2024年12月23日( 月 )

【特別レポート】稲尾産業は80億円強の企業価値を死守できるか(1)

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単独では生き残れない

kensetu 地場建機レンタル大手の(株)ニシケンが、業界第2位のカナモト(本社:北海道札幌市)に買収された。身売りの決断した背景を、ニシケン元経営陣のトップの1人に聞いた。
 「私のところにしろ、稲尾産業さんのところにしろ、福岡県ではシェアを固めた優良企業と世間は評価してくれていると思いますが、大手と消耗戦の激突となったら、3年で消滅しますよ」という認識のうえに立って、次のように語ってくれた。

 (1)まず後でレポートするが、2011年3月の東日本大震災発生以降、全国大手のレンタル会社では、1年間で500億円の売上を伸ばしたところもあった。この震災復興の工事のピークが過ぎると、大手業者は再び全国拡張に注力するようになる。2~3年後には、九州でも血みどろの激突が予想される。ニシケンといえど、持ちこたえることは不可能である。
 (2)あと頭が痛いのは、介護施設業界の将来像が暗いということである。承知されている通りニシケンは、10年以上前から脱建設を描きながら、介護施設へのレンタル市場を開拓してきた。この分野での売上に占める割合は3分の1にまでなった。ところが、介護施設レンタルの将来は楽観視できない。国の胸算用1つで予算が決定される。各介護施設経営の首を絞めるリスクがある。

 この(1)(2)を踏まえて、大手の傘下に身を委ねようと決断したという背景があるようである。
 では、業界の今後の流れを見てみよう。

建機レンタル業界の再編が加速

 大手建機レンタル会社が、地場有力レンタル会社を子会社化する流れが加速している。2015年には佐賀県を代表する(株)ソクトが(株)アクティオに、今年に入ってからは福岡県を代表する(株)ニシケンが(株)カナモトの子会社になることを決断した。大手建機レンタル会社のシェア争いは、今後、どのような展開を見せていくのだろうか。

バブルから斜陽の時代

 日本の高度経済成長期に建設投資が拡大し、建設業界は1991年のバブル崩壊まで隆盛を極めていく。そうした時代背景のなかで登場してきたのが、建設機械のレンタル業だ。建設会社は現場で使用する建設機械を自社で保有していたが、購入や維持に多額の費用がかるうえ、現場が稼働していない時期は無用の長物だ。そこで、必要なときだけ借りるレンタルビジネスが登場する。建機レンタル業が広く浸透するようになったのは80年代だ。
 バブル経済崩壊後、景気下支え策の公共工事の大量発注時代をピークとして、建設投資は右肩下がりの状況が続いた。92年に84兆円を記録したが、2010年にはその半分の水準にまで縮小した。

 建設不況と言われる時代だったが、レンタル業者は潰れない業種と言われていた。建設業界の拡大に合わせて多くの中小建機レンタル業者が存在しており、建設関連の業種で倒産が相次ぐなかでも、しぶとく生き残っていた。レンタル業は先行投資の業種であり、熾烈な価格競争から採算割れに陥っても、しばらくは資金が回る。建設機械をリースで調達し、そのリース料よりも安い価格でレンタルするという、あり得ない状況が生まれていた。当然ながら、最終的には資金ショートするのだが、そこからなお債務の棚上げや減免により延命を図る会社もあった。レンタル業者は潰れないのではなく、潰れにくかっただけなのだが、それもいよいよ行き詰まり、中小建機レンタル業者は市場から消えていくことになる。
 こうした苛烈な業界での競争を経て、建機レンタル会社は広域系と呼ばれる全国規模の会社、メーカー系と呼ばれる建機メーカーの子会社、独立系・地域系と呼ばれる地場有力の建機レンタル会社へと収斂していった。

 広域系は大手ゼネコン、独立系・地域系は地場ゼネコンを主力受注先とし、メーカー系はメーカーの大口顧客である広域系の営業基盤を避け、土木業者を主力とする展開で大まかな棲み分けが進んだ。だが、業界縮小の荒波は収まらず、広域系が独立系・地域系を飲み込む構図へと変わっていく。

(つづく)

 
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