政治経済学者 植草一秀
10月18日に横浜市長選が実施された。開票の結果、自民県連・維新の会県総支部・国民民主県連が推薦、公明市議団が支持した弁護士の原沢敦美氏が当選した。
本ブログ、メルマガでは10月4日に下記記事を配信した。
「パワハラ市長続投を認めない」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2026/10/post-47f6b0.html
「年内に護憲リベラル新党樹立」
https://foomii.com/00050/20261004191000158235
次のように記述した。
「山中氏は横浜市経済界の重鎮で「ハマのドン」として知られる藤木幸夫氏らがバックアップするが、政党の支援を得られず、パワハラの責任を取っての辞任であるため、返り咲き当選を果たすハードルは高い。自維与党とゆ党の国民は女性候補で弁護士の原沢氏を推薦。必勝を狙う。」
「現状にくさびを打ち込むには「真の野党」勢力が連帯して共闘することが必要。しかし、この陣営から3人が立候補した。立民前衆院議員の中谷一馬氏、共産党新人の浅賀由香氏、無所属新人で平和と民主主義をともにつくる会・かながわ代表の藤川祥(さち)子氏が立候補した。退潮傾向を強めている護憲・リベラル勢力が3人も候補者を擁立すれば勝てる選挙も勝てなくなる。自維与党は原沢氏を擁立したが、与党の一部が推す山中前市長、参政が推薦する福山氏が出馬するから、与党支持層の票が原沢氏に集中するわけではない。」
横浜市長選挙の開票結果は以下の通り。
当 選 原沢あつみ 552,207票 39.5%
2 福山あつし 230,418票 16.5%
3 山中竹春 199,746票 14.3%
4 中谷一馬 179,739票 12.9%
5 藤川さちこ 97,819票 7.0%
6 あさか由香 89,052票 6.4%
7 山本理顕 49,377票 3.5%
中谷氏、藤川氏、あさか氏の3人の候補者の得票数合計は366,610票。これでも、原沢氏の55.2万票には届かないが、この3名の候補者に投票した有権者が1名の候補者に投票していれば、十分に本命VS対抗の有力候補に浮上しただろう。
与党候補に勝利する可能性がある野党統一候補が出馬すれば投票率が上昇し、野党候補に勝機が生まれる。それぞれの候補にそれぞれの思いがあり、強い決意で出馬に踏み切ったのだとすれば、それぞれの出馬について批判はできないが、首長選ではただ一人の当選者が生まれることに留意する必要がある。
10月4日記事にこう書いた。「(敵陣営の)間隙を縫って選挙に勝利するには連帯と共闘が必要不可欠。しかし、連帯と共闘は成り立たなかった。このことは高市内閣与党陣営の候補者を勝利させる大きな要因になる。与党とゆ党ではない『たしかな野党』陣営の結集が喫緊の課題だ。」
現政権陣営と対峙する勢力がバラバラに候補を擁立すれば敵陣営の思うつぼ。今回、原沢氏の陣営は自民、維新、国民が推薦、公明が支持だったから基礎票が大きかった。しかし、参政と前職市長が出馬したため、刷新勢力側に勝機が皆無だったわけではない。
現在の日本政治の基本構図を変えてゆくとの視点から、現在の政治権力に対峙する市民と政治勢力は、改めて結集の方策を検討する必要がある。本年2月の総選挙に際して「中道」なる新勢力がにわか仕立てで創設されて玉砕した。
「中道」は日本人の感性をくすぐる部分があるが、実態は現存の政治権力への「迎合」に過ぎない。米国は日本の政治勢力を現在の与党勢力と、これと類似する第二与党勢力の二勢力に独占させることを狙っている。その流れで「中道」なるものが創作されたと考えるべきだ。求められているのは「刷新勢力」である。真の野党勢力の結集が必要不可欠だ。
かつての立憲民主の一部の人々が「ゴリラ」を立ち上げた。護憲リベラル共生「ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)」は
平和主義堅持
原発廃止
共生の経済政策
を基本政策に掲げる。
同時に日本を「対米隷属」から「対米自立」に刷新することを求めている。この基本政策を共有する市民と政治勢力の結集がどうしても必要だ。ゴリラの主張はこれと重なる。
共産党が「野党共闘」から一歩距離を置くスタンスを示したが、これまでの「野党共闘」の実態を踏まえれば当然の対応と言える。2017年に創設された立憲民主党は野党共闘の力で野党第一党に押し上げられた。共産党の支援によるところが大きかった。その立憲民主党が21年総選挙で「野党共闘」を否定した。共闘の対象は連合と国民民主だと明言したのである。枝野幸男代表が明言した。
立憲民主の凋落はこれを起点に始まった。そして、本年2月には綱領と基本政策において公明案を丸呑みして「中道」を立ち上げた。
安保法制や原発廃止などについての立民の主張はかき消された。基本政策について「足して2で割る対応」はあり得ない。「戦争をしない国」であり続けるのか。「戦争をする国」に転じるのか。原発を廃止するのか、推進するのか。弱肉強食を推進するのか、共生に転換するのか。足して2で割ることはできない。
「中道」というのは「まやかし」である。したがって、求められるのは「刷新」、「革新」、「改革」である。
平和主義を堅持する
原発を廃止する
共生の経済政策を実現する
そして、対米隷属から脱却して自主独立を確立する。
この、最後の「対米自立」が根幹でもある。09年に樹立された鳩山内閣がなぜ総攻撃の対象になったのか。ここに、すべての答えが端的に示されている。
鳩山内閣は「米国による日本支配の構造」を変えようとした。そのために総攻撃の対象になった。小沢一郎氏と鳩山由紀夫氏が総攻撃の対象になった。私が激しい攻撃を受け続けてきた主因はこの点にあると判断している。
米国による日本支配の構造を破壊する危険人物として認定されたということだと理解する。米国による日本支配構造を打破しようとする動きに対する警戒は激烈である。しかし、事態が大きく変化しかけたのは事実だ。国政選挙を通じて鳩山由紀夫内閣が樹立されるという「偉業」が成就した。その後の猛烈な巻き返し、総攻撃によって鳩山内閣は8ヵ月で破壊されたが、8ヵ月の短期間ではあっても対米自立を目指す政権が樹立されたという歴史事実は重い。
条件が整えば、政治刷新を実現するチャンスは存在するということ。絶対に諦めてはならない。まず必要なことは、この政治刷新勢力の糾合を図ること。さまざまな問題はあるだろうが、それを克服して市民と政治勢力の連帯を確立する。「ガーベラの風」は微力ではあるが、この方向で力を注いでゆく。
<プロフィール>
植草一秀(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。経済金融情勢分析情報誌刊行の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門第1位。2002年度第23回石橋湛山賞(『現代日本経済政策論』岩波書店)受賞。著書多数。
HP:https://uekusa-tri.co.jp
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