2024年12月23日( 月 )

訪問・通所介護事業、4割超が赤字、半数以上が人員不足

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人手不足に悩みながらも3割が事業拡大希望

kaigo 日本政策金融公庫(略称:日本公庫)総合研究所は、26日、訪問・通所介護事業の4割超が赤字となっていることを発表した。同所が訪問・通所介護事業を営む企業の経営実態を探るために実施した「訪問・通所介護事業に関するアンケート」(15年10月実施)の結果によるもので、小規模な法人で赤字の割合が多く、介護報酬改定の影響も小規模な企業ほど大きいという傾向が見られた。

 2015 年の改定後、訪問・通所介護以外のサービスも含めて介護報酬が減少した企業の割合は 57.6%。増加した企業は1割に満たない。減少幅は小規模な企業ほど大きく、従業者数4人以下の企業では 15%以上減ったとする企業が26.9%を占めた。なお、人員については、58.5%の企業が介護職員や登録ヘルパーが足りていないと回答している。

 赤字が半数近くを占め、原動力となる人手も不足する同事業だが、事業を拡大したいという企業も少なくはない。訪問介護で30.3%、通所介護で23.3%と、約3割が拡大を希望している。だが、一方で9%弱の事業所が縮小や撤退を検討していると回答した。

国は「ICTや介護ロボットの活用について議論」

 アンケート結果は、設備投資がままならぬ小規模事業所の経営難を示している。一方、厚労省は1月12日に「第1回介護のシゴト魅力向上懇談会」を開催したばかり。今後月1回をメドに開催されるという同会の目的は「介護の仕事に誇りと自信を持ち、より魅力を感じてもらう仕事にしていくことの議論」。初会合で挨拶した塩崎泰久厚生労働大臣は「ICTや介護ロボットを活用した介護職の負担軽減などについて議論を重ねていく」と語ったが、小規模事業者の状況は、この会でどう受け止められていくのか。

 同省老健局振興課に問い合わせたところ、「赤字だからこそ、設備投資を行い状況改善する必要もある。ICTについては、必ずしも大規模な設備投資が必要ではない活用法もある。今後、懇談会のなかから、企業の規模に関わらず、経営の効率化を図ることで職場環境の改善を図る方策が生まれるものと思われる」との回答を得た。第一回懇談会では、訪問介護の実施例なども報告されている。このなかから、登録ヘルパーにとって魅力的な介護のシゴトが生まれるか否か――。

【黒岩 理恵子】

 

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