は交通安全施設工事や法面工事などを手がける建設会社で、防災用品などの販売も行う。九州を主力市場とし、25年9月期の連結売上高は175億9,400万円、営業利益は6億9,700万円だった。

 今回の資本業務提携では、麻生グループの建設会社との営業連携や技術協力を進めるほか、麻生から取締役1名を受け入れ、経営面での支援も受ける予定としている。

日本乾溜工業の経営課題:優先株処理とスポンサー交代

 今回の資本再編の出発点は、日本乾溜工業が長年抱えてきた優先株問題にある。

 同社は2004年、債務超過に陥った際の財務再建策として優先株を発行した。これはデット・エクイティ・スワップによる資本増強策だったが、その後、この優先株は地域投資ファンドの管理下に移った。

 問題は、この優先株が普通株へ転換可能であり、転換された場合には既存株主の持分が大きく希薄化する構造だった点だ。潜在的には会社の支配権が大きく変わる可能性を内包しており、企業価値向上や長期戦略を描くうえで不確実性が残っていた。

 今回の再編では、第三者割当増資で資金を調達し、その資金で優先株を保有する会社を買収する。つまり潜在的な支配権リスクを資本再編によって解消する構造である。

 そのうえで、単独経営を維持しながら上場を続けるため、新たな資本スポンサーとして麻生グループを迎えるという選択をした。

麻生グループは「専門工事」の取り込みへ

 一方、麻生側の視点から見ると、今回の出資は単なる金融投資ではなく、建設分野の事業戦略の一環とみることができる。

 麻生グループはセメント事業を基盤とする企業グループで、建設、医療、ITなど多角的な事業を展開している。建設分野では日特建設や大豊建設、若築建設などをグループ企業として抱えており、土木分野での事業基盤を拡大してきた。これらの企業は主にゼネコンとして大型工事を担う企業だが、日本乾溜工業は法面工事や地盤改良、交通安全施設などの専門工事に強みを持つ企業である。

 建設業界では元請と専門工事の連携が競争力を左右する。今回の提携は、両者の技術を組み合わせ、受注機会の拡大を狙ったものとみられる。とくに、日本乾溜工業の主力である法面工事や地盤改良は、豪雨災害の増加や老朽インフラの更新などにより需要が拡大している分野でもある。

九州経済への影響:インフラ企業再編の可能性

 今回の資本再編は、九州の建設業界の構造変化という観点からも注目される。地方の建設会社は、人口減少と人材不足のなかで単独成長が難しくなりつつある。公共事業は一定の需要が続くとみられるものの、資材価格の上昇や労働規制の強化などにより、企業の経営環境は厳しさを増している。

 こうした状況のなか、地域企業が上場を維持しながら大手グループの資本を取り入れる「スポンサー型再編」が増えつつある。今回の再編も、その典型的な例といえる。麻生グループは九州を拠点とする企業グループであり、日本乾溜工業も同じく九州に強い営業基盤をもつ。両社の連携が進めば、九州におけるインフラ整備や防災工事の分野でグループとしての存在感を高める可能性がある。

 地方の建設業界では企業再編の動きが今後さらに広がるとの見方もある。今回の資本提携が、九州のインフラ企業再編の新たなモデルとなるのか、その行方が注目される。

【寺村朋輝】

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