博多湾環境整備(株)、海難事故で初代社長の長男が死亡~遺族が責任追及
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記録簿の不存在を福岡地裁が確認
福岡県や福岡市から港湾関連の公共工事を受注する地場マリコン・博多湾環境整備(株)(本社:福岡市博多区、木内俊弘代表)が、昨年11月に発生した海難死亡事故をめぐり、亡くなった社員の遺族から損害賠償を請求されていることがわかった。事故が起きたのは、昨年(2016年)11月11日午後6時30分頃、作業員1名が、作業船を係留した後、海中に転落した。関係者によると、転落した作業員は、初代社長の長男で同社株主の1人。翌12日に博多港内において水死体で発見されたが、警察の調べで事件性はなかったとされていた。
しかし、6月下旬、遺族側は、同社に対して、葬儀費用や給料・年金・株の配当などの逸失利益、慰謝料など計約1億円の損害賠償を請求。遺族側は、同社側の説明が不十分であったことに不信感を募らせ、福岡地裁に証拠保全申し立てを実施。今年4月に行われた同地裁による検証の結果、事故が発生した作業船に、船員法で定められた航海日誌などの記録簿が作成されていないことが判明。遺族側は同社に対し、安全配慮義務を怠った不履行責任および、事故当日、下船の際に同社の運行管理担当者(船長)が作業完了報告を受け、下船を確認しなかった不法行為責任があるとしている。遺族側への対応に関する取材に対し、同社は、「担当者不在のため、確認中」としたまま、回答していない。
博多湾の『漁業権補償』を背景に誕生
同社は1983年2月、博多港港湾整備事業が施行されるのを機に、奈多漁協、箱崎漁協、福岡漁協、伊崎漁協の4漁協(現・福岡市漁協)が共同出資をして設立。売上高のほとんどを占める土木工事では、2017年4月期、アイランドシティ地区3工区のA護岸築造工事(その1)(2億9,025万円)、および同工区の地盤改良工事(その3)(1億6,213万円)を受注。『漁業権補償』の要因となった人工島(アイランドシティ)関連の工事が現在も大きなウェイトを占めている。
このほか、同社は、博多湾および周辺の港湾工事や浚渫工事、福岡市のコンベンション機能を担う福岡国際センターの保守・警備・清掃、福岡市海浜公園の管理、博多湾内の清掃などを請け負っている。2016年6月期は売上高15億8,803万円を計上。公共性の高い安定受注を背景に無借金経営(要約貸借対照表を参照)を続けている。
ただし、設立から35年近く経つなかで同社の性格は変化。同社設立時に出資した旧4漁協には、株主配当という形で、博多港や人工島の埋め立て工事による『漁業権補償』がなされてきたが、旧4漁協が所有していた株式はすでに同社が買収。現代表の木内氏は民間企業の出身者であり、設立時にあった『漁業権補償』という特色は薄まっていると言える。公共工事の受注は、過去の実績によるものと思われるが、前出の記録簿の不作成について、同社が“船員法の適用を受ける船舶であると認識していなかった”との説明を行うなど、そのコンプライアンス(法令遵守)には大きな疑問符を付けざるを得ない。
【山下 康太】
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<COMPANY INFORMATION>
代 表:木内 俊弘
所在地:福岡市博多区沖浜町12-1
設 立:1983年2月
資本金:2,940万円
業 種:港湾土木・浚渫ほか
売上高:(16/6)15億8,803万円関連キーワード
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