7試合ぶりの白星で降格圏脱出

10月10日、ベスト電器スタジアムで行われた明治安田J1リーグ第9節で、アビスパ福岡はファジアーノ岡山と対戦。DF前嶋洋太の先制ゴール、DF橋本悠の勝ち越しゴールで2―1と競り勝ち、リーグ戦7試合ぶりの白星を手にした。
リーグ戦では約2カ月間白星から遠ざかり、降格圏に沈む苦しい状況が続いていた。さらに、リーグ戦の中断期間中に行われた天皇杯も3回戦でJ2の横浜FCに敗れ敗退。なかなか浮上のきっかけをつかめないまま迎えた岡山戦は、何としても勝ち点3が欲しい一戦だった。
そんなチームの思いが、立ち上がりからプレーに表れた。前半8分、前嶋がゴール前でボールを押し込み、福岡が幸先よく先制。しかし、1点をリードして迎えた後半16分、岡山に同点ゴールを許すと、試合の流れは徐々に相手へと傾きかける。勝利から遠ざかっていたチームにとって、嫌な展開だったが、この日の福岡は踏みとどまった。
後半31分、橋本が勝ち越しゴールを決め、再びリードを奪う。残り時間、岡山の反撃を受けながらも、全員でリードを守り切り、待望の勝利をつかんだ。
この勝利によって、福岡は降格圏から脱出。まだまだリーグ戦の戦いは序盤であり、降格圏との勝点差はわずか1と、安心できる状況ではない。それでも、長く続いた重苦しい空気を振り払い、勝点を積み上げられたことで選手もサポーターも“ほんの少しだけ”気持ちが軽くなったのではないだろうか。
そして、喜びに浸る間もなく次の大一番、10月14日に行われるルヴァンカップではサガン鳥栖との九州ダービーが迫っている。
試合終了後、ゴール裏のサポーターからは「10.14俺たちはすべてを懸けて戦う」と書かれた白い横断幕が掲げられた。これに応えるように、湯澤聖人はサポーターの前で「次は鳥栖戦なので気合を入れていきましょう。みんな選手は心燃えているので安心してください」と力強く呼びかけた。
福岡にとって鳥栖戦は、単なるカップ戦の一試合ではない。互いの意地とプライドがぶつかり合う、負けられない九州ダービーだ。岡山戦でつかんだ勝利を巻き返しへの第一歩とし、九州ダービーでも白星を重ねて、さらに勢いをつけたい。

橋本悠、歓喜のJ1初ゴールに涙
この試合のヒーローとなったのは、決勝ゴールを決めた橋本悠だった。1―1で迎えた後半31分、橋本が値千金の勝ち越し弾を決め、チームに7試合ぶりの勝利をもたらすと同時に、自身にとって記念すべきJ1リーグ初ゴールとなった。
得点後、雄叫びをあげて喜びを爆発させた橋本だったが、感極まって涙を拭う姿も見られた。白星から遠ざかるチームのなかで、副キャプテンとして責任を背負い、いかに苦しい日々を過ごしてきたかが伝わってくる場面だった。
試合後のインタビューでは、初ゴールについて「百年構想リーグの得点は記憶には残るが、J1の記録には残らない。記録に残るゴールを決められてよかった」と喜びを語った。橋本は百年構想リーグでも4ゴールを決めているが、今回の得点は正式なJ1リーグの記録に刻まれる初ゴール。しかも、チームを勝利に導く決勝点となっただけに、その喜びもひとしおだった。しかし、喜びの一方で、副キャプテンという立場でチームを支えながら、自らも結果を求められる日々が、本人が思っていた以上にその責任が重くのしかかっていたようだ。
橋本が元気にピッチを駆け回っているときは、アビスパにも勢いがある。持ち前の明るさと積極的なプレーは、チームにとって大きな力だ。今回のJ1初ゴールをきっかけに、少し肩の荷を下ろし、橋本らしく生き生きとプレーする姿をもっと見せてほしい。その「元気」が、アビスパの巻き返しを後押ししてくれるはずだ。
「山陽新幹線ダービー」が示した新たな可能性
今回の岡山戦では、ピッチ外でも興味深い取り組みが行われた。JR西日本が福岡と岡山の対戦を「山陽新幹線ダービー」と銘打ち、両チームの対決を盛り上げたのだ。
博多駅構内には、岡山駅長と博多駅長が熱い応援合戦を繰り広げるポスターが掲示されるなど、新幹線で結ばれた2つの街ならではの企画が展開された。9月に行われたサンフレッチェ広島戦でも同様の企画が実施されており、新幹線を通じて沿線のクラブ同士の対戦を盛り上げる、新たな取り組みとして注目を集めている。
Jリーグには、地域的なつながりや歴史的な因縁から生まれた「ダービー」と呼ばれる対戦が数多くある。福岡と鳥栖の九州ダービーも、その代表的な1つだ。14日に控えるルヴァンカップの鳥栖戦でも、両チームの意地とプライドがぶつかり合う、熱い戦いが期待される。
かつてのダービーは、激しい感情がぶつかり合い、スタジアム全体が独特の緊張感に包まれることも珍しくなかった。しかし、観戦マナーやルールの厳格化が進み、誰もが安心して観戦できる環境が整えられるなかで、ダービーの雰囲気も時代とともに変わりつつある。
そんな中、今回の「山陽新幹線ダービー」のように、地域や企業が主体となって対戦を盛り上げ、新たな楽しみ方を提案するダービーも生まれている。そこには、ライバル意識をあおるだけではない、もう1つのダービーの魅力がある。新幹線で結ばれた街同士がサッカーを通じてつながり、互いの地域に関心をもつきっかけにもなる。
試合を楽しむだけでなく、アウェーの街を訪れ、食や観光を楽しみ、地域の魅力に触れる。そんな交流が広がれば、Jリーグがはたす役割も、さらに大きくなるはずだ。昔ながらの熱いダービーが持つ魅力はそのままに、時代に合った新しいダービーも楽しむ。そんな多様な楽しみ方が広がることで、Jリーグの魅力もさらに増していくのではないだろうか。
【川添道子】









