政治経済学者 植草一秀
職員へのパワハラ問題で山中竹春市長が辞職したことに伴う横浜市長選挙が10月4日に告示された。午後5時に立候補の受付が締め切られ7人が立候補した。
立候補したのは届け出順に
無所属新人で市民団体代表の藤川祥(さち)子氏(51)
無所属で前横浜市長の山中竹春氏(54)
無所属新人で前衆議院議員の中谷一馬氏(43)
無所属新人で弁護士の原沢敦美氏(59)
無所属新人で会社社長の福山敦士氏(37)
無所属新人で建築家の山本理顕氏(81)
共産党新人で党神奈川県委員会・副委員長の浅賀由香氏(46)
の7人。
政党の支援状況は自民党、日本維新の会、国民民主党の地方組織が原沢氏を推薦、公明党の市議団も原沢氏を支持。立憲民主党の地方組織が中谷氏を支援。参政党は福山氏を推薦。山中竹春前市長はパワハラが認定され、本人は謝罪したが、出直し市長選に出馬した。投開票は10月18日。10月5日には臨時国会が召集されて国会で論戦が繰り広げられる。高市自民の今後に影響を与える選挙になる。
山中氏がパワハラで辞職したことを受けて自民、維新、国民が女性の原沢敦美氏を推薦。山中氏は横浜市経済界の重鎮で「ハマのドン」として知られる藤木幸夫氏らがバックアップするが、政党の支援を得られず、パワハラの責任を取っての辞任であるため、返り咲き当選を果たすハードルは高い。
自維与党とゆ党の国民は女性候補で弁護士の原沢氏を推薦。必勝を狙う。ただし、ゆ党陣営では参政党が独自候補を擁立した。与党とゆ党が政治を支配してしまう構図が日本全体に広がり始めている。
現状にくさびを打ち込むには「真の野党」勢力が連帯して共闘することが必要。しかし、この陣営から3人が立候補した。
立民前衆院議員の中谷一馬氏
共産党新人の浅賀由香氏
無所属新人で平和と民主主義をともにつくる会・かながわ代表の藤川祥子氏
が立候補した。
退潮傾向を強めている護憲・リベラル勢力が3人も候補者を擁立すれば勝てる選挙も勝てなくなる。自維与党は原沢氏を擁立したが、与党の一部が推す山中前市長、参政が推薦する福山氏が出馬するから、与党支持層の票が原沢氏に集中するわけではない。
この間隙を縫って選挙に勝利するには連帯と共闘が必要不可欠。しかし、連帯と共闘は成り立たなかった。このことは高市内閣与党陣営の候補者を勝利させる大きな要因になる。与党とゆ党ではない「たしかな野党」陣営の結集が喫緊の課題だ。
中道は空中分解した。中道が崩壊した主因は新党の綱領と基本政策において公明提案を丸呑みしたこと。政党分離の境界は重要政策テーマについての基本政策路線にある。
安保法制を含めて憲法改定・戦争推進についての是非
原発政策
消費税増税路線
が最重要の政策テーマ。
公明提案は
安保法制容認
原発推進
消費税容認
だった。
つまり、自維の与党方針と基本的に差がないのである。立民は没落して公明の支配下に移行した。その結果として主権者の支持を完全に失って総選挙で大惨敗したのである。
主権者は新たな「ゆ党」を求めていない。いま日本政治に抜け落ちているのは自維体制に反対する主権者の意思を正面から受け止める「真の野党」勢力。ここに位置付けられてきたのが共産・れいわ・社民、そして立民の一部だった。
ところが、立民は「護憲・リベラル」の旗を捨てて公明の軍門に下った。その結果、立民は主権者の支持を完全に失ったのである。中道が分裂して公明と民主改革に移行したが、民主改革の路線が定まらない。これまでの「ゆ党」路線を引きずるなら民主改革が消滅する日は遠くないだろう。
横浜市長選では「護憲・リベラル」が連帯して候補者を一本化すべきだった。しかし、これは実現しなかった。したがって、横浜市長選での勝利のハードルは極めて高い。共産はぶれずに独自路線をまい進するが、共産単独で首長選挙に勝利できる支持の広がりを持たない。
社民といのちのスタンスもよく見えない。高市内閣は衆議院での圧倒的多数の与党議席数を盾に横暴な国会運営を継続するだろう。しかし、高市自民に投票した主権者は決して多数でない。2月衆院総選挙の比例代表選で高市自民に投票した主権者は投票者全体の37%、全有権者の20%に過ぎない。全有権者の5人に1人しか高市自民に投票していない。
投票した主権者を分母にとっても37%。衆議院議席の37%は171議席。民意を反映する自民議席は本来は171で過半数233にも遠く及ばない。ところが、自民は316議席を占有。自民単独で衆院議席の3分の2以上を占有した。
この「ひずみ」を生み出した元凶は「小選挙区を基軸にする選挙制度」だ。民意を正確に反映する国会における議席配分を実現するには全議席を比例代表選挙で決定するのがもっとも合理的だ。臨時国会では議員定数削減が論じられるが、この国会論戦のなかで、選挙制度の抜本改革を徹底論議するべきだ。
比例代表を削減する議員定数などは言語道断。主権者の広い支持に支えられていない、単に議席数だけ多数保持する高市内閣の暴走を止める必要がある。
参議院で自維与党は過半数を割り込んでいる。この少数与党の欠陥を高市内閣は国民民主や参政党、保守党、みらいなどの「ゆ党」勢力の支援によって乗り切ろうとしている。「与党」も「ゆ党」も大差がない。日本政治を立て直すには「真の野党」の拡充が必要不可欠。その勢力の再建に取り組まなければならない。
参院立民は中道と一線を画して、「ゆ党化」に一定の抵抗を示している。このなかで、護憲・リベラル勢力の結集を図るために「ゴリラ」創設が発表された。その後の動向についての新しい情報が示されていないが、「真の野党」勢力の結集に向けて「ゴリラ」が触媒の役割を果たすことが求められている。
政党活動には資金が必要である。政党活動に必要な資金を供給する制度が政党交付金。国民が政治活動の費用を提供する制度である。交付は1月1日の議員数に準拠する。したがって、「真の野党」勢力の結集は年内に終える必要がある。高市内閣暴走を打破するためにも「真の野党」勢力結集を急がねばならない。
<プロフィール>
植草一秀(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。経済金融情勢分析情報誌刊行の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門第1位。2002年度第23回石橋湛山賞(『現代日本経済政策論』岩波書店)受賞。著書多数。
HP:https://uekusa-tri.co.jp
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