【糸島市長選】スター、届かず 高橋徹郎氏「素晴らしい仲間たちと戦えた」
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候補者が事務所のドアを開けると歓声が上がる。くす玉のひもが引かれ、紙吹雪と垂れ幕が舞い、集まった支援者は盛大にクラッカーを鳴らす……。
これは、当選者の事務所での出来事ではない。糸島市長選で落選した高橋徹郎氏(50)の事務所で、投開票日の28日夜に実際起きていたことである。この日の高橋事務所は、終始和気あいあいとした雰囲気のなかで開票を待ち受けた。出入りする事務所スタッフや支援者はリラックスしており、表情からは笑顔が絶えない。後援会長がケーブルテレビのインタビューを受けていると、すかさずカメラの後ろにいたスタッフが笑わせようと必死だ。
高橋陣営のこの明るさは、あきらめでもなければヤケになっていたわけでもない。高橋氏の勝利を信じたうえで、皆とにかく明るい。聞くと、選挙期間中もずっとこの調子で選挙活動を続けていたのだという。開票が進み、「月形氏当選確実」の一報がもたらされると、さすがにしんとした空気が漂う。しかし、事務所スタッフが「ここからはお祭りです!」と力強く宣言すると、あっという間に切り替えて「高橋氏をどう迎えれば面白いか」を大真面目に相談しはじめた。まるで学校の先生にどんないたずらをしかけるか、知恵を絞る小学生のようだ。
くす玉を割った高橋氏は会見に臨み、報道陣の問いに応えて「敗戦の弁」を述べる。
「訴えるべきことは訴えた」「玄海原発再稼働反対については、しっかり響かなかった」「ネット戦略は、票にまではつながらなかったのかもしれない」。敗因について語る高橋氏の表情からは、どうしてもそれまでの「明るさ」は消えていく。
しかし、会見の最後の「『糸島を楽しくしようぜ』というキャッチフレーズどおり、選挙戦は楽しめましたか」という質問には、笑顔がこぼれた。「楽しんでいました。日々新しい発見もあるし、新しい出会いもありました。苦しい時もありましたけど、すごく楽しい選挙戦でした。いい仲間にも巡り合えましたね」
選挙は戦いだ、命がけだという考え方からすれば、「楽しむ」「笑顔」という言葉がつきものとなった高橋陣営の選挙戦は、あるいは不真面目に見えるかもしれない。だが、これが彼らの真剣な戦い方だったのだ。
なごやかに終わった会見の最後に、初老の支援者が「ああ、悔しかぁ!」と一声叫んだ。高橋陣営が彼らなりに真摯に選挙戦に取り組んでいたことのひとつの形だな、とその支援者の顔をあらためて振り返ると、思いのたけを吐き出した彼の顔にはやはり笑顔があった。
「これは4年後のリハーサルだから!」。この日、何度も聞いた言葉だ。
高橋氏本人は「今後については何も決まっていない」と言葉を濁したものの、支援者やスタッフの表情からは、次回市長選に向けた決意がうかがえる。強いといわれる「2期目の現職」に真っ向から挑んだ「笑顔の敗者」は、どこへ向かうのだろうか。【深水 央】
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