武雄アジア大学をめぐる監査、市長、議員それぞれの認識(2)「大学を生かす」だけで説明責任は果たせるか

 現在、武雄市議会では9月定例会が9月1~30日の会期で開かれている。そのうち8~11日に行われた一般質問では、初日に小松市長が出馬表明を行い、その後、複数の議員が武雄アジア大学について質問を行った。その一連の質疑からは、小松市長が次期市政で武雄アジア大学構想にどのような姿勢で向き合おうとしているのかとともに、各議員の大学に対する認識の違いも見えてくる。

 まず今回の第2回記事では、小松市長の出馬表明と古賀珠理議員の質疑を見ていく。

「4年で評価」から出馬表明へ

 一般質問初日の8日、上田雄一議員の質問に答えるかたちで、小松政市長は12月に控える武雄市長選への出馬を表明した。

 以下は、そのやり取りの主要部分と、武雄アジア大学についての発言を抜粋したものだ。

 上田議員 市長にうかがいます。市長はつねづね、初年度1年で大学を評価することはやめてほしい、4学年揃っての評価をしてほしいということを言われていましたが、この姿勢について変化はありませんか。

 小松市長 大学は4年生まで揃って、まず評価されるものだと考えています。

 上田議員 大学は4年間で評価をするということになれば、その時点に市長でいなければならないわけですよね。その辺はどのように考えていますか。

 小松市長 大学についての質問ですけれども、私の去就に関する話だと思いました。なので、少し時間を使ってお話ししたいと思います。市長になって当選させていただいて、11年半が経ちました。
(小松市長は、市長就任から11年半の実績を振り返りつつ、3期目の実績として武雄アジア大学に触れた。)

 小松市長 そして大学ですけれども、佐賀西部初となる武雄アジア大学がこの武雄に開学しました。議会の皆さま、市民の皆さまの多大なるご理解とご協力をいただきました。学生たちは目を輝かせながら今、頑張っています。本当に誇らしく思います。
 一方で、子どもたちの入学者数というのは定員に満たなかった。やはり4年で評価されるものですけれども、来年の学生募集も大事だということで、そこは強く求めてきました。
 私、大学側からは先ほどありました取り組みの実績を聞きまして、昨年と比べてさまざまな部分で大幅に取り組みが強化されているということを受けて、来年は確実に入学者数が増えるということが期待できると考えました。
(中略)
 20年先、この武雄が伊万里を抜いて、人口が佐賀西部で一番多くなると予想されています。それを見据えたまちづくりにも着手していかなければならない。それらすべてを横軸で通すのが大学だと思っています。大学は、人生100年時代における知のインフラです。子どもの教育から大人の学び直し、産業の活性化まで、大学をパートナーとして、ともにまちづくりを進めていくことが必要だと思っています。
(後略)

 選挙の3カ月前となって小松市長が自らの進退について言及したわけだが、「大学は4学年がそろってから評価されるべき」という自らの主張を踏まえて出馬表明を行ったことは注目に値する。結果として、武雄アジア大学の4学年がそろい、その評価が本格的に問われる時期は、次期市長の任期中に迎えることになる。

 さて、武雄アジア大学構想をめぐる武雄市の責任については、いくつかの段階に分けて考えることができる。

①武雄アジア大学構想を誘致したことについての責任
②武雄アジア大学構想のリスク管理についての責任
③初年度の入学者が37人にとどまったことについての責任(結果責任)
④4学年がそろった段階でも学生確保が十分に進まなかった場合の責任(結果責任)
⑤武雄アジア大学が経営上重大な問題に直面した場合の責任(結果責任)

 当社はこれまで、とくに②のリスク管理が不十分ではないかと指摘してきた。一方、小松市長ならびに旭学園は大学の評価について、初年度ではなく4学年がそろった段階に置く考えを繰り返し表明してきた。

 しかし、ここには重要な問題がある。4学年がそろった段階で大学を評価するためには、大学がそこまで安定して運営されることが大前提だ。学生確保や財務状況が悪化すれば、④の評価時点を迎える前に⑤の問題が顕在化する可能性も排除できない。その最悪の事態を避けるために最も重視すべきなのが、まさに②のリスク管理にほかならない。

 では、12月の市長選への出馬表明を行った小松市長は、次の任期をどのような姿勢で大学構想にのぞむつもりなのか。各議員との質疑からその姿勢を見てみよう。

大学の「効果」を問う古賀議員

 9日の一般質問では、古賀珠理議員が「大学の地域連携」をテーマに武雄アジア大学を取り上げた。古賀議員は冒頭、「武雄市の未来を形づくる大きな可能性を持つ存在」と評価したうえで、13億円の補助金について「行政だけが責任を負うのではなく、議会としても説明責任を共有している」と述べた。

 ただし、その後の質問は補助金の妥当性や学生確保、大学経営を検証するものではなく、大学が地域にどのような効果をもたらしているかに重点が置かれた。古賀議員と市とのやり取りの概要は以下の通りだ。古賀議員はまず、学生の地域活動について質問。市側は、開学から約5カ月で「約70件、延べ4,000人を超える交流」が生まれたとして、地域行事や学校などとの連携事例を紹介した。続いて古賀議員が佐賀県西部との広域連携を尋ねると、市側は江北町、有田町、大町町、嬉野市との包括連携協定などを挙げ、大学の開学効果は武雄市だけでなく県西部にもおよぶとの認識を示した。さらに、大学教員の専門知識を地域企業の商品開発や課題解決に生かせないかと質問。市側は、産学連携やインターンシップ、人手不足への対応などにも効果を期待すると答えた。最後には小松市長も答弁に加わり、「大学を生かしたまちづくりをぜひ一緒に進めていきたい」と述べ、将来的な卒業生の地元定着にも期待を示した。古賀議員も「市長と同感」と応じた。

 この質疑の特徴は明確だ。古賀議員が問うたのは、「大学誘致は想定通りに進んでいるのか」ではなく、「すでに開学した大学をどう地域に生かしていくか」だった。この「大学を生かしたまちづくり」という論点は、小松市長がこれまでも大学をめぐる質問に対して前面に出してきた主張である。今年6月の定例会で豊村貴司議員が、旭学園の財務状況を十分に確認しないまま学生確保を求める市の姿勢について、大学誘致の大義である「地域における教育機会の創出」を揺るがしかねないとして、市長のリスク認識や学生保護、公費13億円を投じた責任を問うた場面があった。ところがそれに答えた小松市長は、財務リスクへの具体的な対応よりも「大学を生かしたまちづくり」に重心を置くかたちで答弁を行ったのだった(詳しくは下記の過去記事を参照)。

武雄アジア大学は誰のための大学か 揺らぐ大義(後)学生確保の前に問うべき財務基盤

 今回の古賀議員の質疑は、小松市長がこれまで前面に出してきたそのような枠組みに沿うものだった。古賀議員が地域交流、広域連携、産学連携など、大学をどう生かすかを問い、市側がこれまで強調してきた開学効果や将来への期待をあらためて説明する場となった。一方で、初年度の入学者が37人にとどまった学生確保の問題や、旭学園の財務状況、13億円の補助金に見合う誘致効果が得られるのかといった問題は、この質疑では検証されなかった。

答弁する小松政武雄市長(左)と、質疑する古賀珠理議員(右) 出所:武雄市の公式YouTubeチャンネル
答弁する小松政武雄市長(左)と、質疑する古賀珠理議員(右)
出所:武雄市の公式YouTubeチャンネル

執行部と議会がはたすべき「説明責任」とは何か

 古賀議員は冒頭、13億円の補助金について「議会としても説明責任を共有している」と述べた。しかし、その説明責任をはたすための質疑として示されたのは、大学の地域連携や将来への期待だった。はたして本件武雄アジア大学構想に対して補助金13億円を支出した武雄市とそれを承認した市議会の「説明責任」とは、大学の効果や期待を説明することに終始して果たされるものだろうか。公費を投じた政策について、期待通りに進まなかった場合のリスクまで検証し、懸念されるリスクを回避する方策について説明することではないのだろうか。

 古賀議員の質疑は、小松市長ならびに市執行部だけでなく、市議会のなかにも武雄アジア大学構想のリスク面を十分に検証しない姿勢があることを浮かび上がらせた。このような議会の姿勢も、武雄アジア大学構想を不十分なリスク検証のままに走らせることになった一因になったと言わざるを得ない。

 次回記事では豊村議員の質疑を見る。

(つづく)

【寺村朋輝】

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