武雄アジア大学の補助金19.5億円、議決の経緯(3)補助金先行に向けられた異論

 武雄市議会の令和6(2024)年6月定例会で、補助金19.5億円は賛成多数で可決された。では、反対した議員らは何を問題視していたのか。

 反対議員らの主張は、大学支援そのものへの理念的反対というより、共通して、リスク担保の不十分さを問題にしていた。小松市長がリスクへの備えを不十分なままに大型補助を先行させようとすることに反対したのである。

 以下では反対討論を行った議員ごとに、主な指摘内容を見てみる。

豊村貴司議員

「議会に対してアンケート結果や決算関係書類などの資料の提示があっていませんが、資料も見ずに、口頭、一言の文書だけで協議し、申請、建設へと進むことについて懸念します。(中略)調査・研究が資料もなく十分に行えず、そして、今回、予算が提案されたこと、また、不認可となったときの対応についても、議案質疑の答弁では現時点で整理されておらず、リスクへの対応について安心できる状態にありません。(中略)債務負担行為だから、不認可だったら予算を出さないからいいというものではなく、そこには残っている建物や土地をどうするかということが課題として生じます。そのことを整理しておくべきです。」

 豊村議員は、小松市長が「学生確保見込み」を旭学園からの伝聞のみに頼っていること、検証するための資料が不十分であること、そして構想が失敗したときの備えの不十分さを批判している。

 豊村議員は20日の採決に先立つ14日にも次のような質疑を行っている。「市としては、認可が下りなかったときは解体して更地にしてもらうということも明言をされています。3月議会のときは、それをいつするのかというのは、認可が下りなかったときに協議しますということだったんですが、やっぱり建設に入る前に、申請前にはやっぱり決めておくべきではないかというふうに思っております。(中略)運営費を抜いた総事業費は約 30億円といわれていますけれども、その分と、解体費用というのが全部学校法人側にかかってきます。」

 これに対する小松市長の答弁は次の通りだ。「一般的な原則としては、やはり解体をして更地にするというところは原則ですけれども、一方で、例えば認可が仮に下りなかった場合に、その改善点を改善すれば再チャレンジをするという可能性もここはございますので、そういう意味で、事前に解体をするという約束をするということはなかなか難しいのではないかというふうに思っています。」

 豊村議員は構想頓挫を想定した備えを問うが、小松市長の発言には旭学園側の事情への配慮を優先するかのような姿勢が見え隠れする。

朝長勇議員

「補助金交付要綱の内容が明確になっていない、そういった状態で本予算を承認することはできない。(中略)一言で言えば、順番が逆であると考えております。(中略)仮に想定どおり認可されたとして、市民から預かっている大きな資金を投入するからには、長期的な安定運営が見込めるかどうか、武雄市においても独自の検証を行うべきです。文科省の審査が厳しいからという、だから大丈夫というような認識は一旦置いて、武雄市独自で検討を進めるべきだと思います。(中略)執行部から出されている大学設置の経済効果や税収の見込みは、長期的にうまくいくことが前提でつくられたものであり、うまくいかなかった場合のリスク管理についての検証が不十分であると考えます。」

 朝長議員も、リスク担保のために必要な補助金交付要綱が後回しにされていることや、事業の妥当性を武雄市が独自に検証せず旭学園と国の審査に丸投げしていること、失敗した場合を想定したリスク管理の不十分さを批判している。

江原一雄議員

「学校法人としての進め方に学校側としての拙速が感じられ、不信を感じる第1の理由であります。」

 こうしてみると、反対側の討論は一貫している。表現の仕方はそれぞれ違っても、共通して問題にしているのは、議決時点でリスクが十分に担保されていないにもかかわらず、補助金だけが先行して決められようとしている点だ。

 以上の反対があったが、先述の通り補助金予算は賛成多数で可決された。

残された論点:今後への不安

 予算成立による資金の裏付けを得て、旭学園は24年10月に文部科学省に大学設置認可申請書を提出した。

 しかし、この後も議会ではたびたび武雄アジア大学についての懸念が議員から表明されている。それをいくつか取り上げる。

学校法人が破綻した場合

 24年9月定例会、朝長議員質疑「学校法人が経営破綻するといったことも十分想定しておくべき事態なわけですね。(中略)例えば武雄アジア大学が開学、予定どおり開学はしたけれども、無償貸付期間中とか有償貸付期間中に、旭学園さんが万が一、経営破綻したというときに、交付金の返還とか、土地の原状回復とか、そういう約束事がしっかり履行されるのかどうか、誰が補償するのか、そういった点の考えについてお尋ねいたします。」

 市担当者答弁「仮に、学校法人旭学園が経営破綻になった場合には、契約相手がいなくなることから各種契約は解除となり、土地の原状回復や補助金の返還等を求めることは難しい状態になると思います。事業者の経営破綻による契約解除は、本件に限らずどのような場合も同様となりますが、今後、旭学園では、市や地域などと意見を交換する協議会のような場をつくる準備が進められているため、そういった事態に陥らないよう、大学の教育内容や運営状況、財政状況など、継続して確認いたします。」

追加支援の可能性

 25年9月定例会、牟田勝浩議員質疑「武雄アジア大学について。何度も、開学資金の補助金は出すと、しかし、その後の運営とか維持に関しては、武雄市はもうこれ以上は補助をしないということで言われておりました。それの確認です。」

 小松市長答弁「まずは旭学園に、運営についてはしっかりと頑張っていただく必要はありますけれども、これまで委員会、そして、この議会でもお答えしておりますとおり、大学の運営に対して補助金を出すということはございません。」

公立化の可能性

 同定例会、豊村議員質疑「小松市長は、万が一運営が困難となれば市民に損害が出ないように対応すると述べ、市による公立大学化などは全く考えていないと話したとありました。私も、やっぱり民間でうまくいかなかったものを公立化するというのはちょっとないと思っています。ただ、先ほど言った、運営が困難となれば市民に損害がないように対応をするという言葉。これはですね、原状回復するということを超えるような範囲で解釈できるんじゃないかなと思うんですが、文書でしっかり約束を交わすということ、また、この記事にあった市長の言葉の意味について改めて伺いたいと思います。答弁願います。」

 小松市長答弁「仮に万が一、閉じるとなった場合の補助金返還の仕組みは用意をしたいし、そして、そもそもそうなった場合に公立大学化ということは一切考えておりませんというふうに私は答えたというふうに記憶をしています。様々な御懸念についてですね、そこは幅広い方が入った協議会をつくり、それの公開をその後することで、しっかりと、ある意味チェック等よりよくしていくための提案の場としてやっていきたいですし、それ以外にも必要に応じて文書等は結んでいきたいと考えております。」

旭学園が経営難に陥ったとき

 25年12月定例会、山口昌宏議員質疑、「市長はこれ以上の補助はしないという話でしたけれども、今後、もしですよ、募集をしても学生が集まらないとか、経営が厳しくなったときに、市はどこまで学校に関わっていくのか」

 市担当者答弁「市は、旭学園が大学を設置、運営することを目的に補助金を支出しております。仮に旭学園が学生の確保等の理由により大学の運営ができなくなった場合は、その目的が果たせなくなることから、武雄市補助金等交付規則及び武雄市大学施設等整備事業費補助金交付要綱にのっとり、耐用年数等を勘案した返還金額を算出し、お支払いいただくことになります。」

 山口議員質疑「この補助金というのはですよ、相手が、大学が金がないからこそ補助金出すんですよね。それを返していただくって、どういうふうな返却の方法を考えておられるんですか。」

 市担当者が前答弁を繰り返したため、山口議員は小松市長に答弁を求めた。しかし、小松市長も補助金の返還条項を補助金交付要綱に入れているとの答弁に終始した。

今後、武雄市の原則論は通るか

 議員たちの懸念を総括すると、旭学園の破綻あるいは武雄アジア大学の運営から撤退する場合に補助金は返ってくるのか、あるいは武雄市として将来的な追加負担(公立化も含む)はあるのかが主要な懸念点であることが分かる。

 それに対する小松市長ならびに市担当者の答弁は、「協議会で話し合う」「公立大学化はしない」「運営費を補助することはない」「補助金は補助金交付要綱に則って返還してもらう」というものだ。しかし、これは武雄市側の希望的な原則論に過ぎない。果たしてこのような原則論が、今後の武雄アジア大学の行方をめぐって通用するのか。

 続く記事では、武雄アジア大学をめぐる今後の出口戦略について考える。

(つづく)

【寺村朋輝】

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