アビスパ福岡、絶望の0-2から9人での死闘を越えて、26年ぶりの「広島ダブル」をはたす劇的勝利
4月29日、明治安田J1百年構想リーグ第13節、アビスパ福岡はホームでサンフレッチェ広島と対戦し、2-2からのPK戦(4-3)で勝利し、勝点2を得た。前半に2点を先行される苦しい展開となったが、碓井聖生と見木友哉の得点で追いつき、終盤は9人で耐え抜いた。PK戦ではGK藤田和輝がセーブを見せ、最後は橋本悠が決めた。福岡は広島から26年ぶりとなるシーズンダブルを達成した。
GW初日、広島撃破へ、
スタンドに満ちる期待
ゴールデンウイークの幕開けを告げる「明治安田J1百年構想リーグ」第13節。アウェー3連戦という過酷なロードを戦い抜き、中3日で聖地へと帰還したアビスパ福岡を待っていたのは、特別な高揚感に震えるベスト電器スタジアムの空気だった。
前節の岡山戦では無得点に泣いたが、この日の舞台は整っている。相手は今月上旬に敵地で完封勝利を収めたサンフレッチェ広島だ。スタンドを埋めた1万1,200人のサポーターが放つ熱量は、単なる連休の賑わいではない。強敵を返り討ちにし、実に26年ぶりとなる「シーズンダブル」という歴史の目撃者になろうとするアビスパサポーターがスタジアムを支配していた。
悪夢の10分間、
ハイラインに突きつけられた現実
しかし、キックオフの笛とともにスタジアムの期待は暗転する。広島のバルトシュ・ガウル監督が「借りを返す」と誓った猛烈なプレスが福岡を襲った。塚原監督が試合前に掲げた「先に失点しない拮抗した展開」という理想は、開始早々に崩れ去る。
前半4分、ハイラインの背後をロングカウンターで突かれDF中野就斗に先制を許すと、同10分にはMF東俊希に強烈な一撃を叩き込まれた。わずか10分で0-2。指揮官が「軽い失点」と顔をしかめた通り、あまりにも残酷な幕開けとなった。静まり返るスタンド。
反撃の狼煙、碓井聖生の覚醒
絶望の淵で、今年のアビスパは真価を見せた。前半19分、前線からの連動したプレスが広島の砦・大迫敬介のミスを誘う。その隙を見逃さなかったのはFW碓井聖生だ。鋭くパスをカットしてエリア内へ侵入すると、ニアサイドを射抜く左足の一閃。
「1つ成長できた」と語る若きストライカーの1点が、スタジアムに反撃の火を灯した。塚原監督も「守備のタスクをこなしつつ得点も取った。非常に良い評価だ」と全幅の信頼を寄せる。
見木友哉、一撃で流れを変えた同点弾
1-2で迎えた後半27分、ベススタは歓喜の爆発に揺れる。敵陣中央で前を向いたMF見木友哉が、右足を一閃。放たれたボールは強烈なアウト回転を帯び、精密なスライス軌道を描いてゴール右隅へと突き刺さった。
「イメージ通りの軌道だった」と涼しく振り返る見木のワールドクラスの同点弾に、1万1,200人のスタジアムは大歓声に包まれた。勝利への機運は間違いなく福岡に傾いていた。
9人で耐え抜いた「アビスパの魂」
だが、物語はさらなる試練を用意していた。後半35分、MF名古新太郎が痛恨の一発退場。さらに負傷したFW鶴野怜樹もピッチを去り、福岡は9人での戦いを余儀なくされる。襲いかかる広島の猛攻。しかし、ここからが福岡の真骨頂だった。数的不利を悟りながらも、全選手が泥臭く体を投げ出し、執念でゴールを死守する。最後まで集中を切らさず耐え抜き、2-2のまま勝負はPK戦へと委ねられた。
PK戦、藤田のセーブと
橋本悠の一撃で決着
運命のPK戦。スタジアムには張り詰めた空気が漂った。広島GK大迫に2本を止められ、流れは一度、相手に傾いたかに見えた。それでも福岡は崩れない。サドンデスに突入した6人目。福岡の守護神・藤田和輝が鋭い反応で相手のキックを弾き出すと、スタジアムは一気にどよめいた。そして、福岡の6人目。ここで決めたら、勝利。キッカーは、前回対戦でゴールを決めた橋本悠。その橋本がボールをセットすると、何かが起きるという期待の声が自然と沸き起こった。橋本は落ち着いてゴール右へ流し込み、勝利を決定づけるゴールとなった。スタジアムは大歓声に包まれた。
飛び上がって喜びを表現する橋本に、選手やスタッフが一斉に駆け寄る。ピッチには歓喜の輪が広がった。PK戦スコア4-3。アビスパ福岡が死闘を制し、広島から26年ぶりとなるシーズンダブルを達成した。
進化を証明し、
さらなる激闘の真っ只中へ
試合後、塚原監督は「勝ち点を積めたこと、広島さん相手にシーズンダブルをできたことは我々の自信になる」と、絶望から這い上がったチームを誇った。一方で、「前半の2失点は大きく反省しないとダメ。軽い失点を減らす作業は必ず必要だ」と、さらなる高みを見据えて兜の緒を締めることも忘れなかった。
しかし、息をつく暇はない。チームは現在、5月3日のアウェーC大阪戦、同6日のホーム京都戦と続く過酷な「7連戦」の真っ只中にいる。激戦の疲労や負傷者、そして今回の退場者といった不安要素は尽きない。それでも指揮官は「累積や退場のところを含めて、やはりいろいろな選手にチャンスが生まれると思う。アビスパらしく全員で戦っていきたい」と力強く前を向く。
9人での死闘でつかみ取ったこの勝点は、単なる数字以上の自信をチームにもたらした。守り切る強さに加え、ビハインドを跳ね返す「盛り返す力」。その両輪が、いま、たしかに噛み合い始めている。スタジアムに残る熱気とともに、アビスパ福岡は次の戦いへと向かう。
【森田みき】








