五感の力~失われつつある生物としての本来の力

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千葉茂樹(福島自然環境研究室)

 福島県在住で情報発信をしている千葉茂樹氏から、動物としての人間に備わる五感の力が自然研究から失われつつある現状について示唆に富む文章が届いたので共有する。

 食材の可否は、昔は五感で調べていました。最近の方は、まったく知らないようですが。

毒キノコの見分け方

クリタケとニガクリタケ

 ニガクリタケは1本食べると死ぬといわれています。慣れると、見ただけで判別できますが、見ただけではわからない方もいるようです。間違いない見分け方は、「口のなかで噛むこと」です。私の経験では、1本口に入れて15回以上噛むと、口が曲がるほど苦みが出ます。飲みこめば中毒になりますが、吐き出せば問題はないです(食用のクリタケは苦くない)。舌下吸収される問題がありますが、この程度なら人間は解毒します。

人間の五感

 舌下吸収は、体内への吸収が早く、私の場合、10~20分で、変化を感じます(薬を急いで吸収させたい場合※は、舌下吸収が一番です)。
※注射ができない場合

 オタネニンジン(高麗人参)で試したところ、10分後に体調に変化が起きました。はっきりと効果が出てきたのがわかりました。変化の起き方は、人によって様々のようです。

 こちらに書いた危険察知も、よく考えれば耳でした。
野外調育で注意一磐梯山の野生動物一(PDF)

 耳は、音だけではなく、平衡・回転・気圧などを感じます。当然、体内変化や外部環境の変化も捉えます。第6感とは、このことかもしれません。

余談

 こういった生薬の効き方は、人によってまったく異なります。

 木天蓼(マタタビの虫食いの実)の焼酎漬けの場合、私は、スポイト1滴で効きますが、他の人ではコップ一杯でないと効かないという方がいました(書物では、一般に盃一杯が適量と書いてある)。この生薬は、体を活性化する作用があります。私は盃一杯も飲むと興奮状態になり眠れなくなります。

研究としてのキノコ

イッポンシメジ

 書物によれば「毒キノコ」ですが、露店で売っています。一概にイッポンシメジといっても、すべてが有毒ではないようです。これも研究されていないはずです。私は、「地理的隔離で遺伝子に違いがある」のか「イッポンシメジと総称するが別のキノコ」かのどちらかと思います。

 私は山のなかを歩きますが、その年、その地域、その季節で、見たことのないキノコに出合います。キノコは、まともに研究されていません。このように、私たちの身の回りは解明されていないことばかりです。地質にせよ、微生物にせよ、菌類にせよ、研究されていないことばかりです。

 先日、某大学の院生と磐梯火山の岩石について話をしました。岩屑なだれ堆積物(山体崩壊で生じる)の構成岩の種類についてです。院生は、金をかけてEPMA分析で分類をしていました。私は野外派なので、構成岩を見れば、磐梯火山のどの活動期の岩なのか、またほかの火山の岩なのか、わかります。

 溶岩などはその活動期のマグマが固まったものなので、それぞれ特徴があります。マグマが変われば、それが固まった溶岩も変わります。

 地方大学で研究費がないと話題になっていますが、金をかけないでできる研究もあります。私の考え方は、基本は野外調査で、それを裏付けるために室内分析・作業が必要と思います。

 最近は、本末転倒の研究が増えました(本末転倒:室内分析・作業で論文にする)。野外調査は、最低限の安い機材と研究者の労力があればできます。自然は複雑で、図学上で考えられないような堆積物の分布が見られます(航空写真などで判別し、ここにはこの堆積物が分布するはずだということ。しかし、自然はそうはならないことがある)。その謎があるから、野外調査は楽しいのですが…。「理論と実際」が違うことが、結構あります。きのこも地質も基本は野外調査です。

 2月に福島大学の磐梯朝日プロジェクトの報告会に行きました。大学の研究は、「研究費をもらうための研究」になっていないでしょうか。研究の本質を見失っているように感じました。私は、研究とは「自分が感じた疑問や謎への探究」だと思います。牧野富太郎のような学者は、もう出ないのでしょうか。野外での基礎研究は、年を経てもその価値が失われることはありません。


<プロフィール>
千葉茂樹
(ちば・しげき)
千葉茂樹氏(福島自然環境研究室)福島自然環境研究室代表。1958年生まれ、岩手県一関市出身、福島県猪苗代町在住。専門は火山地質学。2011年の福島原発事故発生により放射性物質汚染の調査を開始。11年、原子力災害現地対策本部アドバイザー。23年、環境放射能除染学会功労賞。論文などは、京都大学名誉教授吉田英生氏のHPに掲載されている。
原発事故関係の論⽂
磐梯⼭関係の論⽂
ほか、「富士山、可視北端の福島県からの姿」など論文多数。

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