2024年07月16日( 火 )

いつの日かマスターズを・・・

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 今年最初のメジャー大会、マスターズゴルフトーナメントの最終日を朝の4時に起きてテレビ観戦しました。その日は月曜日で仕事も控えていましたが、日本ゴルフ界に新たな歴史の一ページが刻まれる瞬間を見逃すわけにはいかないと思ったのです。

 3日目を終えて松山英樹選手は首位のスピースから2打差という絶好の位置。しかも2連覇を目指すスピースはショットの調子が今ひとつということもあり、松山選手が逆転して日本男子初となるメジャーチャンピオンになる可能性は十分にありました。

 しかし残念ながら結果は7位。首位を走っていたスピースもパー3で7を叩くという信じられない大叩きで崩れ、優勝はイギリス人のダニー・ウィレットにさらわれました。しかし2年連続のトップ10フィニッシュは日本人初の快挙。まだ24歳の松山選手ですから優勝するチャンスはこれから何度も訪れるでしょう。ぜひ日本の選手がメジャーで優勝する姿が見たいものです。そうなれば日本のゴルフ界もずいぶん盛り上がるでしょうね。

golf ただ今の状況のように日本人初となるメジャー優勝への期待を松山選手1人に背負わせるのは余りに酷だと感じます。優勝したダニー・ウィレットは最終日に同じイギリス人のベテラン選手であるリー・ウエストウッドとラウンドしました。ここ数年は調子を落としていますが、ウエストウッドはかつてワールドランキング1位になったこともある実力者です。2人は同じマネージメント会社に所属し、何度も一緒にラウンドをしている間柄。最終日はお互いに刺激しあいウィレットは優勝、そしてここ数年低迷していたウエストウッドもスピースと並んで2位タイでフィニッシュしました。ウィレットはプレッシャーのかかる最終日に憧れの先輩と同じ組で回れたことが自分にとってとても有利に働いたと試合後に語っています。

 一方で全参加選手の中で唯一の日本人だった松山選手の背負うプレッシャーはどれほどだったことでしょう。1994年と99年の2度マスターズを制した名手、スペインのホセ・マリア・オラサバルはこう言っています。「メジャーの優勝争いの中でアドレスに入ると、そこは世界で一番孤独な場所だと感じる。いいショットを打ち優勝をつかみ取ることは孤独感に勝つことと同じだ」。

 クラブを持ち、アドレスを決めた瞬間からもう誰も助けてはくれません。ゴルフは個人スポーツですが、国を背負って戦う際には仲間は多くいたほうがいい。松山選手に続く日本人のゴルファーがたくさん登場すればプレッシャーも分散され、優勝のチャンスも大きくなるのではないでしょうか。

 ちなみに94年に初めてマスターズを制したオラサバルにはこんなエピソードがあります。最終日の朝、オーガスタナショナルのオラサバルのロッカーにはメモが残されていました。それはマスターズを2度制していたスペインの国民的なゴルファー、セベ・バレステロスからのメッセージでした。「我慢強くプレーするんだ。その他のやるべきことは分かっているだろう。君はすでにチャンピオンなのだから。幸運を祈る」憧れの先輩からの手紙に勇気をもらったオラサバルは、孤独な戦いに勝ち、スペイン人としてバレステロス以来のマスターズチャンピオンになりました。

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<PROFILE>
nobukawa_pr信川 竜太 (のぶかわ りゅうた)
1971年3月27日生まれ。(株)スリーバーズ代表取締役。スポーツキャスター、DJ、MC、リポーターとしてスポーツを中心にテレビ、ラジオなどで活躍中。その一方で、ゴルフコーチとしても活動している。信川氏がゴルフの道を志したのは福大大濠高校1学年時。卒業後、フロリダ州ブロワードジュニアカレッジに入学(のち、フロリダ・リン ユニバーシティーに編入)。在学中、トーナメントでタイガー・ウッズの上位に入る結果を残した。2006年1月に(社)日本プロゴルフ協会 PGAゴルフティーチングプロの資格を取得。10年10月、福岡市東区多の津にスポーツ塾を開講した。

 

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